—次々と作品を発表され、さぞご多忙でしょう。一日のスケジュールは?
池井戸 まず朝8時くらいから11時15分まで原稿を書きます。時間がくると、セットしていたルンバが動き始めるので、外へ昼ごはんを食べにいく。戻って、午後3時か4時までまた机に向かって、疲れたら5時か6時くらいまでは郵便物に目を通したり、新聞を読んだり。6時で仕事は終わって、夕食へ。食べながら、次の構想を練ったりもします。
—お休みはありますか?
池井戸 休みは、ないときはぜんぜんないですね。12月から3月くらいまでは『アキラとあきら』を直していて、好きなゴルフも1月に1回だけ。当然スコアはボロボロでした(笑)。だから今は、室内用のパターマットを買って、暇を見つけては打つようにしています。
—ほかに、息抜きというと?
池井戸 舞台鑑賞ですね。ミュージカルが昔から好きで、いろんな舞台を見に行きます。最近だと、ドラマの『アキラとあきら』にも出演してくださっている石丸幹二さん主演の『パレード』へ。オペラグラスを買ったんですよ。ニコンの「ミクロン7×15 CF」。でも、持っていくと前から7列目だったり、忘れると後ろの方だったりして、何となくかみ合ってないんですが(笑)。あとは……そうだ、「バオちゃん」がいる!
—バオちゃん?
池井戸 事務所にいるバオバブの木。セネガルの近郊で採れたもので、カナリア諸島で育てられてベルギーの国際植物市に出ていたのを、日本のバイヤーが買ってきたものです。大きさは約120センチ。何と樹齢300年だそうで。
—300年!
池井戸 そう。フランス革命以前から生きているらしい(笑)。もう御神木の域に達していて、見る人によると、人の好き嫌いがあって、嫌いな人が近寄ると反応するらしいんです。
—(溺愛してるんですよ、とマネージャー氏が耳打ち)なるほど……。
池井戸 大変なんですよ、手がかかって。何しろ、水やりのタイミングがわからない。こんな大きなバオバブはほかにないので、植物園の人も、「水がなくなったらやってください」とか、適当なことしか言わないんです。でも最近、園芸用の水位計を買って、やっとコツがつかめました。水位計は150円くらい。これでガジェットの話の代わりになりますか?(笑)
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『アキラとあきら』池井戸潤 徳間文庫 1000円(税別)
異なる宿命を背負い、苦闘しながらも、意志と才覚で道を切り開く青年たちの姿を描いた清々しい成長物語。7月9日(日)からWOWOW連続ドラマWでドラマ化。階堂彬に向井理、山崎瑛に斎藤工が扮する。小泉孝太郎、田中麗奈、瀧本美織、松重豊、石丸幹二ほかが共演。
池井戸潤
1963年岐阜県生まれ。98年、『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2011年、『下町ロケット』で直木賞を受賞。代表作に「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』)、「花咲舞」シリーズ『不祥事』、『空飛ぶタイヤ』『鉄の骨』『民王』『ルーズヴェルト・ゲーム』『七つの会議』『下町ロケット2 ガウディ計画』『陸王』がある。『陸王』は10月からTBS系で連続ドラマ化、映画『空飛ぶタイヤ』が来年公開。
(取材・文/大谷道子 写真/佐々木 和隆)
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