■ルンバがスマートホーム実現の“コア”になる
──2016年の発表会でコリン・アングルCEOが今後スマートホームに力を入れていくと発表しました。日本ではようやくスマートスピーカーが出始めたくらいで、スマートホームはまだほとんど普及していません。米国では今どういった状況なのでしょうか。
ジョーンズ氏:日本よりは少し先を進んでいるとは思いますが、まだまだ初期段階です。確実に伸びていますが、課題があります。スマートホームは多種多様なデバイスが連携することで、初めて価値を提供できるようになります。個々のデバイスがいかにスマートホーム体験を提供するとしても、デバイスが増えれば増えるほど消費者にとっては負担が増えて、全てのデバイスをフルに使いこなせないことになりかねません。
それだけのデバイスを操るユーザビリティーの良さが実現できないと、スマートホームが達成しようとしているビジョンを全て実現することはできないでしょう。ルンバならGoogle HomeやAmazon Echoなどのデバイスを通して使うことで、あるいはマップを作成してさらにそういったデバイスを使うことでユーザビリティーを向上できると思います。
例えばスマート照明の理想形は、自分で取り付けたあとは「アレクサ、キッチンの照明をつけて」と言うだけで点灯するようなスタイルです。今の技術力でできないわけではないのですが、そのためには膨大なセッティングが必要になります。
そこにロボットが介入してマップを作ることで、リビングやキッチンがどこにあって、照明がどこにあるのかを把握できるようになります。ロボットが住宅環境を理解して、その情報をスマートホームのプロバイダーに提供することで、部屋の間取りやデバイスの位置などの情報が整い、「どの部屋のどの照明を付けて」といったことが実現できるようになります。
──スマートホームのその中核になるのはルンバだと考えていいのでしょうか。それとも、スマートホーム向けのロボットがルンバとは別に登場するイメージなのでしょうか。
ジョーンズ氏:家の中にあるロボットが空間を認識してマップを作成するということが、今後スマートホームを実現するためのコアになると思っています。しかし、それだけが唯一のハブというわけではありません。それとともにスマートスピーカーやモバイル端末などがユーザーインターフェースとして引き続き大きな役割を果たすと思います。
──ルンバがスマートホームのコアになるというのは、いつごろになるのでしょうか。
ジョーンズ氏:実現に向けてのスケジュールはまだありません。現在はさまざまなパートナーと最適解を提供するために、スマートホーム実現に向けてどういった形での貢献ができるかを探っているところです。パートナーと消費者が最も必要とするソリューション提供に向けて、今まさに開発段階にあります。
──今後10年ほどでアイロボット自体がどうなっていくのか、あるいは消費者に対してどんなソリューションを提供していきたいのか、あるいはどのような生活の変化をもたらしたいと考えているのでしょうか。
ジョーンズ氏:スマートホームというエコシステムの中で複数のロボットがそれぞれの役割を果たしていくことで、多様なニーズに応えていけると考えています。1つの汎用ロボットですべてをカバーするというのではなく、1つの家事サポートに特化した機能を持つロボットが複数存在するようになると見ています。
一般的な話として、10年先のロボットは家の中での物理的な動作がよりスムースにできるようになると想像しています。長寿・介護社会の対応として、お年寄りが持ち上げられないものを代わりに持ち上げてくれるとか、棚から薬を取ってきてくれるとか、自分がソファーから動かなくてもビールを持ってきてくれるといったように、家の中のエコシステム内でさらに動作範囲が増えていくのではないかと思います。
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(取材・文/安蔵靖志 写真/&GP編集部、下城英悟)