■ダイバーズウオッチの定義とは?
1965年の誕生以来、世界中のプロフェッショナルダイバーや冒険家たちから、絶大なる信頼を得ているセイコーのダイバーズウオッチ。さまざまな人気モデルを有しており、国産メーカーとしてダイバーズを牽引する存在です。今回、ダイバーズを代表するブランド・プロスペックス担当の加藤秀明さんにお話を伺いました。
<聞いた人>
セイコーウオッチ・マーケティング一部
加藤秀明(かとうひであき)
2007年にセイコーウオッチ入社。営業部門を経て同社のプレス担当を長らく務め、2018年より現職。
ーー海で実際に「プロスペックス SBDC083」を使ってみたんですが、防水性はもちろん、高級感もあって自分のスペックまで上がったような気になれました(笑)。やはりダイバーズの機能性は抜群ですね。防水基準をクリアするための項目は当然厳しいんですか?
加藤:はい! ただ、おっしゃるとおりダイバーズウオッチって、一般的に防水性能が極めて高い時計だと思われているんですが、正確に言うと“いろいろな環境においてタフな機能を兼ね備えた時計”のことを指すんです。
ーーえ、防水性だけじゃない? そんなに複雑な条件があるんですか?
加藤:はい、実はあるんです(笑)。防水性以外で言うと、「視認性・耐磁性能・耐衝撃性」の3つになります。
■言わずもがなの「防水性」について
ーーではまず、防水性の基準から教えて下さい。名前がダイバーズウオッチですから、「防水性」について厳格な検査を通過しているのはわかります。正直、「200m防水」も必要なのかと思うくらいです(笑)。
加藤:確かにそこまで潜られる方は稀かと思います。しかし、正確にはその深さに達さなくとも、水中(水圧のかかる場所)で時計を動かせば、かなりの水圧が時計にかかります。水深30mの場所で作業をされる方がいたとして、水流などが加わると圧力は高まります。例えば、水道の流れに時計をさらすと大体「7気圧」程度の水圧と言われています。
ーー水の流れや動きって、そんなに大きいんですね。確かにタフな構造でなければ、故障の原因になってしまいますね。どのような検査が行われているのでしょうか?
加藤:代表的なものですが、以下が試験項目になります。
・潜水時計を水中に完全に水没させ、1分以内に目標深度水圧の1.25倍まで加圧し、数時間保持 ・その後、段階的に減圧して、初期の加工なしの状態に戻す ・試験の後に結露試験を行い、ガラス内部の表面に結露がなければ合格
ーーこれで一例なんですか?
加藤:はい、他にも水中でのボタンなどの操作部における防水性など、さまざまな項目があります。また、先ほどお話したとおり、水中では水の流れによって深度以上の水圧がかかることも想定し、標示している防水性能の1.25倍の防水試験を行っています。
ーーもうこれでダイバーズウオッチの定義を満たしている気がしますが(笑)。
加藤:いえ! まだ他にもいっぱいあるんです。
■時刻の見やすさを定義するのは「視認性」
ーー続いて「視認性」について教えて下さい。というか、暗闇で針やインデックスが光るのは、この視認性を高めるためということですか?
加藤:そのとおりです。もう少し細かく言うと…
・500ルックスの照度で時刻の判別が可能 ・暗所では25cmの距離からの肉眼による目視でも時刻が読み取れる ・回転ベゼルによって時刻の経過がわかる
のほか、「時計が動いているかどうか」という項目もあります。なので、基本的にダイバーズウオッチに「2針」というものは存在せず、必ず動いていることを示すために秒針が必要です。これはスポーツウォッチにない、特徴的な機能とも言えます。
ーーダイバーズウオッチのベゼルってそういう理由だったんですね。3針じゃないといけないのも、初めて知りました。確かに、今回のシュノーケリングでも時刻は見やすかったです。
加藤:ただ、これは他のメーカーさんでは必ずしも準拠するものではありません。それぞれのコンセプトがあり、デザイン性を重視している場合もあります。