ピカピカに甦った小ベンツの真価は?:岡崎五朗の眼

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メルセデス・ベンツ初のコンパクトモデル「190E」が日本に上陸したのは、1985年。それは、僕が運転免許を取得した翌年であり、リアルタイムで経験している中では最も古いクルマの1台だ。「5ナンバーサイズなのにメルセデスがつくるとこんなにも完成度が高いのか!」という驚きを、今でもはっきりと覚えている。

クラシックカーとかビンテージカーと呼ぶほど古くはないが、古きよき時代を感じさせる車齢20〜30年のモデルを、MBJ(メルセデス・ベンツ日本)では“ヤングクラシック”と位置づけ、万全のアフターサービスを用意している。

今回試乗した'93年式の190Eでは、計300点ものパーツを交換。さすがに「新車同然!」とまではいかないが、内外装、エンジン、サスペンションともに極上のコンディションに仕上がっていた。

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当時の5ナンバーサイズ車の常識を遙かに上回るボディの剛性感、贅沢で複雑なマルチリンク式リアサスペンションが生みだす抜群の高速直進安定性とコーナリング性能、しなやかでフラットな乗り心地…。どれもが30年前の記憶そのままだった。

現代の水準に照らせば動力性能は平凡だし、自動ブレーキなどの先進安全装備も備わっていない。けれど、とりわけシャーシ性能面において、30年前にこれほどの水準に達していたことに驚かされると同時に、メルセデスの凄さを再確認。

職業柄、クルマの性能に関する基準は常にアップデートしてきたつもりだが、今回試乗した190Eは古臭いどころか、現代でも十分通用する実力を持っていた。さらにいうなら“人間が機械を操る感覚”は、むしろ現代のクルマより濃密であり、運転の楽しさでは決して負けていないとさえ感じた。

車齢を重ねることで、外観からいい感じで肩の力が抜けてくるのもヤングクラシック・メルセデスの魅力。僕と同世代の人が昔を懐かしんで乗るのも悪くないが、若い人がビンテージデニムを楽しむように乗るのもおしゃれだと思う。

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とはいえ、20〜30年前のクルマに乗るとなると、気になるのは、いかにコンディションを維持するか。しかし心配は要らない。MBJは11月から、一部のヤングクラシック・メルセデス向け“リマン部品”の価格を20%引き下げた。

リマン部品とは、リ・マニュファクチュアド(=再生)部品のこと。世界中の修理工場などから、使用済みパーツをドイツに集め、新品同様に再生。もともと新品パーツより安いうえに、さらに値下げしたことで、よりリーズナブルに部品を入手できるようになった。また、主要パーツの多くは、日本のパーツセンターにもストック。正規ディーラー経由で注文すれば即座に入手できるのも魅力だ。

こうした取り組みは、MBJの「自社製品を末永く愛してくださるお客さまに安心のカーライフを提供することは、メーカーの責務」という考えの下、実施されているもの。最も誇り高き自動車メーカー、メルセデス・ベンツは、ユーザーのメルセデス愛に対して、超一流の対応を用意しているのだ。

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今回試乗した190Eで交換されたパーツのうち、260点は「実は日本に在庫されていたもの」とのこと。このように充実したメンテナンス環境も、ヤングクラシック・メルセデスのオーナーにとっては、うれしい話ですね。

【著者プロフィール】
岡崎五朗(おかざき・ごろう)
モータージャーナリスト。青山学院大学在学中から執筆活動を開始。『GoodsPress』など多くの雑誌に寄稿するほか、テレビやWebサイトでも活躍。合理的なクルマの評価で絶大な支持を集める一方、クルマに対するエモーショナルなスタンスで幅広いファン層を獲得している。

(写真/工藤雅夫、メルセデス・ベンツ日本)

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