キーマン5人に聞く「セイコー 5スポーツ」大ヒットの理由

▲左からセイコーウオッチ 広報宣伝部・有馬広智/デザイン部・松榮純平/マーケティング一部・新海篤志/広報宣伝部・佐野雄也/広報宣伝部・森一希

さて、オールドファンも多い同ブランドをなぜ今リローンチしたのか。セイコー 5スポーツのプロジェクトチームを構成する主要メンバー5人に、それぞれの担当分野と合わせて聞いてみました。30歳前後の若きチームだからこそ実現したチャレンジングな試みのキーワードは“多様性”。時代に合わせたモノづくりを通して、さまざまなモデルが生まれた経緯が見えてきました。

■若者に向けた腕時計を作るため往年の人気モデルが生まれ変わった

ーー新生「5スポーツ」のリーダー的存在は新海さんですよね。まずリローンチのきっかけを教えて下さい。

▲商品企画担当・新海氏(29)

新海:2017年の1月にプロジェクトが発足し、若者をターゲットにしたブランドを作ろうという話になったのがきっかけです。「5スポーツ」のように、歴史あるものこそ今の若者に響くのではないかと考えました。バックボーンやヘリテージとしての魅力もありますし、レコードやテープレコーダー人気が再燃しているように、アナログスタイルが流行っていることを考えて、機械式時計からミレニアル世代にアプローチできるのでは、という意図もありました。

――たしかにアナログ回帰のトレンドはありますよね。

新海:はい、温かみのあるものを身に着けるというのは、デジタル全盛の今だからこそ逆にウケる理由になっているのかもしれません。

ーー新海さんが商品企画担当としてこだわった部分はどこでしょうか?

新海:新生5スポーツは、従来のように5つの機能をうたうのではなく、「Sports Style」「Suits Style」「Specialist Style」「Street Style」「Sense Style」という5つのスタイルを追求しました。たくさんのモデルをつくり、誰でも自分に合う一本が見つけられるようになっています。

■トレンドも意識した多彩なカラー展開

ーーこれまでのオールドファンを意識したモデルもあるのでしょうか? 反対に若者向けのモデルは?

▲デザイン担当・松榮氏(30)

松榮:はい、「Sports Style」というシリーズが我々の持つオーセンティックなモデルを活かしたラインになっています。特にオレンジ文字盤やレッド&ブルーベゼルは、従来の5スポーツを踏襲しています。若者向けというか、セイコーとしてチャレンジングだったのが「オールブラック」モデルですね。これまでのセイコーでは、あまり踏み込まなかったデザインですが、とても人気を集めています。

また、グローバルとしてもミレニアル世代をターゲットにしていますが、全世代で人気が高いのは「グリーン」ダイヤルですね。グリーンに近い「カーキ」モデルもありますし、カラーリングは多めに作っています。アパレルやスニーカーでも、ベースがひとつあってコラボや別注によるバリエーションが楽しめますよね。5スポーツもそうした素材やカラーで選ぶ喜びを感じてほしいと思っています。

■人気アニメとのコラボレーションも!

ーーなるほど。そういえば5スポーツには「ジョジョ」コラボモデルもありますよね。

▲プロモーション担当・佐野氏(26)

佐野:『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』コラボのことですね。ブランドとして“自分の個性を大事にしてほしい”という想いがあり、親和性の高いモチーフとしてコラボが実現しました。シリーズの中でも5部ですから「5」つながりというのもありますし、ファッション性や歴史もあるコミックです。あとはメンバー全員、ジョジョが好き(笑)。原作者の荒木飛呂彦先生も時計が好きということも理由のひとつだと思います。

■若いチームで取り組むモノづくりの新たな可能性

ーーみなさんセイコーウオッチ内では若い方々ばかりですが、結構珍しい取り組みなのでは?

▲プレス担当・有馬氏(31)

有馬:たしかに、若手で固めたプロジェクトというのは珍しいですね。各部署を横断するようなマーケティングの取り組み方も、これまでのセイコーとしてはほとんど例がありません。ある程度の裁量も任されていますし、会社からの評価も得られています。それぞれの年齢が近い分やり取りもしやすくて、やはり楽しいですよ。

打ち合わせもスピーディーだったり、意見を出しやすかったりという効果もありましたね。普段はあまり訪れない部署に行って「何やってるの?」とか気軽に声をかけられるのも、コミュニケーションが円滑に進められたことの証拠だと思います。

■徹底したビジュアル展開の“世界観”

ーー店頭やホームページなどのマーケティングも斬新だったように思います。

▲販売促進担当・森氏(25)

:ビジュアルや店頭のツールもチーム内で共有して進めることで、ホームページから店頭演出に至るまで統一されたブランドの世界観を発信できました。例えばホームページでいえば、時計を全面に出すのではなく時計を使っているシーンをイメージとして打ち出しています。今の若い人たちって、プロダクトだけじゃなくて販促やツールも含めた世界観を大事にしているので、こうした作り込みの効果も大きかったのではないでしょうか。

ただ、時計ブランドである以上、ビジュアルにおける時計の見え方を重視するので、こうしたイメージのようなビジュアルを全面に出すのは議論になりました。「時計の写真が小さいけど商品の魅力が伝わるのか」とか、直前まで話し合いが続きましたね。

佐野:5スポーツは「Show Your Style」というスローガンを掲げているんですけど、自分がこの時計を身につけてどういうシーン、どういうライフスタイルを送っていきたいのかというのを、想起させやすいビジュアルやプロモーション展開をしています。“時計離れ”している若者世代だからこそ、より身近に感じてもらうためビジュアルからは時計だけでなく、よりリアルな「シーン」を届けたいと考えています。

有馬:今の時代では人種や国籍、年齢や職業、性別などにとらわれることのない“多様性”の時代です。「5スポーツ」も、既存のカテゴリや枠組みに縛られないアプローチで、多くの方に「自分のための腕時計」なんだと思っていただけるよう、これからもチーム全員で協力していきたいですね。

【次ページ】5人がすすめるセイコー5スポーツ「この1本」

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