コップにヒントを得た画期的な「からまないブラシ」は掃除機に革命をもたらすのか?

■長年の不満であった「ブラシの手入れの面倒さ」に着目

▲パナソニック アプライアンス社 ランドリー・クリーナー事業部 クリーナー事業 クリーナー技術部 クリーナー設計課の堀部 勇氏

からまないブラシは2つに分かれた円錐型のダブルブラシを採用しており、ブラシの中央に空間があるのが特徴です。密集したブラシでかき取った毛を中央に移動させて、中央の吸い込み口から吸引するのが大きな特徴です。(以下、堀部氏談)

▲からまないブラシの仕組み

お客様から意見をいただく機会は以前からありましたが、やはりブラシにからまった髪の毛やペットの毛を手入れするのが大変という声はずっと前からあり、それを解決したいと思っていました。

以前にも、ブラシの間に毛が入り込まないようにと開発した「ゴムブレード」や、ブラシの径を大きくすることで短い毛がからみにくいようにしたブラシなどもありました。しかしゴムブレードは凹凸のある床面に入り込みにくく、径の大きなノズルは長い毛だと巻き付いてしまうなど、掃除性能と巻き付きにくさの両立が難しいのが今までの課題でした。

▲ブラシの間に毛が入り込まないようにと開発した「ゴムブレード」

▲こちらはからまりを防ぐ狙いでブラシ径を大きくした「DDブラシ」

そこで市場にあるブラシについても調査しました。ブラシを抜くと毛が抜けるもの、からんだ毛を刃物で刈り取るものなどがありますが、どうしてもある程度は残ってしまい、どれも完璧ではないということを確認しました。

 

■約1年間、試行錯誤してから回転ブラシに回帰

ブラシが回転するから毛を巻き込むので、当初は無限軌道のようなタイプや、畑を耕すクワのようなデザインのものを試作してみました。やってみなければ分からないということで、静電気で付着させて取る形なども検討しましたが、ゴミ取り性能との両立が難しく、うまくいきませんでした。

最終的に、50年以上前から採用している回転ブラシでかき取るというのがゴミ取り性能の面ではベストだと気付き、それを改良しようと考えるまでに1年かかりました。

ではなぜ毛がからんでしまうのか。ブラシはゴミをキャッチしなければならないために毛をキャッチするのですが、その後巻き上げる時点で吸い込み口から吸い込めずに巻き付いてしまうというのが問題の本質です。

そこでブラシの後ろに“クシ状”のものを付けて毛を回収する方法を考えましたが、余計に取れなくなるという結果に…。手入れを楽にするため回転ブラシを左右に外せるスタイルも考えましたが、ブラシを外さなければなりませんし、全部は取りきれないため改善効果が弱いとなり、開発が一時止まりました。

【次ページ】デスクに置いてあったコップの“円錐形状”に光明が!

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