コップにヒントを得た画期的な「からまないブラシ」は掃除機に革命をもたらすのか?

■デスクに置いてあったコップの“円錐形状”に光明が!

あるとき、髪の毛が大量に巻き付いたブラシを見たところ、中央と左右にたくさん付いていて偏りがあることに気づきました。そこでなぜ偏るのかを検証したところ、ふたつの原因があることが分かりました。

▲髪の毛のからまりが中央と左右に偏っているのを発見してから方向転換が進んだ

ひとつは「V字ブラシ」のゴミを中央に集める効果です。ふたつめは、掃除する際に普通はノズルを左右に振ると思うのですが、これによって左右に寄ることが分かりました。そこで、それならかき取った毛を動かせるのではないかという発想に至ったのです。

まずはブラシの毛の長さを変えることで毛が寄らないかと考えたのですが、毛の長さを変えることで掃除性能の本質が下がってしまいダメでした。次は左右に風を流すことで中央に寄せられないかと考えましたが、ほとんど効果がありませんでした。

▲ブラシにからまる毛を動かせないかと試行錯誤した

そんなとき机に置いてあった、出張や年休などの状態を表示するプラスチックのコップが目に入りました。円錐形状になっているため(コップを重ねても)取りやすくなっています。

同じ円錐形状のコマを思い浮かべたところ、ヒモを巻いても強く引っ張ると抜けてしまうのを思い出しました。円錐形にすることで、毛が巻き付いても抜けるのではないかと実験したら、すごく結果がよかったのです。

▲重ねても1個1個取りやすいプラスチックのコップを見たことで、円錐形状のブラシにたどり着いたという

円錐形といっても、最初は1本の円錐形状のブラシを用いたものでした。吸い込み口を中央に設けたところ、中央付近で髪の毛が止まってしまって動かなくなったため、次に吸い込み口を横にずらしました。

すると吸えるようにはなったのですが、どうしても取りきれないものが出てきました。また、吸い込み口が中央にないため、ノズルが自然と曲がってしまい、操作性も悪いため挫折しました。

▲当初検討したのは、1本の円錐形状のブラシを用いたものだった

その後、これを縮小して横に2個並べ、ちょうど中間に吸い込み口を持ってくれば吸えるのでは……そういう発想に至ったのが「ダブルブラシ」です。

▲円錐形状のブラシの頂点を向かい合わせることで中央にからまった毛を移動させることに成功した

 

■吸い込んだ毛がスムーズに流れるように5つの改良を加える

円錐状の回転ブラシにたどり着くのも時間がかかりましたが、円錐形のブラシも、中央に空間が空いている形状も業界初のため、その構成をどうやって実現するかに苦労しました。

従来のブラシは左右で保持されているため力に対して強いのですが、ダブルブラシは中央が空いているため、外からの力に弱くなってしまいます。いろんなものを吸ったときにブラシが曲がるようなことがあってはならないので、ブラシの中心からさらに中央寄りまで軸を入れることで強化しました。

曲がってしまうと中央部のゴミ取り性能が落ちるため、耐久性も必要です。そのあたりが技術的に難しいポイントでした。

▲毛を移動させるための改良ポイント

ひとつめは、V字ブラシです。従来のブラシと同様に、ゴミを中央に集めやすいV字ブラシを採用しました。

ふたつめはブラシの取り付け角度です。端に行けば行くほど角度が急になっており、これによってゴミを中央に送る力を強めています。

▲ブラシの取り付け角度が、中央に寄るほどゆるやかになっている

▲毛を移動させるポイント3、4

3つめはブラシの毛量です。従来のブラシに比べて毛量を約1.9倍に増やして密度を上げることで、ブラシとブラシの間に毛が入り込みにくくしました。

▲従来のブラシに比べて毛量を増やしたことで、毛が入り込みにくくなった

4つめがブラシの配置です。底面から見ると前の壁に沿うように傾いていますが、前側から見ても床面に対して平行になるように傾け、より毛を移動させやすいようにしています。

▲ブラシが床とノズルの前の面に当たりやすいようにブラシの取り付け角度を斜めにしている

5つめは、ブラシカバーに付けた「リブ(突起のようなもの)」です。これがあることで、ブラシにかき取った毛を中央に移動させやすくしています。

▲ブラシカバーに付けた「リブ」によって、毛を移動させやすくしている

【次ページ】20人以上のモニターがテストし、さらに改良

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