■アップル製品を入れるための設計
――そもそも「シャトルデイパック」はいつから発売されているんでしょうか。
狩野さん シャトルシリーズは2012年春夏でスタートしたものですね。もう8年になります。でも実はその前にベースとなるバッグがあったんです。それが「バイト(BITE) 20」です。
――ベースというのはどういう意味ですか?
狩野さん 「バイト 20」はザ・ノース・フェイス(以下ノース)がアップル向けに作った商品になります。2010年の秋冬で作ったリュックですね。
――そんなものがあったんですか!
狩野さん 本当に「シャトルデイパック」とそっくりな、四角いデザインのバックパックなんですよ。当時、ノースにもPCを入れられるバッグはありましたが、今のようにラインナップが豊富ではありませんでした。もちろん売り上げもさほどなかった。そんな時に持ち上がった企画が、アップル向け商品でした。アップルユーザーにはまだノースやアウトドアブランドを知らない人が多かった時代だったので、そういった人たちにリーチしたいという部分があったんです。
――だからシンプルなデザインなんですね。
狩野さん そうなんです。アップルの“シンプルなものづくり”と“クリーンなデザイン”、これらとノースのデザインは通じるものがあるとずっと思っていました。そして生まれたのが「バイト 20」です。
――たしかにアップルストアに並んでいても違和感のないデザインですよね。見た目はシンプル、だけど中は機能的といった部分とか。
狩野さん 弊社のデザイナーがとにかくアップル好きで、彼が「ここに17インチのMacBook Proを入れて、ここはiPadで、横のポケットはiPhoneがぴったり収まるサイズで…」という感じでデザインしたんですよ。
――だから「シャトルデイパック」のサイドポケットってちょっと小さいんですね!
狩野さん そうなんです(笑)。実はあそこ、iPhoneサイズなんです。ボトルを入れるにはちょっと浅いですよね。
――たしかにボトルや傘にはちょっと浅いかも。入れられるんですけどね。ちなみに「バイト 20」はノースのショップでも販売されたんですか? 当時はあまり見かけた記憶が…。
狩野さん あれはアップルの直営店とWebストア、あとザ・ノース・フェイスの一部店舗のみでの販売でした。しかも日本のアップルだけの商品でした。この取り組みは実は数年で終わりますが、「バイト」を見た本国(アメリカ)のノースが「こっちのも作ってくれ」と声をかけてきまして。そして生まれたのが「シャトル」シリーズです。2012年春夏モデルでした。
――それが日本でも販売されたということですね。発売当初の売れ行きはどうでしたか。
狩野さん 実はアメリカでは短命で、2013年の秋冬までの4シーズンで終わってしまいました。日本でも大ヒットというほどではなかったんですよね。「シャトル」が出た頃はまだ「バイト」が販売されていましたから。ただし「バイト」は販路限定だったので、その機能を落とし込んだシリーズということで、ヒットではないけど悪くもないといったところでしょうか。