■カスタムパーツも合法化の時代へ
スクーターであっても“速さ”が重視された時代は、レース用のパーツをストリートマシンに装着するケースも少なくありませんでした。そうした車両による騒音問題もあり、1989年に全国二輪車用品連合会(JMCA)が設立され、カスタムパーツにも合法化の波が生まれます。
「カスタムパーツを販売するのはスピード違反の幇助に当たるのではないかと警察から問い合わせが入ったこともありました。もちろん、スピードを出すのはライダーの意思ですから、幇助には当たらないといういうことになるのですが、そうしたこともあってパーツごとに公道走行がOKなのかレース用なのかを明確化するようになりました」(織田社長)
チャンバーなどにもJMCAの認可マークが付いたものが一般的になり、爆音マフラーは鳴りを潜めていきました。
2000年代になり、軽量・ハイパワーだった2ストロークエンジンが姿を消すと、それに合わせるように50ccスクーターの車種や販売台数も減少していきます。
近年は125ccクラスの原付二種が人気で、販売台数でも原付一種を抜くほどの勢い。そうした時代の流れに合わせてカスタムパーツのトレンドも大きく変化しているようです。
「今、最も売れているのはスマホをバイクに取り付けるためのホルダーですね。ナビゲーション機能などを使うためには不可欠の存在ですから。かつてのようにバイクを“速くする”という需要は減って、なにかをするための“ツール”として使う方が主流になっているようです」(織田社長)
こうした傾向を踏まえ、同社ではバイクを趣味の道具として楽しむためのアイテム開発に力を入れているとのこと。具体的にはツーリングを快適にするバッグや、ソロツーリング用のテント、持ち運びやすい焚き火台などが人気のようです。
「私も趣味でツーリングをしますが、キャンプ以外にも釣りやカメラなどバイクと相性の良い趣味は多い。そうした趣味を楽しめるアイテムをリリースすることで、年齢が上がってきたライダーの方にももっとバイクを楽しんでもらえればと考えています」(織田社長)
また、今年4月頃の自粛期間には、在宅で久々にバイクをいじる人が増えたためかメンテナンスグッズの売り上げが伸びたとのこと。その後も、公共交通機関を避けてバイク通勤する需要が増え、原付関連のパーツも好調に推移しているようです。確かに筆者の周りでも、この時期はバイクいじりに時間を使う人が増えていました。
バイクのカスタムパーツも、確実に時代の流れやトレンドを反映するもの。熱きバイクブームの頃に青春時代を過ごした1人として、今後もバイク趣味を楽しみ続けられるようなアイテムがリリースされることを願わずにはいられません。
>> デイトナ
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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