この頃は、2スト車が軽量・ハイパワーな特性を活かした過激なモデルが多かったのに対して、4スト車はややおとなしめなモデルが中心でした。
そこに登場したのが1993年に発売された「KLX250SR」。2スト並に軽い車重と“闘う4スト”のキャッチコピーで大人気モデルとなり、2016年のファイナルエディションまで20年以上続くロングセラーモデルとなりました。
車高が低く、足付きの良い「スーパーシェルパ」のような選択肢があったのも、この頃のオフロード人口の幅広さを表していると言えます。
同系のモデルとしてはヤマハの「セロー」、ホンダは「SL230」、スズキは「ジェベル」がラインナップされていて、選択肢も豊富でした。ツーリングに使うユーザーも多かったのですが、林道に行くとやたらと速い「セロー」にぶち抜かれたりしたのも今となってはいい思い出。2016年に「セロー」が生産終了となり、この系統のモデルがなくなってしまったのは寂しい限りです。
ほかにも、エンデューロ車直系の過激な特性だったスズキの「RMX250S」、ヤマハの「DT200WR」、AR燃焼を採用したホンダ「CRM250AR」など、2スト車に限っても各メーカーともキャラクターの強いオフロード車をラインナップしていました。これに加えて、4スト車も各社が販売していたので、今思うと選び放題な状況だったんですね。
■国産メーカーのラインナップは2車種だけに
その時代を知る人にとっては、今のオフロード車を巡る状況は寂しく感じられるかもしれません。
現在、国産メーカーが販売しているオフロード車はカワサキの「KLX230」とホンダの「CRF250L」の2車種のみ(「CRF250RALLY」というバリエーションモデルもありますが)。ヤマハとスズキについては、オフロード車が新車ラインナップにないという状況です。
ただ、実際に乗ってみるとどちらの車種も魅力的な車種に仕上がっています。筆者のインプレッションも交えて、現行の2モデルを紹介しましょう。
▼カワサキ「KLX230」
2016年をもって姿を消した「KLX」の名を復活させた車種。エンジンが空冷のSOHCになっていたり(「KLX250」は水冷のDOHC)と、スペックだけを見ると物足りなく感じる人もいるかと思いますが、実際に乗ってみると車体がコンパクトになっていることもあって、非常に乗りやすい。トルクフルなエンジン特性は低回転から扱いやすく、オフロードではこういった特性のほうが速く走れるシーンも少なくなりません。足回りも、ジャンプなどをしなければ十分な性能で、スペック値を見て食わず嫌いをしているベテランライダーにも一度乗ってもらいたいと思える完成度です。
競技向けの「KLX230R」というモデルもあり、そのパーツを流用できるかも…と思わせてくれるのも魅力。50万円を切る価格設定も、幅広いライダーにおすすめできます。
<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ:L2105×W835×H1165mm
車両重量:134kg
エンジン:232cc 空冷単気筒SOHC2バルブ
トランスミッション:6速MT
最高出力:19馬力/7600回転
最大トルク:19Nm/6100回転
価格:49万5000円
▼ホンダ「CRF250L」
2012年に登場し、扱いやすい特性で支持を集めていた「CRF250L」が初のフルモデルチェンジ。従来モデルより最低地上高を30mmアップ、車重を4kg軽量化し、オフロードでの走破性を高めたモデルとして登場しました。エンジンは水冷のDOHC。従来モデルもオンロードでの乗りやすさには定評があったのですが、新型はオフロードでの運動性能を高める方向に大きくかじを切っています。
前後サスペンションのストロークを延長した「CRF250L」というバリエーションが用意されているのも、その証拠。実際にオフロードに持ち込んでみると、数値以上に軽く感じる車体と、低回転からパンチのあるエンジン特性で非常に楽しいモデルに仕上がっています。かつてのオフロード車全盛期を知るライダーでも、その進化に舌を巻くはずです。
<SPECIFICATIONS ※カッコ内は「CRF250L」>
ボディサイズ:L2210×W820×H1160mm(L2230×W820×H1200mm)
車両重量:140kg
エンジン:249cc 水冷単気筒DOHC4バルブ
トランスミッション:6速MT
最高出力:24馬力/9000回転
最大トルク:23Nm/6500回転
価格:59万9500円
■輸入車の選択肢が増えている
国産オフロード車が減っている中で、注目しておきたいのが輸入車です。海外製のオフロード車はエンデューロ競技向けのモデルも多く、ナンバー取得は可能なもののメンテナンス頻度が高く、値段も張りますが(維持費用もかかる)、その点を理解して選べば軽量でハイパワーな運動性能を味わえます。ちなみに、近年エンデューロ系のオフロード競技は多くの参加者を集めているのですが、その多くが海外モデルのライダーです。
▼KTM「250 EXC-F」
近年、ストリートでも見かける機会の増えているKTMですが、オフロード競技の会場ではメーカーカラーであるオレンジ色が一大勢力となっています。その主力が「EXC」というエンデューロシリーズ。2ストモデルが150cc、250cc、300cc、4ストモデルは250cc、350cc、500ccがラインナップされています。
軽量な車体に、ピックアップの鋭いエンジンでクローズドコースを走った際の爽快感は、公道向けオフロード車とは比べ物になりません。ナンバー取得も可能ですが、走行時間の管理や頻繁なオイル交換など、メンテナンスについての知識は必要です。
<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ:-
車両重量:103kg
エンジン:249.91cc 水冷単気筒DOHC4バルブ
トランスミッション:6速MT
最高出力:-
最大トルク:-
価格:132万円
▼ハスクバーナ「FE 350」
KTMとは兄弟ブランドに当たる現在のハスクバーナ。エンジンは基本的に同一のものを搭載しており、排気量のラインナップなども共通です。リアサスペンションが、KTMのリンクレス構造に対して、リンクを介した構造となっているのが最大の違いで、その分オフロードでの突き上げ感が少なく、初中級者には乗りやすいと言えるでしょう(その分、ギャップなどでリンク部分をヒットしやすいデメリットもありますが)。トラクションコントロールシステムも搭載しています。メンテナンスの頻度などについては、KTMの「EXC」シリーズと共通です。
<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ:-
車両重量:106.8kg
エンジン:349.7cc 水冷単気筒DOHC4バルブ
トランスミッション:6速MT
最高出力:-
最大トルク:-
価格:143万円
▼アプリリア「RX 125」
最後に紹介するのは、アプリリアの125ccモデル。こちらは競技向けではなく、れっきとした公道モデルなので、日々の通勤などにも安心して使えます。排気量こそ125ccですが、車体サイズは250ccと遜色ない存在感。実際に乗っても、高回転まで気持ちよく回るエンジンで非力さを感じることはありません。足回りの装備も本格的なので、オフロードを走っても不安はありません。
前後に17インチのオンロードタイヤを履いたモタードモデル「SX 125」もあるので、舗装路メインで走るなら、こちらも魅力的です。
<SPECIFICATIONS>
ボディサイズ:L2145×W820×H1180mm
車両重量:134kg
エンジン:124.2cc 水冷単気筒DOHC4バルブ
トランスミッション:6速MT
最高出力:15馬力/1000回転
最大トルク:11.2Nm/8000回転
価格:41万8000円
<文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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