■類まれなオフロード性能が与えられた唯一無二の存在
初代デリカは1968年にまずトラックが発売され、翌年にワンボックスタイプが発売されました。初代デリカにはポップアップルーフを備えたアウトドア仕様も設定されるなど、他社とは一線を画す存在に。
そして独自路線が鮮明になったのは1982年。1979年にフルモデルチェンジし、スターワゴンというサブネームがつけられた2代目デリカに、ワンボックスとして国内初の4WDが設定されたことです。
この4WDは、単に4輪を駆動させることができますというものではなく、同年4月にデビューしたパジェロと同じようにハイレンジ/ローレンジの切り替えが可能なトランスファーを備えていました。最低地上高も高く、グリルガード装備されるなど、形こそワンボックスですが、本格オフロード4WDと言っても過言ではない性能が与えられたのです。
そんなスターワゴンがブレイクしたのは1986年に登場した3代目デリカシリーズです。キャブオーバーのワンボックスでありながら、空力特性を高めるためにフロントウインドウを大きく傾斜させ、太いリアピラー、サイドステップ、リアアンダーガードなどで力強さを強調。一方で角目4灯のフロントライトや2トーンカラーで洗練されたイメージも打ち出します。
ソフトキューブスタイルと名付けられた形状により、当時のクラストップレベルの室内空間を確保。後席に大きなガラスルーフを設定したり、2列目席にロングスライド機構や回転機構を設けたグレードを設定するなど、当時のレジャーブームで求められた機能もしっかり搭載されています。
搭載エンジンは2Lガソリンと2.5Lディーゼルターボの2種類を用意。2代目デリカがラダーフレーム構造だったのに対し、3代目デリカはモノコック構造を採用しました。
■季節に合わせた特別仕様車も用意
現行型D:5が15年というロングセラーモデルになっていることからもわかるように、歴代デリカシリーズはモデルサイクルが長いことでも知られています。
3代目となるデリカスターワゴンは1986年6月から1999年9月まで、13年にわたり生産。後継モデルのデリカスペースギアは1994年5月から2007年1月まで生産されました。スターワゴンとスペースギアの生産期間がかぶっているのは、ワンボックスタイプの需要がありスペースギア登場後も廉価版が継続販売されたからです。
長いモデルサイクルの中で、デリカスターワゴンは何度か改良が加えられ、商品力を高めていきました。
1988年9月には楽にレジャーを楽しみたいという需要を汲み取り、2.5LディーゼルターボにAT車を追加。そして翌年には2Lガソリンに加え、2.4Lガソリンエンジンが追加されました。
1990年8月にはフロントライトを角目4灯からプロジェクター式に変更。先進性を取り入れたスタイルに生まれ変わりました。このタイミングで新設定された最上級グレードのスーパーエクシードにはカラオケも設定されたところに時代の匂いを感じます。
モデルサイクルが長いデリカスターワゴンには、多くの特別仕様車も用意されました。なかでも人気が高く定期的に発売されたのが、雪山仕様のシャモニー。このシリーズは2代目デリカが発売されていた1985年に初めて登場し、D:5になっても用意されています。
冬季限定モデルのシャモニーに対し夏季限定のジャスパーも用意されるなど、デリカスペースギアはレジャーを前面に打ち出し大成功を収めました。
■ネックになるのはディーゼル問題。対象エリアの人はガソリンモデルを!
そんなデリカスペースギアの中古車は全国で20台ほど流通。同じ旧車でもランクルなどと比べると条件に合う中古車を探しづらい状況です。
しかも流通している中古車の多くは2.5Lディーゼル。というのも、レジャーを楽しむ人が多いデリカシリーズは新車販売で燃料代が安いディーゼルの比率がかなり高いモデルでした。現行型のD:5も2012年にディーゼル車が追加されてからは、ディーゼル比率が高くなっています。
この時代のディーゼル車はディーゼル規制のある地域では登録・運行することができません。対象地域に住んでいる人はガソリン車を根気よく探す必要があります。
冒頭でも書いたように、昨今のアースカラーブームによりデリカスターワゴンもオールペンされた中古車が多くなっています。また、フロントにスペアタイヤを装着しワイルドなイメージを打ち出したカスタム車もあります。
一方で当時の雰囲気を残した2トーンカラーの中古車も健在。どれを選ぶかは好み次第。
キャンプ場に行くと、デリカD:5やハイエースが目に入る機会が多いですが、そんな中でスターワゴンは異色の存在としてかなり注目を集めるのは間違いないでしょう。
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<文/高橋 満(ブリッジマン)>
高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。
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