その始まりは1993年のシルビアのフルモデルチェンジ。S14となったシルビアは豊満なわがままボディとなり、3ナンバーサイズ化。パワーアップを果たしたものの車重の増加もあり軽快だった走りの魅力が薄まっていたのです。
これにはシルビアファンのみならず、世のスポーツカーファンからもソッポを向かれ、シルビアは窮地に立たされます。しかしもっと窮地に立たされたのが実は180SXだったのです。
登場から2年経った1991年にマイナーチェンジが施され、さらにその2年後にはいよいよフルモデルチェンジと思いきや、しれっとそのまま放置。ようやく動きがあったのは、1991年のマイチェンからなんと5年後の1996年でした。しかもフルモデルチェンジではなく、まさかのマイナーチェンジ…。
時代が変わり、若者の人気はスポーツカーからステーションワゴンに移っていたのは確かですが、まさかマイチェンでお茶を濁すとは…。
結局180SXはマイナーチェンジを2回受け、1999年の生産中止をもって約10年間にわたるロングライフに終止符を打ったというか、打たれたのでした。
このフルモデルチェンジせず延命措置だけで役目を終えた背景には、S14シルビアの不振が大きく影響したと言われていますが、実はこの180SX、1990年代後半~2000年ひと桁代を中心に、中古車市場では見事に花を咲かせています。
スポーツカーファンは減ったとはいえ現在ほどではなく、100万円以下で買える5ナンバーサイズの走りの楽しいMTターボ車として人気を博し、さらに1995年から連載が始まった走り屋系マンガ『頭文字D』に登場した佐藤真子が駆る「シルエイティ」がそれを加速させたのです。
シルエイティとは180SXにシルビアの顔面をスワップしたもので、前から見るとシルビア、後ろから見ると180SXとなっており、両車の車名を合体させシルエイティと呼ばれています(ボディがシルビア、顔面が180SXの場合はワンビア)。
元々はフロントまわりを損傷した180SXオーナーが、シルビアのフロントまわりを代わりに着けたのが始まりと言われていて、多くのパーツを共用する両車は“ポン付け”とまではいかないまでも、大掛かりな板金をせずとも移植できたようです。
また重いリトラクタブルヘッドライトの軽量化につながることもあり、『頭文字D』の影響と共にシルエイティ化する180SXが増えていったのです。わずか一代で生産中止となったしまった180SXですが、マンガなどの影響もあり再び脚光を浴びたというわけです。
ちなみにシルエイティと聞くとカスタムのイメージが強いと思いますが、実は純正のシルエイティもあったんです。名古屋のチューニングショップが日産ディーラーに制作を依頼したもので、1998年5月に500台限定で販売されています。一般的にカスタム車はディーラーで整備してもらえないことも少なくないですが、これは日産純正なので全国のディーラーで整備可能。さらに複数の専用パーツも装備されていたようです。
そんな180SX、「今いくらくらいなんだろう?」と複数の中古車サイトを調べてみたところ、衝撃の事実が発覚。全国で大体100~150台程度売られていたのですが、相場の“下限”がなんと約150万円! いえいえ間違いじゃありません。ヒャクゴジュウマンエンです。
ちなみに価格がもっとも高い車両は、驚愕の488万円! NISMO仕様のデモカーなどは1999万円という衝撃のプライスでした。 人気車でありながらも残念ながら一代で役目を終え、中古車市場で再び脚光を浴びた180SX。咲かせたのは花は花でも“高嶺の花”だったようです…。
>> 一代限りの名車図鑑
<文/粕川岩治>
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