■カスタム人気も高く、レースでも一大勢力に
「GPZ900R」が長く高い支持を得ている大きな理由が、カスタムパーツが多く、チューンナップの手法が数多く存在することです。後継モデルである「GPZ1100RX」や「ZX-10」のエンジンパーツを使用して排気量を拡大でき、高年式の足回りを流用することも可能。マフラーやキャブレターはもちろん、フレーム補強用のブレースや外装キットなどのパーツも数多くあります。
“日本一の草レース”と呼ばれるテイスト・オブ・ツクバ(TOT)でも、その前身であるテイスト・オブ・フリーランス(TOF)の頃から多くのエントラントが集まり、一大勢力となっていました。
カスタムの度合いやベース車によって、いくつものクラスで参加者を集めているのもユニークなところ。参戦クラスに合わせて「GPZ750R」をセレクトしているライダーも少なくありません。
■街乗りでもレースでもニンジャに乗る
排気量上限が850ccとなる「D.O.B.A.R. ZERO-1」クラスに参戦する芦田健次さんは「GPZ750R」の排気量を846ccまで拡大。初めて乗った大型バイクが「GPZ900R」で、TOFの記事を見て、このレースに参戦するようになったとのこと。レースマシンとは別に「GPZ900R」を所有しており、街乗りやツーリングにも使用しています。
「サーキットも走れてツーリングも楽しめるバイクはほかになかなかないですからね。『トップガン』の影響もありますが、私の場合は乗り始めたきっかけは『あいつとララバイ』に出てくるスターダストブラザーズでした(笑)」(芦田さん)
今回乗ったマシンは、まだ完成して間もないとのことでしたが、マジカルレーシングのショートタンクやシングルシートをまとい、レースマシンらしい雰囲気ながらニンジャの雰囲気を残しています。
サスペンションは前後ともオーリンズ製ですが、フロントフォークには倒立ではなく、あえてノーマルと同じ正立式をセレクト。「もう30年以上乗っていじってを繰り返していますが、まったく飽きないですね。スペアパーツがあり過ぎて、今さらほかのマシンに乗り換えられないというのもありますが」と笑いますが、その表情からは好きなバイクでレースを走る愉しさが溢れていました。
■カスタムの進行に合わせてクラスアップ
同じく「GPZ750R」をベースにしながら、「GPZ1100RX」のクランクを使って排気量を拡大している大根田隆さんは、排気量上限のない「D.O.B.A.R. FOMULA ZERO」クラスに参戦。元々はノーマルのマシンで走っていたとのことですが、チューンナップに合わせて参戦クラスを変えてきました。
前後サスペンションはオーリンズ製ですが、こちらもフロントフォークは正立式のストリート用を選び、バネレートと減衰を調整。「TOTの雰囲気には正立のほうが合っていると思って」と語るように、レースでのスペックだけを追求したカスタムとは一線を画しています。
普段は日光サーキットを中心にスポーツ走行を楽しんでいるとのことで、TOTにもその仲間とともに参戦。エンジンも友人が組んでくれたとのことでした。ユニークなのはペイントで、自身で缶スプレーで塗る際に「しまむらで買った」というレースのカーテンを当ててスプレーすることで、花柄の模様に仕上がっています。
■ニンジャの最高峰に位置するカスタムマシン
おそらく国内最速のニンジャと呼べるのが、パワービルダーの「GPZ900R」。エンジンは「ZRX1200」のものに換装し、JEのピストンやキャレロのコンロッドを使用し、排気量は1124ccまで拡大され190PS以上を絞り出しているとのこと。フロントにはオーリンズの倒立式フォークを入れ、ブレーキもラジアルマウントとされています。
過去には、スーパーチャージャー付きのモンスターマシン「ニンジャH2」を抑えて優勝を飾ったこともあるマシンですが、今回のレースでは決勝中の転倒で惜しくもDNF。しかし、ニンジャカスタムの可能性を感じさせるマシンです。
現行のスーパースポーツとは異なる武骨なイメージを持ち、カスタムの幅が広くレースからツーリングまで楽しめるマシン。今後もこうしたマシンが出てくることはなさそうです。それこそが、ニンジャが多くのファンを惹き付ける理由なのでしょう。
>> テイスト・オブ・ツクバ
<取材・文/増谷茂樹 写真/松川忍>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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