■ネイキッドブームの頃に登場
「CB400 SUPER FOUR」の初代モデルが登場したのは今からちょうど30年前となる1992年のこと。非常に熱かったレーサーレプリカブームが下火になったあと、1989年に発売されたカワサキ「ゼファー」が人気を集めてネイキッドブームが訪れた頃です。ホンダには「CB-1」というネイキッドモデルが存在しましたが、やや未来的なデザインで人気が出ず、タンクなどの存在感を増したオーソドックスなデザインのこのモデルにバトンタッチしました。
エンジンは、空冷だった「ゼファー」に対して水冷の並列4気筒。「CBR400RR」のパワーユニットをベースに、クランクの慣性を増すなど中低速寄りにチューニングされ、抜群の乗りやすさを実現していました。教習車にも採用されるなど、初心者からベテランライダーまで多くの人に愛された理由のひとつはこのエンジンにあると言えます。
1995年にはビキニカウルを装備し、ハイカムやアルミ製サイレンサーを採用するなど走行性能を向上させた「Version R」、その後、カウルを廃した「Version S」も追加されました。
■「HYPER VTEC」の採用で大きく進化
30年の歴史の中でも大きな変更だったのは、1999年に「HYPER VTEC」を採用したことでしょう。このシステムは、カムプロフィールが切り替わる4輪車のVTECとは異なり、開閉するバルブの数が低回転と高回転で切り替わるもの。6750rpm以下では2バルブ、それ以上では4バルブとなることでエンジンキャラクターが大きく変わります。特に6750rpmを超えたところからの排気音は官能的で、多くのファンを惹き付ける魅力のひとつになっています。
2002年にはエンジンが「HYPER VTEC SPECII」に進化。バルブの切り替わる回転数が6300rpmと低くなり、より気軽に官能的な排気音を味わえるようになりました。また400ccクラスでは初となるイモビライザーも装備。2003年には早くも「HYPER VTEC SPEC III」にバージョンアップし、6速ギアのみ切り替わりタイミングが6750rpmに改められ、高速巡航時の燃費と疲労感の低減が図られました。そして、2005年にはハーフカウルを装備した「CB400 SUPER BOL D'OR」が追加されました。
■インジェクションの採用でさらに進化
もうひとつ大きな進化だったのが、2007年に燃料供給が電子制御のインジェクション(PGM-FI)になったこと。「HYPER VTEC」システムも「HYPER VTEC Revo」に進化し、エンジン回転数だけでなくスロットル開度も検知して駆動バルブ数を緻密に制御できるようになりました。巡航走行時などスロットル開度が小さい時は2バルブを維持し、加速時などスロットル開度が大きい場合には、4バルブに切り換わって爽快な加速を味わえます。
2014年には「CB400 SUPER BOL D'OR」にLEDヘッドライトを採用。ホイールも10本スポークのデザインに変更されました。2017年には平成28年度排出ガス規制(ユーロ4)に対応するとともに、吸排気系を見直すことで最高出力も従来の53PSから56PSにアップさせています。マフラーの構造も一新され、排気音がさらに魅力的になっています。
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誕生から30年という節目に生産を終了することになった「CB400 SUPER FOUR」。長らく国内の400cc市場を引っ張ってきた車種であり、一度このマシンに乗った人はずっと乗り続けると言われるほど完成度の高いマシンでもありました。現行モデルでは400ccクラスで唯一の4気筒マシンでもあり、生産終了は本当に惜しい限りです。
近年は「ゼファー」を始めとする旧モデルが高値で取り引きされていますが、まぎれもない“名車”であった「CB400 SUPER FOUR」も将来的に価値が上がることは間違いないと思われます。日本特有の免許制度によって生まれ、国内のユーザーに愛され続けたマシン。乗っておきたいと思っている人には最後のチャンスかもしれません。
>> ホンダ「CB400 SUPER FOUR/BOL D'OR」
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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