■オキニな服を着て過ごす金曜日の足元は、真っ黒なタビスニーカー
【お気に入りの1足】
Maison Margiela× Reebok Classic
「クラシックレザー タビ」
なかなか出会う機会のない銭湯店主という職業。しかも一見して“そうと分かる”人は皆無と思われる独特な外貌に「本当なのか?」と疑いたくもなるが、聞けばそもそも実家が八丁堀で銭湯「湊湯」を営むという岡村さん。
彼がこの業界に足を踏み入れたのは、今から遡ること16年前。25歳の頃だ。「いつかは家業を継ぐだろうなぁ」と考えながら代官山の眼鏡屋で働いていた彼と、某有名セレクトショップで働いていた実兄の元に、「前経営者が体調不良のため、銭湯を引き継がないか?」という話が舞い込む。2つ返事で引き受ける兄。「いつかやるなら、今がタイミングか」と追従する弟。こうして20代半ばの若すぎる兄弟の手による新生・天神湯がスタート。だが最初は、なかなか地元の人々に受け入れてもらえず四苦八苦したという。
「年齢的にも若いし、見た目もこんなでしょ? 場所的にも下町気質な常連さんたちが多いので、最初の半年間は本当にアウェイでした。でもそのうちに、“あいつら若いけれど頑張ってるぞ!”と認めてくれるようになって。そこから一気に受け入れてもらえるようになりましたね」
その後、兄は実家の「湊湯」を継ぎ、一方の岡村さんは1人で「天神湯」を営むことに。今では常連客がひっきりなしに訪れる繁盛っぷりで、“品川区で最も黒い”といわれる名物の黒湯は、ファッション業界人の間でもファン多数。一部では“ニューウェーブ系銭湯の先駆者”とも呼ばれているらしい。そんな人気銭湯の店主が、どんなスニーカーを履いているのか気になったが、当然ながら仕事中は基本素足。
ならばいつ靴を履くのかと基本的な1日の流れを聞けば、「15時オープンなので、大体14時〜14時半に来て開店準備をするところからスタート。掃除など基本的な作業は、前日の閉店後に済ませてあります。で、営業時間中は基本フロントに乗って、スタッフと交代しながら5〜6時間は座りっぱなし」とのこと。
ちなみに“乗っている”という言い回しは、番台スタイルだった頃の名残だとか。何とも江戸の粋を感じるではないか。なんて話は置いといて、いよいよお気に入りの1足をご披露といこう。
現れたのは、黒湯にも負けない存在感を放つ漆黒のランニングシューズ。オーセンティシティ(信頼性)、アノニミティ(匿名性)、リコンセプション(再構想)を通して独創的なクリエイションを発信するハイブランド、Maison Margiela(メゾン マルジェラ)。同ブランドとスポーツシューズブランドであるReebok Classic(リーボッククラシック)によるコラボシリーズは大きな話題を呼んだ。その第3弾として登場したのが、この「クラシックレザー タビ」である。
最大の特徴は、マルジェラのアイコンにして、ファッション業界人のファンも多いシューズ「Tabi」の特徴を落とし込んだ“スプリットトゥ”。岡村さんもこのデザインに惚れ込んだ一人だ。「昔から大好きなデザインで、発売日にショップに並んだけれど、その時は買えず…後日どうにか手に入れることに成功!」。実際に足を通した瞬間、あまりにも気に入ってしまい即このモデルの虜に。
「履きつぶしてもいいように、ブラックを3足+ベージュ系のナチュラルを2足=計5足を確保済みです! 一見難しそうですが、基本的にシンプル&タイムレスなデザインなので、流行とは関係なくずっと履けるのが魅力かなって。履くだけでオシャレに見えますしね(笑)」
リラックス感がありながらストリートな匂いもするTシャツ&ショーツのセットアップにもよく似合っている。思わず“旅(タビ)ゆけば〜ぁ〜 駿河の〜ぉ”なんて鼻歌も飛び出しそうだ。
「今日の格好は休日スタイルです。僕の場合、オンとオフをしっかり区切りたいタイプなので、基本的に仕事着はウチのオリジナル Tシャツとか、黒一色の動きやすい格好。その分、定休日の金曜日は好きなファッションを楽しんでいます。こういったゴールドのアクセサリーなんて普段はしませんよ。今日は取材ということで、気合を入れちゃいました(笑)」
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週1回のオフタイムである花金。コロナ禍前は、ファッション&カルチャーのさまざまなイベントに顔を出していたという岡村さん。オキニな服とスニーカーで過ごす自由な時間が、また戻ってきた日に備え、“タビは道連れ”ってなワケで。
>> スニーカーとヒト。
<取材・文/TOMMY>
TOMMY|メンズファッション誌を中心に、ファッションやアイドル、ホビーなどの記事を執筆するライター/編集者。プライベートでは漫画、アニメ、特撮、オカルト、ストリート&駄カルチャー全般を愛する。Twitter
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