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レクサスの最新クーペ「RC」は、スポーツカーのように走行性能を突き詰めたわけではなく、かといって、セダンやステーションワゴンと比べると実用性も高くない。
ならば、その存在意義はどこにあるのか? 端的にいえば「カッコ良さ」や「贅沢さ」だ。2ドアクーペでなければ成立しないスタイリッシュさと贅沢感を演出できてこそ、2ドアクーペは成り立つのである。
いい換えれば、カッコ悪い2ドアクーペに存在意義はない。となれば当然、デザインに力が入るのだが、スピード感のあるフォルム、美しいルーフライン、豊かなリアフェンダーの膨らみなど、RCのデザインはそうとうカッコいいと僕は感じている。
そんな僕の評価をさらに高めているのが、オプションで設定されている世界初の塗装技術“コントラストレイヤリング”を導入したボディカラー、ラディアントレッドだ。
RCの通常の塗装が、中塗り、カラーベース(発色層)、マイカベース(反射層)、クリアコートの4層で構成されるのに対し、ラディアントレッドは、中塗り、高輝度シルバーベース、クリアコート、レッドカラークリアベース、クリアコートの5層塗り。シルバーベースの上にクリアコートを重ねたのがミソで、これにより、ハイライト部はより鮮やかな赤に、シャドウ部はより深みのある赤になる。
実際に屋外で眺めてみたが、光や影をこれほど豊かに表現する“赤”は、今まで見たことがないと思った。背景をクリアに移し込みつつ、時間帯や季節によって移り変わっていく表情は、オーナーを決して飽きさせないだろう。
マツダも同種の試みとして“ソウルレッドプレミアムメタリック”を開発した。ラディアントレッドと同様、鮮やかさと深みの両立を狙ったもので、個人的にも大好きなカラーだ。だが、こちらは4層構造とすることで、コスト(5万4000円のオプション)にも配慮しているのが特徴だが、16万2000円のエキストラコストを求めるラディアントレッドと比較すると、やはり明確な差が存在する。
ボディカラーに16万2000円。決して安くはないものの、塗りの回数だけでなく、職人による水研ぎ工程を採り入れるなど、レクサスならではの塗装への飽くなきこだわりと、それが生みだす素晴らしい結果を目の当たりにすれば、決して不当に高い投資ではないと納得できるはずだ。
文/岡崎五朗(おかざき・ごろう)
モータージャーナリスト。青山学院大学在学中から執筆活動を開始。『GoodsPress』など多くの雑誌に寄稿するほか、テレビやWebサイトでも活躍。合理的なクルマの評価で絶大な支持を集める一方、クルマに対するエモーショナルなスタンスで幅広いファン層を獲得している。
(写真/岡崎五朗、&GP編集部)
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