自分が買った土地だから好きにキャンプ場を作れる、というわけではない話

■まずは絶対に確認したい「区域区分」

▲ゼロから開拓した通称「我々ランド」。みんなからたくさん夢も力ももらったのに頓挫させてしまった

自分の理想の立地を探して回って、「ここだ!」という場所が見つかった。そんなときにまず最初に確認したいのが、「区域区分」です。

詳しくは都市計画法について調べていただくと良いかと思いますが、「市街化区域」「市街化調整区域」「非線引き区域(白地)」があります。この区域区分というのは「開発許可」に関わるものです。

これも詳しくは開発許可で調べていただきたいのですが、スーパー簡単に説明すると、「建物を建てたり、建物を建てるための土木工事をしたりしてOKよ」というものです。この開発許可がなければキャンプ場は作れません。

「法律上、建物がないとキャンプ場を開けない!」のではなく、シンプルにトイレや炊事場がないとキャンパーさんを呼べないからです。

余談ですが、僕たちが失敗したときに行政の方に言われたのが「屋根でなくともそれに代わるなにかがあって、その下でなにかしらの行為や目的があればすべて建物とみなされる」という話。

つまり、開発許可を回避しようと、建物を建てずに簡易トイレを設置して、炊事場にも屋根ではなくパラソルを設置したとしても、厳密には建物に該当するので開発許可が必須ということ。このあたりの判断は行政によってマチマチのようですが…。

▲3年前に挑戦した開拓時の様子。開発許可がおりず、この努力がすべて無駄に

とにかく何が言いたいのかというと、キャンプ場を開くためには必ず開発行為が発生し、それに伴う許可を得る必要があるということです。

そしてその開発行為に関するものが、件の「区域区分」なのです。

語弊を恐れずにざっくり説明しますと、市街化区域はその名の通り「市街」に当たる区域です。なので、キャンプ場を営業するのにはそもそも適した土地ではないことがほとんどです(そして基本的には建物は建てられます)。

非線引き区域は市街化区域や市街化調整区域のような区分けがされていない土地で、これも色々と取り決めはありますが、基本的には開発許可はおります。

▲トイレや炊事場を建てられなければ安定したキャンプ場経営は難しい

注意したい、というよりも避けるべきなのが「市街化調整区域」です。これは「市街にしすぎちゃうと自然とかなくなっちゃうから、ここには家とか商業施設とか作っちゃだめね」という区域です。これも行政によって判断が違う場合があるようですが、基本的に開発許可は下りません。なので、キャンプ場に必要な施設を建てられない=キャンプ場に適した土地ではない、ということになります。

「この場所、都市部から近いし、雰囲気もいいから気に入った!」と思う土地でも、まずはその土地の区域区分がどうなっているのかを事前に確認しましょう。

住所というか地番がわかれば、行政の管轄する課に相談すると教えてくれます。マップアプリなどを使って大体の住所を調べて法務局で地図を取得するか、地元の不動産屋さんに相談してみましょう。

ちなみに、僕たちは事前に行政に足繁く通い、許可が得られるように相談を続けつつ開拓していましたが、申請のタイミングで許可が下りず僕たちの計画は頓挫しました。必ず事前に相談するだけでなく、実際に許可を得られてから動き出しましょう。

 

■区域区分はOK! でも地目は大丈夫?

▲市街化調整区域だったため、開拓に並行して役所に足繁く通って相談をしていたが…

さて、「自分の気に入った土地は非線引き区域。これで開発許可できるから問題ない!」

…とはいきません。

次に気をつけなきゃいけないのは「地目(ちもく)」です。これもざっくり説明すると「その土地がどんな用途のための土地」かを示すものです。

例えば、家を建てるための「宅地」や、野菜を作るための「畑」、米を作るための「田」、竹や木々が生えている「山林」などです。そして地目以外の使い方をしている場合は変更の登記をしないといけません。逆に言えば変更をすることができます、原則としては。

では、キャンプ場はどういう地目であれば作れるか。答えは「宅地」と「雑種地」です。キャンプ場の施設は建物に当たるので「宅地」に変更する必要があり、キャンプサイトは「雑種地」に変更する必要があります。

「なんだ。地目が宅地や雑種地じゃなければ変更すればいいんでしょ。ビビらせるなよ」と思うところですが、絶対的に注意が必要な地目があります。それは「田/畑」の地目。このふたつは特に変更が難しい、あるいは現実的には「無理」と言えるくらいハードルが高い地目と言えます。さらに言えば「農業振興区域」に定められている農地は、そもそも農地転用(田や畑などの農地を別の地目に変えること)は許可されていません。

少しややこしい話になりましたが、つまるところ「地目=田/畑」は避ける。そして建物を建てれば宅地に、キャンプサイトは雑種地に変更する必要がある、ということです。

そしてこの部分も事前に行政にすべて相談し、申請・許可を完全に得てから動き出すべきです。

 

■「地目=森林」の中でも気をつけなきゃいけない保安林の存在

▲私有地でも木の伐採に申請が必要になる場合もあるので注意

ゼロから開拓した時にふと気になった「木の伐採」。基本はその土地の木々を活かす方向でしたが、ガッツリ雑木林だったのでどうしても邪魔になってしまう木が沢山あり、伐採する必要がありました。

ただ、「木の扱いって法律や行政上どうなっているんだろう?」

そう思って、当時森林課(行政により違う場合があります)に聞いてみたところ、

「エリアと切る量によっては“申請”するだけで充分だけど、“保安林”に指定されているエリアや伐採量によっては“許可”が必要だったり、“そもそも許可が下りない”場合がある。これは管轄する市町村によって違う」

という話でした。

▲保安林は国有林のみと思っていたら個人所有の土地でも指定されている場合があると当時学んだ

保安林は水源確保や災害防備などのために指定された森林で、勝手に伐採したり、土地の形を変えたりできないようになっています。

つまり、「この森林いい雰囲気だなぁ」と思っても、保安林に指定されていれば開拓が難しい可能性があり、保安林でなかったとしても木の伐採についても充分に検討しなければいけない、ということです。

そしてこのことについても行政に事前に確認・相談をしましょう。

▲空いている土地だからなんでもOK! というわけではないのがキャンプ場。事前の調査をどこまでできるかが重要です

*  *  *

というわけで、キャンプ場づくりを「開発行為」の観点からお話してきました。あまりややこしくならないようにざっくりと説明してしまったので、厳密には違う点もあるので、参考程度にしていただければと思います。

ただ、何にせよ「区域区分」や「地目」は絶対的にクリアしないといけない要素です。そして肝なのが「行政によって違う」ということ。

ネットや文献だけで調べて「お、全然OKじゃん!」と思って進めても、実際に許可を出してくれる行政が認めてくれなければすべて無駄骨です。

個人的な経験で言えば、相談と確認だけでもいけません。実際に申請をして、審議してもらって、許可がおりてから開拓を始めることをおすすめします。

併せて行いたいのは「地元の方々とのコミュニケーション」ですが、これはまたの機会に。

それでは今回もご覧いただきありがとうございました!

「-be-北軽井沢キャンプフィールド」
〒377-1411 群馬県吾妻郡長野原町応桑1984-160

 

>> [連載]放置キャンプ場開拓日誌

<文/山口健壱>

山口健壱(ヤマケン)|1989年生まれ茨城県出身。脱サラし、日本全国をキャンプでめぐる旅ののち、千葉県のキャンプ場でスタッフを経験。メーカーの商品イラストや番組MCなどもつとめる。著書に「キャンプのあやしいルール真相解明〜根拠のない思い込みにサヨウナラ」(三才ブックス)

 

 

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