キャンプ場の場所選びをする際に必ず見ておきたい“土地の要素”とは

■最高のロケーション…! であってもままならぬ土地もあります

▲どこか北海道のような雰囲気のある「-be-」のキャンプサイトは僕たちの理想的なランドスケープ

「草原の広々した雰囲気がいいなぁ」「林間の静かな空気感が好き」「富士山ドーン!が最高」「夜景が抜群の場所こそ至高」というように、キャンパーの皆さんはそれぞれお気に入りのキャンプシーンというかロケーションを持っているかと思います。

そして、皆さんの中にキャンプ場を始めたいという方がいれば、その「自分の理想のキャンプ像」を元にキャンプ場予定地を探すことになると思います。

その際に、絶対に気をつけたほうが良いポイントがいくつかあります。そのいくつかのポイントを天秤にかけた上で土地を選ばないと、お金も時間も心ももっていかれますから。

実際にこれまで茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、静岡県で土地を探したり、「-be-」の整備を始めてから「ここを最初に検討しておくべきだった…」と思ったりしたことをベースに紹介していきます。

 

■人里から離れすぎているとインフラ整備が大変だぞ

▲どうせだったら大自然の中でキャンプ場を!となるが、必然的にインフラ整備が難しい土地も多くなる

せっかくキャンプ場をやるんだったら、人里離れた静かで豊かな自然の環境がいいなぁ。そう思うことでしょう。キャンパー的にもそういうキャンプ場に出合うと「うぉー! キャンプしにきたぞー!」感が高まって非常に気分が良い。

ですが、ここの塩梅を間違えると大変なことになります。

キャンプ場を開くにあたっては、「キャンパーさんが飲める水の確保」や「トイレや洗い物の排水」「何はなくとも電気は必須」で、「管理運営に必要なネット環境」も必要です。

▲場内管理に必須の管理棟にトイレや炊事場。インフラが整わないとキャンプ場は成り立たず…

あまりに人里から離れすぎていると、上下水の確保と処理も、電気を引くことも、ネット環境の整備なんかもかなり高いハードルになります。

上水用に井戸を掘るにしても、飲用可能な水が出るかどうか。下水も浄化槽を設置するにしても排水先も検討しないといけません。電気も遠すぎる場合は自費負担が高くなるし、そもそも建物が建っていないと電気を引いてもらえない可能性もある。

上水・下水・電気・ネットはキャンプ場運営に欠かせない要素ですが、これが確保できる、あるいはしやすい土地かどうかは絶対に確認しましょう。このインフラ整備はキャンプ場の生命線です。

 

■山林をキャンプ場にするなら考えることが山ほどあります

▲「自然の中に身をおいている」感覚にとにかく癒やされる林間サイトはキャンプ場の中でも人気のロケーションのひとつ

キャンプ場の人気のロケーションとして「林間サイト」があります。いいですよね。揺れる木陰の下でコット(キャンプ用のベッドのこと)を出して、お昼寝。最高です。

というわけで、「林間サイトにしたいから森林を選ぶぞー!」という場合は、「木の様子」を慎重に確認しましょう。谷地(やち)はキャンパーさんの快適さにつながる要素が強くありますが、森林の状態はキャンパーさんの安全にも関わってくる重要な観点です。

いろいろな理由が重なって、荒れてしまった里山は日本全国にたくさんあります。よくよくきれいに整備された山林を購入なり、賃貸で使えるのであればいいですが、おそらくはそうではない土地が候補に入りやすいかと思います。

▲立ち枯れした木を何本も伐採した。菌が入り込み徐々に腐りが進行し、終いには倒れてしまう

そういった土地は、木々が混み合って生育していることが多く、背は高いのに細い木が乱立していたり、木の中に菌が入り込んで立ち枯れ(立ったまま枯れた)した木がたくさんあったりします。シンプルに寿命が近い木もあるでしょう。

これらの木々は風に弱いので、強風でたやすく折れてしまう危険性をはらんでいます。実際、数年前の大型台風が来た際、当時働いていたキャンプ場周辺にあった荒れた杉林は片っ端から折れてしまいました。

▲木は元気でも風や雪などの影響で途中から折れる枝も。届く範囲なら処理はしやすいが、10m以上の場合は高所作業車が必要

また、木は元気でも枝が枯れて折れている場合も多い。パッと見では雰囲気が良く、豊かな森林に見えても、よくよく木の上の方を見てみると、折れかかっている太い枝や、すでに折れているけど他の枝に引っかかって落ちていないだけの枝も実はたくさんあります。

このように森林全体の健康状態と、個別の木々の様子、頭上の枝たちをしっかり観察した上での場所選びが必要です。

僕たちは「-be-」を借り受けるにあたって、それ以外の要素(サイトの状態や雰囲気、施設の状態、商圏との距離など)を検討した一方で、この木々の状態の確認が甘かった。

場内作業をしながら状態を観察していると、立派そうに見える木が実は枯れていたり、10m以上高い位置で枯れて落ちかかっている枝を見つけたり、そんなことばかりです。

すでに林業のプロにお願いして伐採してもらいましたが、立ち枯れしている木は8本ほどありました。他にも危なそうな木は春先に順に切ろうと思っています。

▲無料の焚き木として提供しようにも無限に枯れ枝が発生していて何かしらの処分方法を検討しなければいけない現実

他にも荒れた林では倒木の処理も必要になりますし、大量の枯れ枝の処分方法も事前に検討すべきです。割って薪にしたとしても2年ほどは乾かさなければ使えません。キャンパーさんに「無料の焚き木」として開放したとしても、保管・乾燥のための場所を確保しないといけません。産業廃棄物として処理するとしても量が出るので決して安くはありません。

実際に「-be-」でも、切り倒した木や2年半のうちに落ちた枯れ枝は無限にあって、その処理に悩まされています。ウッドチッパーを借りてきてウッドチップにしたいなぁ。

このように、事前に森林状態がどうなっていて、どういう処理が必要になるのかを事前に検討しておくと「うわ、これ考えておくべきだった。まじかー…」というしんどさを回避できます。

▲太い木ほど根も強く張るため、抜根するのにも時間も手間もかかる

ちなみに木は切ったら終わりではなく、根っこも抜かなきゃいけないんですが、これもまた処理が大変なのです…。

【次ページ】おしなべて注意したい土地の谷地(ヤチ/ヤジ)

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