山本さん:No.1でいられるもうひとつの理由は、常にユーザーの身になって改良を続けてきた結果だと思います。2000年代に、イメージ広告で「世界中の球ひろい企業」というキャッチコピーを掲げていました。つまりは「お客様の声に耳を傾ける企業でいよう」という覚悟の表れなんです。
山口:実直な社風ですね。ユーザーの声は、具体的にどんな製品に見られますか?
山本さん:革新的なものは、ほとんどです。例えば、新幹線の中での出来事。大変そうにホッチキスで書類を綴じていた出張中のOLさんを見かけた商品企画の担当者が、後日その女性の勤務先を訪ねて話を伺いました。そうして、女性でもより軽い力で綴じられる機構を生み出したんです。
他にも高層ビル内の各所に荷物を届ける配送業者の方が「針がなくなったときにわざわざクルマまで針を取りに行くのが大変」との声を拾って、ハンドル部分に予備針の収納ポケットを設けるようになったんです。
山口:どこにヒントが落ちているか分かりませんね。
山本さん:販売店の方からもお話しを伺っているのですが、実際に使っていただいているユーザーに直接伺うことに注力するように心がけています。
山口:子供の頃から何気なく使っていたホッチキスに、こんなにこだわりが詰まっていたとは知りませんでした。これからは、ひと針ひと針、大切に打ちたいと思います! ところで、海外で御社製品はどのくらい浸透しているんですか?
山本さん:アジアでは日本と同じ10号針のハンディタイプが主力で、これも弊社が広めたと自負しています。タイでは「マックスください」とお客様が買いに来られるほど、マックスがホッチキスの代名詞になっているそうですよ。業務用プリンターなどに搭載されているオートステープラでも高いシェアを持っています。
それと、ホッチキスから発展したエアーツールで、建築業界で使われているタッカーや釘打機も国内シェアN0.1です。住宅関連でいえば、電気式浴室暖房乾燥機も国内シェアN0.1なんですよ。
山口:No.1は国内のホッチキスだけじゃなかったんですね。いろんな所でお世話になってます!
マックス >> http://www.max-ltd.co.jp/
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(文・写真/山口清憲)
1978年生まれ。大学工学部卒業後、自動車専門誌の編集部勤務を経て2010年に独立。主に乗りものやメカニズム系のジャンルを得意としている