キャンプ用コンパクトチェアの革命児、ヘリノックス「チェアワン」の人気の理由を紐解く

■過酷な環境下でも使用されるDAC社製ポールで耐久性も抜群

最初に少し触れましたが、ヘリノックスは合金加工のリーディングカンパニーであるDAC社のブランドです。「チェアワン」も言わずもがな、DAC社のオリジナル合金製ポール「TH72M」を採用しています。DAC社のポールはとにかく耐久性と軽量性に優れており、海外の登山用テントに必ずといっても採用されているほどのもの。最近は日本でも採用するテントメーカーが増えてきています。

▲ポールにこの印字がされてるのも地味にかっこいいポイント。キャプションつけてまで言うことでもないんだけど、分かってくれる人いませんか

チェアの重量はフレーム部分がそのほとんどですから、「チェアワン」の本体重量が1kg切る秘訣はこの「TH72M」にあるわけです。

「いやいや軽いのはいいけど、そんな細くて軽いポール、すぐ折れちゃうんじゃないの?」なんてことを発売当初に思っていましたが、杞憂でした。

気になる耐久性については、ポール同士の差し込みが甘く、ポールのジョイント部分やポールの樹脂パーツに差し込む部分が割れてしまったなんて話を稀に聞くこともありますが、キャンプでの通常使用でポールが折れたなどの故障はあまり聞きません。

「せっかくのおしゃれチェアなので、キャンプ以外でも自宅で毎日座っています。購入して4〜5年使い込んだら流石に樹脂周りのポールがぱっくり割れちゃいましたが、モンベルに連絡して折れたポールだけ購入し、自分で修理しましたよ。引き続き今でも毎日使っています」(前出Kさん)

▲荷重がかかりやすい座面4隅の縫製も手を抜かず丁寧でしっかり作り込まれている

Kさんのようにポールなどのパーツが破損してしまった場合でも、モンベルのしっかりとした修理対応で心配ご無用。

「当社ではヘリノックスに限らず、購入いただいたアイテムを長く愛用いただけるようアフターサービスを充実させており、長年の修理で培ってきたノウハウを生かしてサービスを行っています。ヘリノックスについてもシート、ケース、フレームの交換・修理に対応できるようにしています(※)」(モンベル 長井さん)

※アフターサービスの対応はモンベルが輸入販売したものに限ります

なお、注意点としては焚き火周辺で使う場合。脚は頑丈ですが、軽量なため風に吹かれると倒れやすいので風の強い日には気をつけて。

「チェアワンに座って焚き火を楽しんでいるとき、ふと立ち上がって作業をしていると風で倒れて焚き火にダイブしていた」なんて話も聞きます。安全の観点からも、火の回りの使用では十分注意しましょう。

 

■座り心地も申し分無い

それまでのコンパクトなチェアは、釣り人や登山者が使う3脚型の簡易的なものや、フレームレスな座椅子タイプなど、座り心地よりもコンパクト&軽さ特化型なギアが主流でした。

しかし「チェアワン」はコンパクトで軽量なのに、座り心地もしっかり両立したわけです。

▲独自設計の足回りで、路面が多少荒れていても大丈夫。ただ、オプションがないと柔らかい地面のときに埋まりやすいのが難点か

「独自構造のジョイント部分が柔軟に回転する仕組みで、4つの脚が路面状態に併せて柔軟にフィットする設計になっています。ですので、凸凹が気になるフィールドでも非常に安定して座ることができます。座面の高さは、長時間座っていても疲れにくく、かつ収納性を損なわない絶妙なバランスで設計されています。他にもシートの背面にメッシュ素材を採用することで、通気性を確保。より快適にご使用いただけます」(モンベル 長井さん)

▲リラックスして座れつつも、多少の作業もこなせる絶妙な角度

背もたれが少し後傾気味なので、個人的には2泊以上のキャンプで調理などもガッツリ楽しみながら過ごす場合は、従来のフォールディングチェアに分があると感じます。ですがそれでも、これまでご紹介した通り、他の要素とのかみ合わせが抜群なので、それほど問題ではありません。ただ、つらい腰痛持ちの人には他の折りたたみチェアの方がおすすめでしょうか。

前述のコンパクト&軽さ特化型のチェアには「チェアワン」よりも収納性や軽量性が高いギアもあります。ですが、そこに座り心地の視点が入って、コンパクトチェアの選択肢が増えた。オートキャンプ以外の徒歩やバイクなどのキャンプスタイルの確立に間違いなく一役買っていると言っても過言ではなく、これがチェアワンの最大の功績ではないでしょうか。

*  *  *

「強度・質感・デザイン性など、使い心地や耐久性を高める素材やパーツ形状へのこだわりがチェアワンの強み。また砂地や石の多い場所でも使いやすくするためのグランドシートやボールフィート、寒い環境でも快適に過ごすためのシートウォーマーなど、使い方を拡げる充実した専用オプションのラインアップも魅力のひとつです」(モンベル 長井さん)

チェアワンが日本のキャンプシーンの定番アイテムになり、はや十数年。今ではロッキング機能を追加するパーツや、自宅でも安心して使用できるパーツなど、オプションも充実しています。さらに軽量モデルの「チェアゼロ」や地べたスタイルにピッタリの「グラウンドチェア」などバリエーションアイテムが生まれるほど、キャンプフリークに愛されているヘリノックス。

おしゃれなルックスからキャンプだけでなく自宅で使用されるユーザーも多いチェアワンですが、まさに現在のコンパクトで軽量なチェアのスタンダードを作った、エポックメイキング的チェアと言えます。

コンパクトで軽量なだけでなく、座り心地も良い高耐久なチェアを探している方はぜひ一度その原点に触れてみてください。そして、すでにお使いのキャンパーさんはあらためて、その機能性と素晴らしさを愛でてみてください。

>> ヘリノックス

 

>> [連載]The ORIGIN of the CAMP GEAR

<取材・文/山口健壱

山口健壱(ヤマケン)|1989年生まれ茨城県出身。脱サラし、日本全国をキャンプでめぐる旅ののち、千葉県のキャンプ場でスタッフを経験。メーカーの商品イラストや番組MCなどもつとめる。著書に「キャンプのあやしいルール真相解明〜根拠のない思い込みにサヨウナラ」(三才ブックス)

 

 

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