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「CX-5」や「デミオ」といった人気モデルを次々にリリース。まもなく「ロードスター」の発表を控えるなど、今、最も元気なメーカーであるマツダが、商品だけでなく、ディーラー改革にも本気で取り組み始めた。その本格的な第1弾となるのが、東京・目黒区にリニューアルオープンした関東マツダ目黒碑文谷店だ。
訪れたのは暗くなりかけた頃だったが、そのお洒落さに目を疑った。派手なノボリなどは一切ないし、ショーウインドウのガラスに「大売り出し!」みたいなシールがベタベタと貼られていることもない。
高級ホテルのファサードを思わせるパーキングスペースにクルマを停め、2階に上がる。凝った照明に照らされたクルマが並び、その脇には快適な商談スペースが。奥のカウンターでは淹れたての美味しいコーヒーも味わえる。
圧巻だったのが納車ルームだ。お洒落なダイニングバーのように見えるが、すぐ脇にはクルマを停めるスペースがあり、新しい愛車を眺めながら説明を受け、最後にカギを受け取るのだ。
クルマそのものだけでなく、クルマ選びや購入、購入後の点検整備といったさまざまなステージで最高の満足度を提供し、それによってブランド価値を上げていく、というのがマツダの狙いだ。
大半のクルマは、どんなに安くても100万円を超える買い物となる。しかし、それを販売するカーディーラーの設備は古く、雑然としているのがこれまでの常識だった。もちろん、レクサスや一部の高級輸入車のディーラーはそれなりに立派だが、それ以外のディーラーはとてもじゃないが、3ケタ万円の買い物をするような雰囲気ではない。
実は、そんな部分にもクルマ離れの一因があったと僕は考えている。そういう意味で、カーディーラーのホスピタリティを根本から問い直すマツダの取り組みは、大いに注目するに値する。ここを訪れたら間違いなく、カーディーラーに対する見方がガラッと変わるはずだ。
【著者プロフィール】
岡崎五朗(おかざき・ごろう)
モータージャーナリスト。青山学院大学在学中から執筆活動を開始。『GoodsPress』など多くの雑誌に寄稿するほか、テレビやWebサイトでも活躍。合理的なクルマの評価で絶大な支持を集める一方、クルマに対するエモーショナルなスタンスで幅広いファン層を獲得している。
(写真/岡崎五朗)
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