【定番たる所以①】独自の凸凹パターンと特殊コーティングが生み出すふたつの効果
キャンプ用のマットには大きく分けて3つの種類があります。空気を入れてふくらませるエアーマット、ウレタンを始めとした合成樹脂素材で構成されるクローズドセルパッド、合成樹脂素材とエアーを組み合わせたインフレータブルマットの3つです。
クローズドセルパッドは、空気を入れる必要がなく、広げるだけで使えるアウトドア用マットで、主に地面からの冷えを遮ったり、そのクッション性で寝心地を向上させる目的で寝袋の下に敷いて使うもので、多くのキャンパーに使われているギアカテゴリーです。
「Zライトソル」はこのクローズドセルパッドにカテゴライズされるギアで、表面には独自の凹凸パターンを採用。このパターンの効果は大きく2点あります。
ひとつめが寝心地の向上。
フラットなマットに比べて、凹凸パターンが体重を均等に分散するので、地面からのプレッシャーを軽減してくれます。さすがにこれ一枚だけで誰もが快眠できると言い切れるほどのクッション性ではないですが、慣れてしまえばこれ一枚で眠ることは可能です。
ふたつめが、空気による断熱および保温効果です。
マットに寝転んだときに、凹んだ部分にしっかりと空気が閉じ込められます。その空気が地面からの冷気を抑える断熱材の役割を果たすので、フラットな表面のマットに比べてより高い断熱効果が見込まれるわけです。
西脇さんによると、それ以外にも「凹凸の中の空気を自分の体温で温めることで、体温による熱を分散させないので、背中に暖かさを感じやすくなります」とのこと。
私はフラットなマットレスを使ったことがなく比較ができないので、この点について、一年を通して山に登る友人Aは「確かにフラットなタイプのマットに比べて背中に暖かさを感じるときはある。背中が暖かいので、夏山登山時の不意の気温低下にも安心して眠れる」と言います。
一方「厳冬期の雪山だと、温かいからか凸凹の間に結露が発生して凍ってしまうこともある」とのことなので、通常のキャンプシーンはともかく、雪山登山のような、より過酷な環境下で使用する際はマットの使い分けも必要でしょう。
また、「Zライトソル」には凹凸以外にも、表面に施されたフィルムにも暖かさの秘密が。
「独自の金属製のサーモフィルム“サーマキャプチャー”による効果も大きいですね。このフィルムが効果的に体温を反射するため、より暖かさを感じられます。実際、サーマキャプチャーのない『Zライト』と比べて、断熱性が20%向上しています」
いわゆる銀マットの“銀”の部分になるわけですが、これには熱を反射する機能があるんです。ただ、正直なところ、その効果について少し眉唾なものを感じていました。
今回、この取材を機に試してみましたが、実際にアルミ蒸着されている面とされていない面にそれぞれ横になってみると明確に違いが感じられました。持っている人はぜひ一度、半袖半ズボンのような軽装で試してみてください。“サーマキャプチャー”のある面では、よりじんわりと温まる感覚があります。
余談ですが、スリーピングマットの断熱性能を示す値として“R値”があります。R値が高ければ断熱性が高く、地面からの冷気を大きく遮断できます。マットを選ぶ際にはこのR値を参考に、断熱性がそれほど求められない夏用のマットを探しているならR値の低いマットを、断熱性が非常に重要な冬のキャンプではR値の高いマットを選ぶと良いでしょう。
「Zライトソル」のR値は2と、単体の使用では春、夏、秋がメインシーズン。インフレータブルマットやエアーマットとの組み合わせで、冬も使っていけるギアになります。
そんなR値ですが、実は2020年までは各社独自の方式で計算がされており、統一規格がありませんでした。つまり同じR値であったとしても、快適に使える状況が大きく異なる場合があったのです。
そこで2020年、アメリカの規格制定機関「ASTMインターナショナル」により、「ASTM規格」として遂にR値が規格化。その結果、それぞれのメーカーでR値の基準が同じになり、R値による製品の比較を正しく行えるようになりました。
ただ、アメリカで販売されているメーカーについてはASTM規格でR値を表記していますが、2023年時点の日本ではASTMに基づいたR値の表記義務はありませんので注意しましょう。
【定番たる所以②】故障もせず、長期間使用してもヘタりにくい高耐久性
私は「Zライトソル」と「リッジレストソーライト」を持っていますが、これらは登山でのテント泊だけでなくキャンプでも必ず持っていくアイテムのひとつです。平地でのキャンプ泊の機会が多いということもあるかもしれませんが、大きな故障もなく使い続けています。
この耐久性について、西脇さんは「『Zライトソル』での修理依頼はほとんどありません。あるとしても長期間の使用からくるヘタりについての問い合わせが年にあるかないかくらいですね」と話します。
なるほど。合成樹脂で厚手なので、エアーやインフレータブルのように穴が空いてしまって使えない!ということがなく、故障のしようがないわけですね。
耐久性に関しては、故障以外で無視できないのがヘタリになります。ホームセンターで売っているような格安の銀マットを使ったことがある人はわかると思いますが、長いこと使っているとヘタってきて、次第にクッション性を感じなくなります。例えるとしたらせんべい布団とでも申しましょうか。
そんなペラペラな状態では地面の影響を受けやすいキャンプでは快眠どころか眠ることも難しくなります。なので、ヘタりにくさというのはかなり重要な要素です。
「実際に使用しているユーザーの方や販売店の方からは『ヘタリにくさが違う』とお声をいただくことが多いですね。寝心地や使い勝手などは使用する方の好みによって変わりますが、ヘタり具合への評価は一定して頂きます」
私もそれなりに長いこと使ってきて、個人的にもヘタりにくいと感じています。身長170cm、体重80kgで、「Zライトソル」を5年で50泊ほど使用してきましたが、寝心地、性能ともに購入時と比較して大きく気になる点は今のところありません。
また、同ブランドの「リッジレストソーライト」は「Zライトソル」と性能も形状も異なるので同列に語ることはできませんが、10年で200泊ほどしていても、こちらもまだまだ現役です。