【定番たる所以③】1年通して使用可能&スリーピングマット以外にも使える汎用性の高さ
「Zライトソル」の良点には、年間を通して使用できる汎用性の高さも挙げられます。
クローズドセルパッドが持つ断熱性を発揮できる冬シーズンにはインフレータブルマットやエアーマットを組み合わせて使い、春・秋シーズンではこれ一枚で十分地面の冷気を遮断できるので「Zライトソル」単体で眠ることも可能です。
夏の平地のキャンプ場では、その性能がゆえに熱がこもってしまい、個人的にはあまりおすすめしませんが、標高1000mを超える高地でキャンプする際にはちょうどいい暖かさを感じられます。
また、スリーピングマット以外にも使い道があるのも◎。例えばベンチタイプのチェアの上に敷けば、ウレタンのクッション性で座り心地がアップ。冬キャンプでチェアに座っていると背中やお尻が冷えてしまいますが、座布団代わりに敷くことで冷えを防げます。
ちなみに、ユーザーの中には、自分のスタイルに合わせてカスタマイズを楽しむ方もいて、ロッククライミング中の岩壁でのビバーグ時に備えて、落下防止に隅にハトメ加工を施す人もいると聞きます。
このように、テント泊時のスリーピングパッドとして、オールシーズン使い所があるだけでなく、アイディア次第でアウトドアアクティビティに応用できるのも「Zライトソル」の人気の所以でしょう。
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余談ですが、「マットの銀面とウレタン面どっちが表か裏か」という疑問について聞いたところ、「Zライトソル」は“銀面が表”。サーマキャプチャーには体温の反射効果があるため、銀面が上の方がより暖かく眠れます。逆に言えば、夏場のような暖かさが必要ないシーンにおいては、ウレタン面を表にするとより快適に眠れますよ。
今回紹介した以外にも、折りたたんだ際の嵩張りを抑えるために凸凹部分が互いに収まり良くなるようなパターンに設計されているなど、細かく見ていくとその品質の良さをより実感できるポイントがあります。
ですが、数多くのブランドから同様のクローズドセルパッドが発売されている今日に至っては、それらの性能の違いを細かく比較して選ぶのは難しいように思います。私もこれまで多くのマットを比較してきましたが、良い悪いを一概に言うのはほとんど無理と言っても過言ではありません。ある意味では価格相応と言いますか、高価な製品は良い性能を持っていますし、一方で質はそれなりだけど安価で買いやすい製品もあります。この観点からすれば、商品の良し悪しは「そのギアに何を求めるか」によって変わると言えるでしょう。
スリーピングパッドで言えば、求められる要素には、断熱性や快適性、携帯性に耐久性と、さまざまあります。ブランドは、どういう環境下で使用するのか、どういう使い心地を提供したいのかを明確に持ちながら、各要素のバランスを調整し、商品化することになります。
「サーマレストの製品からは明確な意図を感じます。なぜその厚み、その形状、その耐久性なのか、と言った、スリーピングパッドを形作るさまざまな要素に対して、しっかりと答えがある。創業から今に至るまで、『Zライトソル』が多くの登山家、キャンパーの皆様にご愛用頂けているのは、その点を追求し続けてきたからなのではないかと考えています」と西脇さんは言います。
思うに、しっかりとした意図を持って産み出される品質には信頼が生まれ、そういう商品は誰かに教えたくなる。そうして自然と伝わっていき、実際に使った人たちがその性能に満足し、また誰かに伝える。サーマレストに限らず、一本気な老舗ブランドの人気商品はこの点で共通しているような気がします。
「Zライトソル」はシングルのレギュラーサイズで9900円と決して安くはありませんが、これまで積み上げてきた信頼だけでなく、それを裏切らない品質が備わっているからこそ、定番と言えるほどの人気ギアになったのではないでしょうか。
>> THERM-A-REST
>> [連載]The ORIGIN of the CAMP GEAR
<取材・文/山口健壱>
山口健壱(ヤマケン)|1989年生まれ茨城県出身。脱サラし、日本全国をキャンプでめぐる旅ののち、千葉県のキャンプ場でスタッフを経験。メーカーの商品イラストや番組MCなどもつとめる。著書に「キャンプのあやしいルール真相解明〜根拠のない思い込みにサヨウナラ」(三才ブックス)
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