“銀パソ”ブームの火付け役。PCブランド「VAIO」26年の歴史を振り返る

【2003年】カーボン素材を使った「VAIO NOTE 505 EXTREME」

2000年代に入ると、パソコンの主流はノートPCへと変わっていきました。市場全体の傾向をみると、この頃から、軽さや、堅牢性、起動の速さ、処理性能の高さ、バッテリー持ちの長さなどが改良されていく時期に入ります。

VAIOとしては、2003年に発売された「VAIO NOTE 505 EXTREME(PCG-X505)」に注目。こちらは先述の「VAIO NOTE 505(PCG-505)」を順当に進化させていった製品でありつつ、筐体素材には新たにカーボン素材が使われました。最薄部9.7mm、重量約825gという、スリムかつ軽量なことが特徴でした。

「PCの筐体にカーボンファイバーを使う、なんて誰も考えてなかった時代のチャレンジでしたね。もちろん、レーシングカーなどの素材としては使われていたのですが、当時のカーボンというのは一品一品手作りという状況でした。つまり、PCとして量産体制を整えるのが難しかったのです。結果的に数量限定という形で展開することになりました」(巢山氏)

▲2003年に発売された「VAIO NOTE 505 EXTREME(PCG-X505)」

▲「VAIO NOTE 505 EXTREME(PCG-X505)」は全体的にスリムであり、1kgを下回る軽さも兼ね備えた

VAIOのノートPCといえば、最近でも、開いたときにキーボードの奥側がせり上がり、タイピングしやすいような角度に調整される「無限パームレスト」と呼ばれる構造があります。このデザイン名称も、この「VAIO NOTE 505 EXTREME」から始まったものでした。

 

【2009年】ポケットに入るサイズの「VAIO type P」

一方、「VAIO C1(PCG-C1)」のようなミニノートの系統を継いだ機種としては、2009年に発売された「VAIO type P」という機種が象徴的です。コンパクトかつ軽量なノートPCというは、それまでにも複数機種が存在していましたが、「VAIO type P」は、まさに「VAIO C1(PCG-C1)」の直系という印象。ジーンズの後ポケットにパソコンを収めているスタイリッシュな広告のビジュアルも、話題になりました。

▲「VAIO type P」。どことなく1998年の「VAIO C1(PCG-C1)」の面影を感じる。当時、キーボードサイズを犠牲にしたコンパクトPCが多かったなかで、「VAIO type P」はキーボードを優先させた機種としてユニークだった

また同機には、当時登場したばかりの低消費電力プロセッサーが使われていました。

「ちなみに、当時の設計担当者からは、グラフィックスの性能が1600×758というドット数をサポートしていなかったと聞いています。そこで、熱意を持ってかなりのハードネゴシエーションをして、チップの開発チームを動かしたことで、なんとかこのサイズを実現したらしいです」(巢山氏)

▲「VAIO type P」では、豊富なカラーバリエーションが展開された

▲カメラの「MOTION EYE」という名称も残っていた

 

【2010年】ソニー時代の「VAIO Z」

現在のVAIOのラインナップに続くフラッグシップモデルを語るうえで外せないのが、2010年モデルの「VAIO Z」です。

「VAIO Z」シリーズとしては、2003年の「VAIO Z(PCG Z1/P)」、2008年の「VAIO Z(type Z)」なども既にあったため、こちらは第3世代モデルという立ち位置でした。

▲2010年に発売された第3世代「VAIO Z」

▲2010年モデル「VAIO Z」の天面

当時は、デスクトップPCに対するサブとしてのノートPCではなく、ノートPC自体が主役として求められるようになってきた時代。こうした視点で、時代の変化を反映した一台だったとも言えます。

2010年のVAIO Zでは、プロセッサに内蔵されたGPU(iGPU)と、外部のGPU(dGPU)を再起動なしで切り替えられる「ダイナミック・ハイブリッドグラフィックス」機能が新たに採用されたことがポイントでした。

「パフォーマンスを追求したいし、モビリティも追求したい。絶対的なふたつの欲求は、どうしてもぶつかります。これらの両立という課題に真っ向から立ち向かっているのが『VAIO Z』シリーズです。当時のVAIO Zでは、デスクトップPCで使うような大きな電力を必要とするCPUをモバイルPCで使おうとしていましたし、外付けのグラフィックスも搭載していました。さらに、クアッドSSDの4連RAIDという今でもあまりしない構成を採用したくらい、パフォーマンスに振り切っていたモデルだったのです」(黒崎氏)

「当時、iGPUとdGPUの切り替えは、“物理スイッチ”の操作で行う仕組みでした。dGPUを使うと、パフォーマンスが上がるものの、チップがひとつ多く動く分だけ、どうしても電力消費が増えてしまいます。もちろんオートのモードも用意していましたが、ユーザー自身が、作業を早く終わらせたいような場面でパフォーマンス重視で使うか、バッテリーを長持ちさせるかを選べるようにしていました」(巢山氏)

▲「VAIO Z」では、「SPEED」「STAMINA」「AUTO」のスイッチ操作で、パフォーマンスを切り替られた

「一応、iGPU/dGPUの切り替え自体は、2008年モデルの『VAIO Z(type Z)』で既に採用していたものでしたが、2010年モデルでは再起動なしで行えるようになったのです。半導体のベンダーがこうした機能を標準化するより先に、こうした仕組みを取り入れたかったという背景もあって、本当に試行錯誤が繰り返されたモデルでした」(黒崎氏)

 

【次ページ】2015年、VAIO株式会社設立

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