豊岡は「古事記」記載の柳細工をルーツに、自生するコリヤナギを使ったカゴ細工を主とした杞柳(きりゅう)産業が江戸時代に発展。明治時代の柳行李に革バンドを用いた旅行用カバンを経て、大正には旅行者の増加と「大正バスケット」の人気の後押しで、鞄産業へとシフトした歴史を持ちます。
昭和初期にはヴァルカナイズ・ファイバーを使った「ファイバー鞄」、戦後は塩化ビニールレザーなど新素材を積極的に導入。ミシンによる縫製技術の向上に、軽量かつ頑丈でデザイン性の高い「オープンケース」の大ヒットで一大産地としての地位を確立、現在にいたります。
2006年には、地域団体商標として「豊岡鞄」を登録。以前から業界内で使われていた総称を地域ブランド化し、黒衣に徹するのではなくMADE IN JAPANを支える生産地・豊岡と各企業のファクトリーブランドの知名度アップを図るためポップアップストアなどを全国で展開。東京駅前の商業施設 KITTE丸の内と伊丹空港に直営店と聞けば、「知ってる!」なんて人もいるのでは?
とはいえ、「豊岡鞄」とひとことで言ってもパッと代表的なモノが思い浮かばないもの。その点について兵庫県鞄工業組合の副理事長を務めるコニー株式会社 西田正樹社長は「認定企業がそれぞれ個性を出しているからこそ。それがひとつの特色」と話します。
認定基準については「きちんと作られているかどうか」。豊岡鞄は現役の職人が製品審査を担当し、技術や機能、仕上げをはじめ7つの品質基準をチェック。なんと合格率は5割とかなりの厳しさだとか。「豊岡鞄のタグは、品質保証の証。安心マークのような存在と考えていただけたら」と言います。