■ブラックにカラー変更で売上5倍!? 根強いシルバー人気も
2017年に定番色をシルバーからブラックに変更した「フィールドラック」。これまでのシルバーカラーでも十分に人気だっただけに、突然のカラー変更に少し戸惑った覚えがあります。
これについて野﨑さんは「私達営業チームも“人気の商品にテコ入れしなくてもいいんじゃないの?”と戸惑い気味でした」と笑います。
「ある日の営業会議で田瀬が突然、“試しに黒に塗ってみたらすごく格好よくなったんだけど、営業のみんな、どう?”と(笑)。たしかに格好よくて、じゃあいきましょうとなりましたが、正直そこまで変わらないだろうというのが営業チームの予測でした」
しかし、このカラー変更は営業チームの予想を良い意味で裏切り、なんと売上が5倍に。思い返してみると、2016年あたりからギアのカラーリングを統一したキャンプスタイルを楽しむキャンパーが話題になっていた時期でもありました。
「営業活動の中で、カラーについての市場の動向は掴んでいて、それを田瀬にも共有をしていました。それを受けての変更でもありましたが、まさかここまで売れることになるとは思ってもいませんでした(笑)」
実際、使い勝手の良さに流行りのカラーリングも相まって、キャンプのラックといえば「フィールドラック」と言えるほど、キャンプ場に行けば必ず見かけるほどでした。しかし、それゆえに一時は品薄になったことも。
「2017年頃は生産が追いついておらず、多くの方々にご不便をおかけしておりました。2018年には生産体制を整え、現在は十分な供給量を確保しております」
製造機器をユニフレームが購入、協力工場へ提供することで、製造ラインを増設したといいます。買いたくても買えず、高額な転売も行われていたほどだったので、店頭に再び並び始めた時はなんだかホッとしたのを覚えています。
ちなみに、ブラックに変更した後も数量限定でシルバーを販売してました。これについては、「一番の決め手はお客様からの残在庫の問い合わせですね」と野﨑さんは言います。
というのも、ブラックに変更したことで、“シルバーを1台は持っていて、ゆくゆくは追加したい”と思っていたユーザーが、カラー変更で困ってしまったとのこと。
そこで「シルバーで統一したいキャンパーさんが追加できるように、限定生産という形で何度か販売をおこなったんです」ということだそうです。
このあたりの、ユーザーの声をしっかり拾い上げて、商品展開に生かしていく小回りの良さはさすがです。
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第一次キャンプブームから営業を続けるアウトドアメーカー・ブランドの方は、「バブル崩壊後に訪れたキャンプブームの終焉は、それはもう苦しいもので、乗り越えるのがとにかく大変だった」と誰もが口を揃えて話します。
この「フィールドラック」はそんな苦境を乗り越えたキャンプギアのひとつでした。人気が出てきたのがここ数年のことで、最近のギアだとばかり思っていましたが、キャンプの酸いも甘いも噛み分けたギアだったんですね。
今でこそコピー商品も多い「フィールドラック」。使いやすくシンプルな仕様だからこそ、真似がしやすいアイテムなのかもしれません。ですが、その人気の裏側には様々な試行錯誤があったわけです。
ユニフレームに限らずですが、オリジナルのアイテムを生み出せるアイデアや開発力を持っていて、キャンパーに向けて地道な提案を続けてくれるアウトドアブランドをこれからも応援したいなぁ、なんてことを個人的に思ってしまう今日このごろです。
>> ユニフレーム
>> [連載]The ORIGIN of the CAMP GEAR
<取材・文/山口健壱>
山口健壱(ヤマケン)|1989年生まれ茨城県出身。脱サラし、日本全国をキャンプでめぐる旅ののち、千葉県のキャンプ場でスタッフを経験。メーカーの商品イラストや番組MCなどもつとめる。著書に「キャンプのあやしいルール真相解明〜根拠のない思い込みにサヨウナラ」(三才ブックス)
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