世界初のガスバーナー?イングランド生まれ日本育ち?老舗ブランド「EPIgas」の歴史と今

■イングランド発ジャパンメイドのブランドへ

「諸般の事情からイングランド本国での製造が困難になり、1994年に弊社がブランドを継承し、製造とブランド運営をスタートしました」

まさかのブランド継承。様々な事情が絡み合った結果なのだといいます。こうなると気になるのは「どうやって生産体制を作ったのか?」ということ。

「当時を知る社員からは『自社開発・自社生産に変更になり、製造できる環境や職人の問題などかなり苦労した』と聞いています」

ユニバーサルトレーディングは、主に輸入商品を取り扱う商社。EPIgas商品を1970年代から販売しているとは言え、製造設備や技術を持ち合わせている企業ではありません。

そんな同社とEPIgasのピンチを救ったのは「川口市で生業を続けてきたこと」だと西方さんは話します。

「弊社がある埼玉県川口市は、鋳物を中心に発展した工業の町で、その歴史を遡れば江戸時代にまで届きます。そして、今でも鋳物のような伝統的なものから機械の製造など、モノづくりの町として、その精神性が根付いています」

▲イングランド製造時代に作られていたガスヒーター。か、かわいい…!!復刻してくれないかなぁ

そんな工業の町に根ざして商売を続けることで、様々な縁を辿ることができ、なんとか製造できる環境を整えられたのだといいます。

恥ずかしながら川口市がモノづくりの町だったとは知らなかった…

▲西方さんが学生時代に愛用していたGSSAストーブ。脅威の5800kcalで12人の男子高校生たちの腹を満たした

こういった事情から、実は1994年からは川口市の本社工場で生産がされており、ガス器具製品はすべてジャパンメイド。今でも職人の手によって製造が続けられています。

ちなみに西方さんも営業業務のかたわら、一部製造を手伝っているそうで「学生時代からお世話になってきたEPIgasにここまで関われるとは正直思ってもみませんでした(笑)」と、どこか嬉しそうに話してくれました。

ブランド継承してから、はや20年ですか。もはや、れっきとした日本のブランドですね。しかし、川口で作られているなんて…驚きの事実が多すぎるぞ、EPI!!

■受け継がれたEPIスピリットと絶え間なく続くアップデート

最近のEPIgasと言えば、大きな宣伝広告を行っていないことや、10年以上新商品が出ておらず、メディアへの露出も少ない印象。登山用ガスバーナーのレジェンド的ブランドですが、ここ数年のうちにキャンプや登山を始めた人の中には、もしかしたらEPIを知らない人もいるかも知れません。

▲ヘッドに『S.F.P.M.』を採用したことで高い防風性能と炎の広がりを実現したREVO-3700 STOVE(1万2100円)

毎年新商品を発売するメーカー、ブランドが多い中で、既存のラインナップを売り続けるのはなぜなのでしょうか。

「EPIとしてはアイテムひとつひとつを大事にして、より長くご愛用頂ける商品づくりを重要視しているからです。これは、イングランドで生産を行っていた当時から変わらないEPIgasの信念。だからこそ新商品よりも、既存商品のブラッシュアップに力をいれてきました」

かつて多くのガスバーナーを開発してきたEPIgasですが、現在のバーナーカテゴリーは4アイテムのみで、これまでの開発の中でブランドの顔としてふさわしいアイテムだけを残しています。そして、この4つのアイテムたちには実は細かなアップデートが行われており、発売当初よりも高性能化を果たしているのだといいます。

「常に少しでも効率よく燃焼し、安全に使えるためにはどうすべきかというのを考えながらモノづくりを続けていますし、実際に毎年どこかしら内部の仕様を細かく変更してるんです。『より安全で』『より便利で』『より長く』この思いから、マイナーチェンジをひたすらに続けています。これがEPIgasとしての市場のニーズへの応え方なんです」

*  *  *

「EPIgasにはイングランドでの創業当時から独自の精神性がありました。それは“製品開発における精巧さと緻密さへの追求"です。これは、ブランド継承してからも変わることはなく、私たちの大きな指針となっています」

そもそも、このモノづくりへの真摯な姿勢に先々代の社長が強く共感したことがEPIgasを取り扱うことになったきっかけであり、ブランドを受け継ぐ際の大きな決め手でもあったといいます。

EPIgasが「バックパッカー・ストーブ」を世に送り出してまもなく50周年。かつてイングランドで培われたモノづくりへの情熱は、それ以上の熱量をもって今も変わらず燃え続けています。

>> EPIgas

<取材・文/山口健壱(&GP) 写真/逢坂聡>

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