プラモの達人“積みプラ”コレクションから厳選!レア&マニアックキット4選【達人のプラモ術<番外編>】

■作るのがもったいない…

購入したキットは「そのうち作ろう」という毎度お馴染みのセリフとともにクロゼットの中に放り込まれるワケですが、そのまま忘れて幾星霜(笑)。気が付いたらそのキットが絶版になんてことが良くあるんですね。メーカー自体も消滅して入手困難なんてことになっちゃうと、作るのがもったいないってコトにもなるんですよ。クロゼットの奥にはそうしたキットが割とゴロゴロしています。

さらに中古でレアキット見つけたり、譲ってもらったりすることも多いので、さらに作れないキットが増えていくという幸せ…じゃなくて悩みが絶えません。

たまにクロゼットを整理していると「おっこんなキットあったか! 懐かしいなぁ」なること多いです(でも作ろうと思わない)。同じキットがいくつも出てきたり…。まぁモデラ-あるあるですね。

 

1. 今いちばん作りたいのはコレ!

マッチボックス
「1/12 ヴィンセントブラックシャドウ」

だいぶ以前に譲ってもらったマッチボックス製「1/12 ヴィンセント ブラック シャドウ」。同社は英国のミニカーメーカーなんですが、1973年からプラモデルも発売していました。飛行機や戦車、クルマとラインナップも豊富でしたが、バイクプラモはレアでした。

このキットの発売は1980年。「ヴィンセント ブラック シャドウ」は1940年代に生産されたバイクですが、当時で唯一200Km/hを超えるスピードを出せました。生産台数は1774台のみ。うーむカッコいいですなぁ!

プラモ化したのは、知る限りマッチボックスのみだと思います。とは言うもののストレート組みしただけのモデルの写真を見る限り、似てない、というか、かなりチープ…。まぁ80年代のプラモだし、マッチボックスだし…。でもブラックシャドウにしか見えない雰囲気はあるんですよ(褒めてない)。

残念ながら現在マッチボックスはプラモの販売をしておらず、一部製品がRevellブランドとなって販売されています。ブラックシャドウもRevell社版だと現在でも入手できます。オリジナルのマッチボックス版はかなりレアになっているので、なかなか手が付けられません…。ならばRevell版を入手してそれを作れば…)こうしてキットが増えていくワケですね)。

▲中身は、正直なところかなりチープ。マッチボックスのプラモデルはどちらかと言えばディテールがユルいものが多かった。このブラックシャドウもしかり。80年代発売のキットなのでさすがにデカールは劣化して使えない状態。インストがなぜか丸めてある

▲当時マッチボックスのプラモは3色のプラを使った多色成型だった。とはいえ、リアルな色分けではなく、どうしてこの色?と悩むものが多く、ブラックシャドウは黒とダークブルー、そしてメッキの3色成型だった

 

2. 宇宙モノは思い入れがいっぱい

Revell
「1/48スケール マーキュリー・ジェミニ」

宇宙モノ(リアル系)のプラモデルは、月を目指したアポロ計画の影響で、60年代後半からすごくたくさん出ているんですね。ある意味?プラモ業界自体が宇宙モノで溢れていた時代でした。中でもダントツでキットをリリースしていたのは、アメリカのRevell社。マーキュリー計画の宇宙船、ジェミニ計画の宇宙船、そしてアポロ計画の宇宙船ではスケール違いで様々なプラモデルを発売していました。

この1/48スケールの「マーキュリー・ジェミニ」のキットもそのひとつです。現在でも入手可能なので、とくに激レアというワケではないのですが、達人としては外せない、思い入れ深いキットなんです。

2003年、東京お台場の日本科学未来館で『第18回世界宇宙飛行士会議』が開催された際、宇宙飛行士のスコット・カーペンター氏が来日しました。そう! アメリカ最初の宇宙飛行士“ライトスタッフ” 7人の中のひとりです! 1962年にマーキュリー・アトラス7号(オーロラ7)で宙地球を周回した宇宙飛行士です!

宇宙大好き少年だったオジサンモデラーとしては、行かずばなるまいと、当時仕事をしていた出版社に頼み込んで、取材の名のもとにスコット・カーペンターに会いにいきました! その際、徹夜でこのキットのマーキュリーカプセルをスコット氏が搭乗したオーロラ7に仕上げて持っていったのです。

そして当日。台座に御本人のサインを入れていただいたのです。その際スコット氏が「よく覚えていてくれたね、ありがとう」と握手してくれて達人大感動! プラモやってて良かったと心の底から思いましたよ。

そんなワケで、あらためて入手した1964年のこのRevell社製マーキュリー・ジェミニのキットは今も大事に手元に保管してあるのです。

▲キットはマーキュリー宇宙船と複座のジェミニ宇宙船のコンボセット。マーキュリーカプセルには緊急脱出用ロケットも付属。どちらもカプセル内部のディテールまで再現されており完成度は高い

▲1/48スケールといっても、マーキューカプセルは完成後も7センチ位しかない。マトリョーシカみたいな宇宙飛行士のフィギュアも付属している。当然ながらパーツの勘合性も良くはなく、製作するとなると隙間や段差に泣かされる

▲達人が徹夜で製作したマーキュリーカプセル(オーロラ7)のプラモデルを持つ宇宙飛行士スコット・カーペンター氏。2013年に88歳で死去。撮影:長谷川伸二

 

3. “鹿のフン”プラモ買いました!

マイクロエース(旧アリイ)
「鹿のフン」

ホビーショーの楽しみといったら、会場限定商品とかの買い物ですよね! 2024静岡ホビーショーでも御多分にもれず。いろいろと買ってしまいました。モデラーの格言のひとつに『買わずに後悔するなら買って後悔』というのがありまして…、至言です。

それはさておき、今回購入したプラモデルの中で異彩を放っているのがコチラ「鹿のフン」です。マイクロエースがホビーショー会場で販売しておりました。

もともとは1987年に模型メーカーのアリイ(有井製作所)が発売したプラモデルです。当時価格は300円。当時はなんでもプラモデルになっていました。扇風機、エアコン、カセットコンポ、泳ぐ鯉なんてのもありましたねぇ。

さてこの“鹿のフン”ですが、尻尾を押し下げるとBB弾サイズのフンをするというギミックが楽しめます(シュールだなぁ)。でもってフンはおみくじになっているんですね。

何がモチーフなのかは不明ですが、女優の吉永小百合さんが1965年に『奈良の春日野』という歌をレコードで出しておりましてですね、その歌詞が「♪奈良の春日野青芝に、腰を下ろせば鹿のフン~」なんですね…。ってそれがプラモ「鹿のフン」と何の関係があるんだろう(笑)。

その後カルトな内容で人気があったTV番組『タモリ倶楽部』でプラモ「鹿のフン」が紹介されたコトから一躍注目されました。

現在プラモメーカーとしてアリイは存在しないので(模型部門は子会社のマイクロエースに移管)、なかなか入手できないレアプラモデルでしたが、マイクロエースが当時の金型を使い、ホビーショーで再販(拍手)。昨年の静岡ホビーショーでも販売していたらしいんだけど気が付かず、今年めでたく入手できた次第です。

▲キットの内容はシンプル。飾り台付きで鹿の目はシールで再現。おみくじフンは20個付属している。中央の小さな輪ゴムをなくすとフンができなくなる

▲凶、金、幸などの文字がモールドされたフン

▲オリジナルキットは箱入りだが、再販版は袋入りで1500円。組み立てはシンプルそのもの。「フンは耳から入れます」とか「フンが詰まった時は軽く振ると出るようになります」など組み立て説明図の内容がシュール

▲オリジナルキットの箱絵。タモリ楽部で紹介された後のバージョンで、タモリ風の顔のイラストとセリフが追加されていた

▲マイクロエースのブースでは台座の色違いで3種類発売されていた。今回は赤と青の2個を入手、グリーンは買い逃した

 

4. 視線が怖いのでクロゼット奥にしまったプラモ

ユニー
「からくり茶運人形(男姿)」

茶運び人形とは、知る人ぞ知る江戸時代に製作されたからくり人形です。茶を入れた茶碗を人形が持った茶托に乗せると、客人のいる所まで運び茶碗を取ると停止する。空になった茶碗を茶托に戻すと、踵を返して茶碗を元の場所まで運ぶ。

現在知られる茶運び人形は寛政9年(1796年)に出版された細川半蔵の著書である『機巧図彙』(からくりずい)の記述を元に復元されものだが、現在各地に残る茶運び人形は機構上、『機巧図彙』で解説されるものとは異なるところがあり、『機巧図彙』に沿って制作された江戸時代のものは確認されていない。

と書かれているWikipediaの解説に関心しつつ、この茶運び人形のプラモデルを所有しております。

ユニー(日本模型)が1982年に発売していた原寸大『茶運び人形』がそれで、キャッチフレーズは“組み立てて知る匠の技と心”…渋いですな。

キットはオリジナルの構成をプスチックのパーツで再現。クジラのひげが使われていたゼンマイはさすがに金属性に置き換えられていますが、作動機構は実物を忠実に再現しています。人形の顔と着物は完成済み。手元にあるのは男姿仕様で、別に女姿仕様も発売されていました。人形の身長は40センチほどもあり、着ている着物も本格的なもの。

最近知人から譲ってもらったこの茶運び人形、未組み立てのレアな良品で、当初本棚の上に置いていたんだけど、人形の完成写真が常にこっち見ているような…。その視線が怖いのでクロゼット奥にしまっちゃいました。完成させたらもっと怖いんだろうな。夜になると勝手に動いたりしてね…。当分作りませんコレは。

▲人形自体は完成品で、組み立てたカラクリに被せるようになっている。オリジナルは内部のカラクリが木で作られていたが、キットはプラパーツに置き換えられている。人形の右下に見える丸いパーツが動力源のゼンマイで、かなり大きい

▲組み立て解説書ではオリジナルの細川半蔵著『機巧図彙』の解説も掲載されている

▲人形が着ている着物はクオリティが高い。キットは発売当時1万円超えだったので、子供向けプラモでないことは確かだった

▲女姿の茶運び人形も発売されていた。着物が可愛いのだが、絶対に髪に毛が伸びるぞコレ

▲カラクリがどんな動きをするのが興味はあるのだが、日本人形の目が怖いので部屋に置きたくない

 

■最後にオマケ

2024静岡ホビーショーで購入したプラモデル達。今回は、ちょっと控えめで8点(+鹿のフン2点)でした。

>> [連載]達人のプラモ術

<取材・文/長谷川迷人>

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
などでもレビューを配信中。

 

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