3気筒エンジンのバイクが熱い!? 2気筒でも4気筒でもない3気筒ならではの魅力とは

その後、このエンジンは排気量が拡大されていき、「デイトナ675」がカタログから消えた後も、そのネイキッドバージョンともいえる「ストリートトリプル」シリーズは人気を集めています。

▲トライアンフ「ストリートトリプル765」

筆者も歴代の「ストリートトリプル」に試乗していますが、4気筒エンジンに比べるとコンパクトな車体で、低中回転域からのダッシュ力もある特性で、現行モデルで最も所有したいマシンの1台。Moto2クラスに供給されているのは、このエンジンをベースにチューンナップされたものです。

同ブランドの3気筒エンジンは、このほかにも「スピードトリプル1200」シリーズに搭載されるものや、「デイトナ660」や「トライデント660」に採用される扱いやすい特性のものなど、多くのバリエーションが存在します。

▲トライアンフ「タイガー1200 GT Pro」

アドベンチャーマシンである「タイガー」シリーズにも3気筒が採用されており、こちらは不等間爆発に変更されているのが特徴。これによって低中回転域でのトラクション性能が向上し、未舗装路でも扱いやすいなど3気筒ユニットの違った魅力が味わえます。

▲トライアンフ「ロケット3」

ちなみに、トライアンフの総排気量2458ccという大排気量マシン「ロケット3」も縦置きの3気筒という、他に類のないエンジンを搭載しています。ここまでの排気量となると、多気筒化したほうが効率が良さそうですが、あえて3気筒としているところに同ブランドのこだわりを感じます。実際に乗ってみると、トルクの塊のような特性で独自の世界観を築いているマシンです。

輸入ブランドでは、ほかにもMVアグスタが「F3」シリーズに3気筒エンジンを搭載しています。このブランドは、1970年代以前にもレースシーンに3気筒エンジンを導入した実績があり、現行「F3」シリーズはクランク逆回転というエンジンが特徴的です。

 

■国内ブランドではヤマハが起爆剤に

国産メーカーで3気筒エンジンに注力しているのがヤマハです。

▲ヤマハ「MT-09」

2014年に登場した「MT-09」に3気筒エンジンを搭載。このエンジンは「クロスプレーンコンセプト」に基づいた新設計で、クランクの慣性を小さくし、相対的にエンジンの爆発トルクをライダーに感じさせることが狙い。このコンセプトは成功していて、乗ってみるとアクセル操作に連動するようにトルクが立ち上がり、エンジンの爆発力により直接地面を蹴っているかのような加速が味わえます。

この加速力で世界中のライダーの心を掴み、「MT-09」は一躍人気モデルに。細かいブラッシュアップを繰り返しながら2021年にはエンジンやフレームを一新するフルモデルチェンジが行われました。そして2024年には、フェイスデザインやライディングポジションが見直され、ライダーとの一体感がさらに増しています。

▲ヤマハ「XSR900 GP」

このエンジンは、ネオクラシック路線のネイキッドマシン「XSR900」にも搭載され、こちらも人気モデルとなっています。2024年には、かつてのレーサーレプリカを思わせるカウルをまとった「XSR900 GP」も登場。ツーリングモデルの「トレーサー9 GT」にも採用されていて、3気筒エンジンはヤマハの中核を成すパワートレインに成長しています。

▲ヤマハ「トレーサー9 GT+」

筆者も今年モデルチェンジした「MT-09」に試乗しましたが、現行国産マシンでは一番ほしいと思える完成度でした。奇しくも輸入・国産モデルともにほしいマシンの上位に来るのがどちらも3気筒エンジン。サーキットで走れば、4気筒エンジンのほうがタイムは上になるかもしれませんが、ストリートではライダーの意思に直結するような加速力のほうが大切。そうした特性が、3気筒エンジンが支持される理由なのかもしれません。

<文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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