世界中で知られる「ホンダ四輪」の代表格・アコードの48年間11代に渡るモデルの変遷を辿る

■40〜50代のアダルト層に向けて開発された「ヒューマンなクルマ」

▲初代アコードの開発時のスケッチ

1976年の1600ccのハッチバック型の初代アコード登場時のプレスリリースにはこんな記載があります。

「ここにご案内する〈ACCORD〉は、若々しい精神をもつ現代人のクルマとして、ホンダが開発した新鮮な〈ハッチバック・セダン〉。

乗る人たちへの『ゆとり』とクルマをとりまく環境への『調和』を提供することを基本テーマとした〈新しい主張のあるアダルトカー〉です。

CIVICに求めたクルマの原点を変えることなく新しい価値をクルマに与え、ヒューマンなクルマとしての豊かさをもたせて完成しました」(原文ママ)

この言葉の背景には、1970年代半ばまでの「ある問題」があったとホンダ担当者は言います。

「1970年代半ばは、エネルギー問題や新しい排ガス規制の影響を受け、自動車業界にとって大きな変革の時代でした。そのような時代背景の中、乗る人たちへの『ゆとり』と、クルマをとりまく環境への『調和』をめざし、初代アコードが1976年に誕生しました」

そのターゲットは40〜50代。自らの価値観を確立し、生活・信条ともにゆとりある層に向けての登場でし

▲1976年に登場した初代アコード(ハッチバック)。

 

■アメリカでは3年連続で「日本車の販売実績1位」に

1976年の初代以降に登場したいくつかの派生モデル、マイナーチェンジなどの中で1800ccモデルも登場。世界90カ国もの国々で愛されるようになり、1981年までに150万台の生産台数を誇りました。

この経緯についてホンダ担当者はこう言います。

「時代に先駆けた技術や価値を取り入れながら、社会とともに進化した結果、アコードはグローバルモデルへと成長したと考えています」

これらを経て1981年にフルモデルチェンジ。2代目アコードが登場します。姉妹車となるビガーといったモデルも追加され、アコードの支持はますます高まっていきました。

▲1981年に登場した2代目アコード(ハッチバック)

また、日本車として初めてアメリカで生産されることになったのもアコードでした。アメリカ市場において1982〜1984年まで、3年連続で日本車の販売実績1位にもなり、一時はアメリカ人の間で「日本車」と聞けばアコードを思い浮かべる人が多くいました。

そして、1985年には再びフルモデルチェンジ。これが3代目アコードです。エンジン重量あたりの出力効率は当時世界一も記録するなど、アコードの特長は、さらに大きく飛躍しました。

▲1985年に登場した3代目アコード(セダン)

 

■生産台数500万台を突破。アコードの新体系が打ち出された

1989年7月時点で生産台数500万台を突破。同年9月には、4代目アコードが登場しました。初代からの3ドアハッチバックが廃止となり、新体系としてアコードアスコット、アコードインスパイビガーの2系統に大きく分けられることとなりました。

▲1989年に登場した4代目アコード(アコードアスコット/セダン)

コンセプトは初代から続くものである一方、5ナンバーモデルまで拡大され、アコードユーザーの裾野を広げたのもこの4代目の特徴でした。

さらに1993年には5代目アコードが登場。「人と社会を見つめた、ホンダの新セダン基準」によって安全、環境、燃費全てに配慮したモデルでした。その一方、より買いやすい価格設定でも大いに注目を浴びました。

▲1993年に登場した5代目アコード(アコードアスコット/セダン)

 

■9代目で本格的にハイビリッドモデルを展開

続く1997年に6代目アコード、2002年に7代目アコード、2008年に8代目アコードがそれぞれ登場。

▲1997年に登場した6代目アコード(セダン)

▲2002年に登場した7代目アコード(セダン)

▲2008年に登場した8代目アコード(ツアラー/ハッチバック)

6代目アコードは初の四輪駆動モデルも登場し、さらにユーザーの裾野を広げました。

また、7代目アコード、8代目アコードは欧州仕様車と統合され、性能面はもちろん各部品の質、そして環境配慮が向上したモデルだったのも特徴でした。

実は前述の7代目アコードにはハイブリッドモデルも存在しました。しかし、一時ホンダではハイブリッドシステムを小型車向けに絞って開発を行なっていたため、8代目アコードにはハイブリッドモデルが存在しませんでした。

一方、2013年登場の9代目アコードでは改めてホンダの革新的ハイブリッドシステムを搭載。快適な乗り味と、リッター30km(メーカー発表)という圧倒的な低燃費を実現させました。

また、ここでハッチバックモデルは廃止となり、以降のアコードはセダンのみのラインナップとなりました。

▲2013年に登場した9代目アコード

 

■9代目のマイナーチェンジで大幅に刷新された電気系統

続く2016年には、9代目アコードがマイナーチェンジ。特にモーター、バッテリーやスイッチなどに至るまで電気系統を最新鋭のものに刷新。新たなハイテク機能も加わり、まさに時代と共に進化した印象を与えました。

▲2016年に電気系統を刷新した9代目アコード(セダン)

また、2017年には10代目アコードが登場。幅広く低くなった外観は過去のモデルの中でも最もスパルタンな印象を与えました。

▲2020年に電気系統を刷新した10代目アコード(セダン)

そして今年3月に登場したのが11代目アコードです。

ホンダ担当者は「アコードのコンセプトは初代から変わらない」とする一方、「アコードへの信頼をさらに強固なものへと育て上げるべく開発に至った」と言います。

▲今年登場した最新モデルの11代目アコード(セダン)

 

■単なる移動の道具ではなく、ユーザーの人生を「共に歩む存在」に

▲特に安全面や利便性に富んだ最新技術を随所に投影したモデルです

▲過不足なくどんなライフスタイルにもマッチする内装です

「単なる移動の道具としてではなく、お客さまのより充実した日常や人生の成功へ向けて『共に歩む存在』となることを目指しました。

安全面では、最新の全方位安全支援システムを国内向けホンダ車に初搭載したほか、従来の安全機能でも前方交差車両警報、車線変更時衝突抑制機能、車線変更支援機能が加わりました。

また、先進装備としては、国内向けHonda車として初めて Google を搭載し、Googleアシスタント、Googleマップ、Google Playを車内で簡単に利用することが可能となり、普段からスマートフォンなどで使っているアプリをドライブでもシームレスに使えることで、より便利でパーソナライズされた快適なモビリティライフを実現します」

▲スマートフォンのアプリを使って車内状況をコントロールできます

▲2013年の9代目以降、ハッチバックモデルは廃止されたままですが、セダンでも十分な積載量を誇るのもアコードの特長です

言い換えれば、特に安全面での強化を図り、そしてスマートフォンなどと連動しての使いやすさにも注力させたのが最新アコードと言って良いでしょう。

実際に筆者も運転しましたが、アクセルワークなどのキビキビとしたレスポンスの一方、快適な乗り味と、柔らかくも正確なストップ・アンド・ゴーを体感することができました。現行車では、乗り味・機能面でもかなりハイレベルで、まさに初代のアコードのプレスリリースにある「ヒューマンなクルマとしての豊かさ」が、今日までの48年間において脈々と高められている印象を受けました。

 

■セダン市場が縮小傾向でも、アコードを開発し続ける理由

冒頭で触れた通り、ホンダの自動車と聞き、軽ワゴン、コンパクトカー、SUVなどを思い浮かべる人は多いと思います。そんな中でアコードを進化させ続ける理由について、最後にホンダ担当者に聞きました。

「日本国内におけるセダン市場は縮小傾向にあります。

しかし、そういった中でも弊社がセダンであるアコードを開発し続ける意義は、極めてバランスが取れた車体骨格を持ち、乗り心地や静粛性に優れ、車のパフォーマンスとして非常に優れているパッケージだと考えているからです。

新型アコードのグランドコンセプトは『Driven by My ACCORD ~相棒アコードとより高みへ~』。初代から一貫して持ち続けてきた『人と時代に調和したクルマ』の思想を踏襲しながら、お客さまと共により高みを目指せるようなモデルを目指しました。是非多くのお客様に新型アコードをご体感いただければ幸いです」

▲「ヒューマンなクルマ」アコードのさらなる進化に期待を寄せるばかりです

再来年の2026年には50周年を迎えるアコード。その歴史は、そのままホンダ四輪の開発技術の歴史として見ても良いように思いました。さらなる未来にもアコードが「ヒューマンなクルマ」として進化続けてくれることに期待するばかりです。

>> ホンダ アコード

<取材・文=松田義人(deco)>

松田義人|編集プロダクション・deco代表。趣味は旅行、酒、料理(調理・食べる)、キャンプ、温泉、クルマ・バイクなど。クルマ・バイクはちょっと足りないような小型のものが好き。台湾に詳しく『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)をはじめ著書多数

 

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