■“あの頃”の気持ちを思い出すようにポートレート撮影をしてみる
「GR DIGITAL II」を購入した当時、筆者は大学生でした。再びこのカメラを手にすると、あの頃の青春のような、懐かしい気持ちが蘇ってきます。そんな学生時代の感覚を思い出すようなイメージで、ポートレート撮影をしてみました。
顔認識AFのようなハイテク機能はなく、基本的にマルチAFに任せ、絞り優先オートで撮影しています。片手でカメラを構え、ピントが多少ずれていても気にしないラフなスタイル。
「GR DIGITAL II」のオート設定はISO感度を低めに抑える傾向があるため、やや暗い室内ではシャッタースピードが遅くなりがちです。
シャッタースピードが遅いため、ラフに撮影すると手ブレや被写体ブレが起こることもありますが、それもまた味わいのひとつ。「GR DIGITAL II」にはポップアップフラッシュが搭載されており、手軽にフラッシュ撮影を楽しめますし、どこか「写ルンです」のような雰囲気が漂います。
28mmの画角は狭い室内でも撮影しやすく、気軽に使える点が魅力です。
人物を撮影する際は、テンポよくパシャパシャと撮るスタイルなので、「GR DIGITAL II」でRAW撮影をしていると若干ストレスが溜まります。なぜなら、大体2枚撮影すると、書き込み待ちで撮影がストップしてしまうから。
人物撮影では撮りたい瞬間を逃すこともありますが、慣れてくるとフィルム撮影時のように、無駄に撮らない意識が芽生えてきます。仕事で使うなら、ストレスが最高潮に達するかもしれませんが、「趣味カメラ」としてはその不便さもまた楽しみのひとつです。
街中でのスナップは、GRの真骨頂。28mmの広角は、人物と風景を一緒に収めるのに最適です。ロケーションを探しすぎず、適当に歩きながら目に入った場所で撮影するスタイルがおすすめ。
ラフな撮影がGRにぴったりで、被写体との距離感が自然に伝わってきます。
■オールドコンデジの魅力はスペックだけでは計り知れない奥深さがある
同じシチュエーションで撮影し、同じ色味調整を施した二枚の写真です。
並べてみると特に感じる点がありますが、ソニーの「α7RV」(写真左)で撮影した写真は、雰囲気は出ているものの、やはり現代的なシャープさが目立ちます。
一方、「GR DIGITAL II」(写真右)で撮影した写真は、ピントの甘さなどから、より昔のフィルムライクな質感が表現できていると感じます。
起動の遅さやレスポンスの悪さなど、撮影中にストレスを感じる場面は多少なりともあります。それに、スマホのカメラに搭載されているような手ぶれ補正などの便利な機能は、もちろん「GR DIGITAL II」にはありません。それでも、久しぶりに持ち出して撮影してみると、撮影できる画には何ともいえない魅力があって、撮影が楽しくなるカメラだと再確認。
フィルムカメラのように、シャッターを切る一瞬に心を込めて、丁寧に写真を撮ることができる。「GR DIGITAL II」は、そんな“ゆっくりとした時間”と“レトロの奥深さ”を教えてくれるカメラです。言い換えるなら、スペックを超えたエモさを提供してくれるという、“不便を楽しむ”ためのカメラだと思いました。
本機は、フリマアプリや中古カメラ店などで、まだまだ状態の良い個体を見つけることも可能です。最新機種と比べると扱いにくいところも多いですが、不思議と、そんなところも愛せる魅力的なカメラでした。
>> 趣味カメラの世界
<取材・文/田中利幸 モデル/田淵瑚都(@tako_ism)>
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