■「カブらしさ」が残存するクロスカブ110
また、クロスカブ110は、実は筆者が現役のゲタ車として使っているモデルもあります。スーパーカブを少しだけデュアルバーパス風に寄せたモデルですが、CT125ほどの独立した設計・インパクトはなく、あくまでもスーパーカブのベースを維持した印象です。
この「スーパーカブらしさ」の残存感が、筆者のような古いカブファンにはちょうど良く感じます。また、シンプルな分、その気になればカスタムで楽しめる余地がふんだんにありそうで、ここもまた特長のように思います。
個人的には2018年以降、大ヒットに至っているカブ、モンキー、CT125、ダックスなどの「125ccシリーズ」の完璧かつ独自性あるカッコ良さよりも、目立ちすぎずシンプルなクロスカブが不思議と愛着が湧くのが正直なところなのです。
■いわゆる「125ccシリーズ」は新潮流から誕生したモデルだった
スーパーカブシリーズを巡るこの辺の個人的な思いを、ホンダ担当者に伝えつつ、ホンダ側の意見を聞いてみました。
「現行のスーパーカブ50/110、クロスカブ50/110は従来のスーパーカブのオリジナルスタイルの流れにあるモデルです。一方の、C125、CT125といったモデルの誕生は、バイク熱が高いタイのムーブメントが背景にあります。一昔前のタイを始めとするASEAN地域のバイクシーンでは角目(ライト)でカウルが付いているような『走り』を打ち出したバイクが人気でした。一方、カブのような丸目(ライト)のバイクは『古臭い』というイメージを抱く人が多かったようですが、タイの若者ユーザーの間で丸目のバイクの支持が集まるようになり、同時にカブ、モンキー、ダックスなどの伝統的なプロダクトブランドが再注目を浴びたことから、タイの市場をメインに開発がスタートしたのです」(ホンダ担当者)
言い換えれば、オリジナルからの系譜で作られたのがスーパーカブ50/110、クロスカブ50/110で、新しい流れから往年のプロダクトブランドを再構築したのがC125、CT125ということになるかもしれません。
筆者個人的に「普段使いの乗りやすさ」という点ではやはりオリジナルスタイルがベースのスーパーカブ50/110、クロスカブ50/110のほうに軍配が上がる一方、C125、CT125・ハンターカブというモデルには、高い趣味性とスポーティな乗り味を楽しめる特長があるように感じます。大別してこの2つが、「どちらに乗ろうか」とユーザーをおおいに悩ませるところでもあります。
「クロスカブとC125はどちらもアウトドアテイストが強いモデルですので、お客様も悩まれるかと思います。少し前までは女性ユーザーの方はクロスカブを選ばれ、男性ユーザーの方はCT125を選ばれるような傾向がありました。もちろん、どちらが良くてどちらが良くないということはありません。双方に持ち味と良さがあると思います。お客様それぞれのライフスタイルにあわせ、お好みでチョイスしていただければ嬉しいですね」(ホンダ担当者)
実は筆者、次なるゲタ車を「スーパーカブ110やクロスカブ110にすべきか、それともC125やCT125にすべきか」と1年近く迷い続けています。もういっそオリジナル系譜のスーパーカブ110と、新潮流の流れで誕生したCT125の双方を買おうかとさえ思う日々です。いずれにしてもここまで人を迷わせるのもまたカブの魅力。もう少し悩んで乗るべきモデルを選び抜きたいと思います。
<取材・文=松田義人(deco)>
松田義人|編集プロダクション・deco代表。趣味は旅行、酒、料理(調理・食べる)、キャンプ、温泉、クルマ・バイクなど。クルマ・バイクはちょっと足りないような小型のものが好き。台湾に詳しく『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)をはじめ著書多数
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