聴き放題によってリスナー急増!「Audible」の次なるコンテンツ戦略とは

■人気俳優の朗読やオーディオファースト作品に注力

今年6月に開催された記者発表会では、Audibleのここ数年の成長について説明されました。

Audibleは、会員数は公表していないものの、コイン制だった2021年12月を基準にすると、2024年4月の会員数は107.24%増になったとのこと。7.24%増えたのではなく、2倍以上になったわけです。急成長の理由が聴き放題にあることは間違いないでしょうが、継続利用を促すための施策も強化されているようです。

そのひとつが朗読に人気俳優を起用したこと。オーディオブックはナレーションによって印象に差が出ます。文芸作品ではなおさらです。聴きやすい声が望ましいことは言うまでもありませんが、過度に感情表現が入ると、聞き手の想像力が削がれてしまいます。読むでも演じるでもない絶妙なテクニックが必要となるようです。よって、ヘヴィリスナーは作家名や作品名だけでなく、誰が朗読するかもチェックしているようです。

俳優が読む作品は人気が高いようで、今年の4位に入った湊かなえの「サファイア」は永作博美が朗読。村上春樹の『ノルウェイの森』は妻夫木聡、同『カンガルー日和』は多部未華子。他にも宮沢りえ、木村佳乃、堤真一、高橋一生ら、多くの俳優が朗読に参加しています。また、花澤香菜、梶裕貴ら、人気声優が読む作品も楽しめます。

▲人気俳優・声優が朗読するオーディオブックを選んで聴くことも可能

▲著者自身が朗読するエッセイも話題になった

Audibleで配信される作品は、すでに書籍として発売されているものが中心ですが、今年からAudibleのために書き下ろされた作品にも力を入れているとのこと。「オーディオファースト」と呼び、7月には東野圭吾が書き下ろした『誰かが私を殺した』を配信。加賀恭一郎の新シリーズで、寺島しのぶ、松坂桃李ら、人気俳優陣がナレーションに参加したことでも話題になりました。

▲以前は、出版された書籍のオーディオブック化に時間がかかったが、先にオーディオブックとして配信される作品も登場している

 

■隙間時間を有効に使えるのが魅力

日本国内のオーディオブックのリスナーを対象にした調査(マクロミル調査)によると、オーディオブックを聴き始めるきっかけは「時間を有効活用するため」(48%)で、1回あたりに聴く時間は「20〜30分」が最多。利用シーンとして最も多いのは「寝る前の時間」だが、約75%の人が通勤・通学、運動、仕事、家事、育児などの「隙間時間に聴いている」とのこと。紙の本と違い、何かをしながら聴けることが大きなメリットとなっているようです。

実は筆者も今年の春頃からAudibleを始めて、だいたい月に2〜3冊聴いています。ラジオを聴く感覚でポッドキャストも楽しんでいます。紙の単行本は1500円以上するものが多く、文庫本でも700〜800円くらいが相場。なので、Audibleの月額1500円は、十分に元が取れる価格と感じています。

▲本屋大賞をはじめ、さまざまな賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』の単行本は1705円(税込)なので、1冊読むだけで元が取れるとも言える

ここ数年、スマホを使う時間が増えて、読書が減っていたのですが、Audibleによって読書ならぬ “聴書” が増え、読まないので、目が疲れにくくなったようにも感じています。

「Audible ベスト・オブ 2024」の上位には、新しい文芸作品が並びましたが、ビジネス書も人気が高いようで、若い世代に人気のライトノベル、子どもに聴かせる絵本・児童書も充実しつつあるようです。

▲ライトノベルや児童書も人気

Audibleは来年、日本でのサービス開始から10周年を迎えるとのこと。さらなるコンテンツの充実にも期待できそうです。

>> Audible

<取材・文/村元正剛(ゴーズ)

村元正剛|iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、さまざまな雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの編集にも携わっている。

 

 

 

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