国産50ccバイクが終了!? ということで最速の50ccマシンを振り返ってみた

2. ホンダ「NS50F」

▲1987年式「NS50F」

「NSR50」と同じ1987年に登場したのが「NS50F」。こちらは前後17インチホイールを採用したいわゆるフルサイズと呼ばれる車格でした。最高出力は7.2PS/8000rpm。エンジンの基本設計は「NSR50」と共通ですが、ポートタイミングなどが異なるようで、「NSR50」のシリンダーに替えると高回転が伸びるようになるという話もありました。

▲1988年式「NS50F」

翌年の1988年には早くもモデルチェンジが行われ、排気ポートやマフラーの形状などが見直されています。さらに1989年にもモデルチェンジを受け、最高出力の数値は同じですが発生回転数が10,000rpmとなり、高回転が伸びるようになりました。モデルチェンジサイクルの早さに、この時代の50ccスポーツモデルがいかに激戦であったかが現れていますね。

▲1989年式「NS50F」

ちなみにこのマシンをベースにHRCが「NS50R」というレース専用モデルも販売していて、17インチのフルサイズのミニバイクレース入門機として支持を集めていました。また、同系列のエンジンを搭載したフルサイズの「NS-1」も1991年に登場し、タンク部分がメットイン構造になっている作りが話題になりましたので、そちらを覚えている人も多いかもしれません。

 

3. ヤマハ「TZM50R」

▲1994年式「TZM50R」

ヤマハが「NSR50」に対抗するために1994年に投入したのがこのマシン。それ以前の同社の12インチモデルには「YSR50」がありましたが、これは空冷エンジンで最高出力が7.0PSと劣っていたため、17インチの「TZR50」の水冷エンジンを搭載して登場しました。この「TZR50」も7.2PSを発揮し、評価の高いマシンでした。

▲1989年式「YSR50」

エンジンはポート形状や点火タイミングなどが見直されていて、ベースモデルよりも高回転型に。既にレーサーレプリカブームが下火になっていた時期ですが、市場での売上というよりはミニバイクレースで「NSR50」に負けっぱなしではいられないというヤマハの意地を具現化したようなマシンでした。1993年にGP250で世界チャンピオンを獲得した原田哲也のレプリカカラーが登場したのも、個人的には胸熱だったのを覚えています。

 

4. スズキ「RG50Γ」

▲1985年式「RG50Γ」

「NSR50」や「NS50F」が登場するまで、50ccクラスで“最速”と呼ばれていたのが「RG50Γ」です。登場したのは1982年ですが、最高出力は既に7.2PSを発揮していました。スズキの2ストレーサーレプリカの代名詞になっている「Γ(ガンマ)」という名称が初めて用いられた市販車もこのマシンです。

▲1989年式「ウルフ50」

1988年にはフルカウル仕様が、1989年にはカウルレスで丸目仕様の「ウルフ50」が追加に。登場時はフロント17インチ、リア18インチというホイール径でしたが、1990年からは前後17インチとなり、1995年まで生産されていました。7.2PSの上限馬力を達成した水冷エンジンに6速ミッションというその後の原付スポーツマシンの基本となる組み合わせは、このマシンから始まったといえるモデルです。

 

5. カワサキ「KSR-Ⅰ」

▲1991年式「KSR-Ⅰ」

“最速”と呼ばれてはいませんでしたが、独自の世界を築いていたのが「KSR-Ⅰ」です。登場したのは1990年。その頃、少し流行っていたオンロードとオフロードを組み合わせた“スーパーバイカーズ”というレースのマシンを模した作りでした。エンジンの出力は7.2PS/8000rpmで、フロントフォークには倒立フォークを採用しているのが当時は新鮮に見えました。

ホイールは前後12インチですが、ややブロックタイプのタイヤを履いているのがスーパーバイカーズっぽいところ。ホイールは2ピース構造で、ミニバイクレースなどに使用するには重くて剛性が低かったようです。排気量が80ccの「KSR-Ⅱ」もあり、2ストロークエンジンが規制によって姿を消した後は、4ストエンジンを搭載した「KSR110」にバトンを渡すことになります。

<文/増谷茂樹

増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。

 

 

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