■エンジンがOHC化されデザインも一新
長い歴史の中でひとつのターニングポイントになったのが1966年。ここでエンジンがそれまでのOHV(オーバーヘッドバルブ)からOHC(オーバーヘッドカムシャフト)に変更されます。このOHC構造は現行モデルまで続いています。デザインもヘッドライトやウィンカーなど灯火類が大型化されるなど、安全性に配慮したものに。現行モデルと見比べても、大きな違いがないように見えるルックスとなっています。
1980年代に入った頃からは燃費性能の向上に力が入れられるようになります。1981年モデルは105km/L(30km/h定地燃費)を実現。1982年モデルでは150km/L、1983年モデルでは180km/Lという驚異的な数値を実現した「スーパーカスタム」が追加されました。
■角目デザインを経て丸目のスタイルが復活
2007年からは燃料供給がキャブレーターから電子制御のインジェクションに。さらにメカニズム的に大きな進化を遂げたのが2012年。
フロントフォークが一般のバイクと同じテレスコピックタイプとなり、バイクファンに馴染みやすいハンドリングになりました。ただ、この年式のモデルは、デザインがアジア圏などで人気の高い角目ヘッドライトを採用した直線基調のものに。丸目デザインの柔らかいイメージを好む国内ユーザーからはあまり良い反応がありませんでした。
そんな声を受けてか、2017年には再び丸目デザインが復活します。レッグシールドからリアフェンダーにつながる滑らかな曲面デザインも蘇ります。生産拠点も国外から日本の熊本製作所に移管されました。
そして、この年には世界での累計生産台数が1億台を突破! 同じシリーズの乗り物としては前人未到の金字塔です。当時、ホンダ社内ではギネスブックに登録申請するという話も出ていたようですが、そこに予算を使うならユーザーに喜んでもらえる進化に使うべきだという声が強く、見送られたという逸話も伝わっています。
2018年には60周年を記念したアニバーサリーモデルが発売されます。
明るいレッドを基調としたカラーは、1963年に米国で展開され話題を呼んだ「ナイセスト・ピープル・キャンペーン」広告に描かれたイメージイラストをモチーフとしたもの。
この広告は、当時のアメリカでアウトローイメージの強かったバイクのイメージを改め、海外で「スーパーカブ」が飛躍するきっかけとなったと言われています。
ちなみに、ファイナルエディションと同じ日には、サンリオの人気キャラクター「ハローキティ」の50周年を記念した「スーパーカブ50・HELLO KITTY」も登場。このモデルも60周年モデルと同様にマグナレッドのカラーが採用されています。
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時代に合わせて進化を続けながらも、横型エンジンやアンダーボーン構造のフレーム、前後17インチホイールなど基本設計はそのままに66年の歴史を刻んできた「スーパーカブ」。残念ながら50ccモデルはラインナップから外れることになりますが、前述のように原付二種モデルの販売は続くので、その歴史はまだ止まることはありません。今後は排気量が大きなマシンの出力を抑えることで原付免許でも乗れるようになる見込みなので、「スーパーカブ」シリーズはどのモデルが対応するのかも気になるところです。
>> ホンダ「スーパーカブ」
<文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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