安蔵:まず注目したいのが、ソニーとパナソニックから続々登場した「4K有機ELテレビ」ですね。50インチ以上の大型テレビでは「4K液晶」が今や当たり前になっています。しかし、いよいよ液晶のような「バックライト方式」ではなく、「自発光方式」である有機ELがテレビの“本命”として前面に出てきた感じですね。
奈津子:ソニーの「BRAVIA A1」は床から画面がそそり立つようなデザインが素敵ですが、画面から音が出てくるところがとても興味深く感じました。
安蔵:画面そのものを振動させてスピーカーにするというのは10年以上前のパソコンで採用されていましたが、4K有機ELテレビの美しい映像に見合うほどの音質を実現していたのは確かに印象的でしたね。画面と音の位置のズレが全くないし、スピーカーが見えないのはデザイン的にも魅力的です。
奈津子:先日、パナソニックの4K有機ELテレビの工場見学にも伺ったのですが、最高レベルのテレビを作るために作業員のスキルを向上しようというものづくりの考え方に感銘を受けました。
安蔵:「モノづくり道場」ですね。QC(品質管理)や「カイゼン」に力を入れる日本メーカーならではのものづくりの考え方、その方法論が分かりやすく形になっていて興味深かったです。また、たくさんある造花の中に花の映像を紛れ込ませたデモもユニークでしたね。
奈津子:リアルな花束のなかに有機ELテレビが紛れ込んでいるのに、一目では映像であることが分かりませんでした。オーロラのデモ映像も非常に美しくて、本物の星空が埋め込まれているかのように感じました。
安蔵:花束のデモは、有機ELテレビの映像のリアルさをうまく表現していまたね。
奈津子:有機ELテレビはやっぱり液晶テレビに比べて「黒」の表現が本当に素晴らしいと思います。解像度が高いだけでなく、被写体の肌質や衣装などの立体感も情緒的に映し出しているように思いました。私自身も画面の向こう側に立たせてもらう立場でもあるので、「肌質が細かくバレてしまって苦しい」という部分ももちろんあります。でも気持ちに応じて頬が紅潮した様子であったり、炎や空の色の細かいグラデーションや美術セットなどがよりクリアに表示されることは「作り手側の思い」もしっかりと届くことになるのでうれしいです。
安蔵:制作サイドは映像の“アラ”が目立ちやすくなりますから、映像技術に合わせてセットやメイク、カツラなどの精度を上げていかなければならないんでしょうね。