奈津子×安蔵靖志の「最新家電」丸わかりニュース:2017年5月【前編】

安蔵:まず注目したいのが、ソニーとパナソニックから続々登場した「4K有機ELテレビ」ですね。50インチ以上の大型テレビでは「4K液晶」が今や当たり前になっています。しかし、いよいよ液晶のような「バックライト方式」ではなく、「自発光方式」である有機ELがテレビの“本命”として前面に出てきた感じですね。

▲ソニーが2017年6月10日に発売した65V型4K有機ELテレビ「BRAVIA KJ-65A1」(実勢価格86万3870円/税込み)

奈津子:ソニーの「BRAVIA A1」は床から画面がそそり立つようなデザインが素敵ですが、画面から音が出てくるところがとても興味深く感じました。

安蔵:画面そのものを振動させてスピーカーにするというのは10年以上前のパソコンで採用されていましたが、4K有機ELテレビの美しい映像に見合うほどの音質を実現していたのは確かに印象的でしたね。画面と音の位置のズレが全くないし、スピーカーが見えないのはデザイン的にも魅力的です。

▲背面の左右に配置したアクチュエーターによって画面を振動させることで音を出す独自の音響システム「アコースティック サーフェス」を搭載している

奈津子:先日、パナソニックの4K有機ELテレビの工場見学にも伺ったのですが、最高レベルのテレビを作るために作業員のスキルを向上しようというものづくりの考え方に感銘を受けました。

▲パナソニックの薄型テレビ「VIERAシリーズ」

安蔵:「モノづくり道場」ですね。QC(品質管理)や「カイゼン」に力を入れる日本メーカーならではのものづくりの考え方、その方法論が分かりやすく形になっていて興味深かったです。また、たくさんある造花の中に花の映像を紛れ込ませたデモもユニークでしたね。

▲パナソニックの宇都宮工場にある「モノづくり道場」

▲モノづくり道場では機器の製造に必要なさまざまな工程を訓練できるようになっている

奈津子:リアルな花束のなかに有機ELテレビが紛れ込んでいるのに、一目では映像であることが分かりませんでした。オーロラのデモ映像も非常に美しくて、本物の星空が埋め込まれているかのように感じました。

▲「たくさんの花束が埋め込まれていますが、この中に実は有機ELテレビが紛れています。分かりますか?」

▲「正解はこちら! 左側にもガラスパネルがあって紛らわしいのですが、実は中央に有機ELテレビが埋め込まれていたんです」

安蔵:花束のデモは、有機ELテレビの映像のリアルさをうまく表現していまたね。

奈津子:有機ELテレビはやっぱり液晶テレビに比べて「黒」の表現が本当に素晴らしいと思います。解像度が高いだけでなく、被写体の肌質や衣装などの立体感も情緒的に映し出しているように思いました。私自身も画面の向こう側に立たせてもらう立場でもあるので、「肌質が細かくバレてしまって苦しい」という部分ももちろんあります。でも気持ちに応じて頬が紅潮した様子であったり、炎や空の色の細かいグラデーションや美術セットなどがよりクリアに表示されることは「作り手側の思い」もしっかりと届くことになるのでうれしいです。

▲2006年発売のプラズマテレビ「VIERA TH-50PX600」(左)と最新モデル「TH-65EZ1000」(右)との比較。プラズマも自発光のため黒の再現性が高いと言われていたが、こうしてみると違いは一目瞭然だ

安蔵:制作サイドは映像の“アラ”が目立ちやすくなりますから、映像技術に合わせてセットやメイク、カツラなどの精度を上げていかなければならないんでしょうね。

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