【クルマ初モノ図鑑⑥】ボディー&シャシーPart2~ガルウイング、オールアルミ他

■ホンダビート(1991年) -世界初となるミッドシップでフルオープンモノコックボディ

1991年から'92年にかけて、日本の軽自動車メーカーはこれまでにない画期的なモデルを登場させました。車名の頭文字を取って「平成ABCトリオ」とも呼ばれる軽スポーツには、それぞれライバルモデルにない斬新な特徴がありました。

'91年5月に登場したホンダビートは、軽乗用車初の2シーターミッドシップオープンモデルです。MRレイアウトでフルオープンモノコックボディというのは量産車では世界初で、当時の最新コンピュータ解析技術を用いて、高いねじり剛性、曲げ剛性を実現しています。

エンジンはビートのために新開発されたMTREC(エムトレック)3気筒。なんとNAで軽自動車自主規制上限の64psを8100rpmで発生します。さらに4輪ディスクブレーキやSRSエアバッグなど軽自動車初となる装備も多数奢られます。

エンジンは超高回転型だったこともあり、目一杯回さないと十分なパワーを引き出すことができず「遅い」と言われることもありました。一方で街中でも高回転まで引っ張れば、ホンダならではの走りを味わえる楽しいモデルでもあります。

 

■スズキカプチーノ(1991年) -軽自動車初の4輪ダブルウィッシュボーンサスを採用

ビートの登場から5カ月後、スズキも軽2シーターオープンスポーツのカプチーノを市場に投入します。同じオープンスポーツでもビートとカプチーノはコンセプトが大きく異なりました。カプチーノの駆動方式はFR。エンジンはアルトワークスに搭載されるF6A型ターボ(後期型はK6A型)になります。車両重量はわずか700kg(ビートは760kg、AZ-1は720kg。後期型カプチーノは690kg)ということもあり、加速力はずば抜けていました。ルーフは脱着式で、クローズ、Tトップ、タルガトップ、フルオープンになりました。

エンジンが縦置きなのでボディはロングノーズ・ショートデッキなスタイルに。フロントノーズが長くなった分エンジンルームの左右にスペースができたため、そこに軽自動車初となるダブルウィッシュボーンサスペンションが付けられたのです。当時から軽自動車はFFが一般的。そのためカプチーノはほとんどのパーツが専用設計になっています。

 

■マツダAZ-1(1992年) -軽自動車唯一のガルウイングモデル

マツダの販売チャンネルの一つであるオートザムから登場したAZ-1は軽自動車初のガルウイングドアを採用したモデルです。その後ガルウイングモデルは登場していないので、軽自動車の長い歴史の中で唯一のガルウイングとなります。

ドアは上部もガラスになるフルガラスキャノピーに。ドアについた窓の開口部の高さは15cm弱。窓の開閉は手動式ですが、室内が狭いためドライバーは右手で窓を開けるのがほぼ不可能。そしてドアを開けたときにサイドシルがかなり高いため、乗り降りには慣れが必要でした。

ボディはスチール製のスケルトンモノコック。そこにFRP製の外板を取り付けて軽量化を測っています。エンジンはスズキアルトワークスのF6A型ターボをリアミッドシップに搭載。足回りもアルトワークスのものが使われています。

スタイリング以外に多くの人を驚かせたのはクイックなハンドリングでしょう。ロック・トゥ・ロックはわずか2.2回転。国産車では類を見ないハンドリングマシーンだったのです。

 


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(文/高橋 満<ブリッジマン>)

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