■ダットサン12型フェートン(1933年)-現存する最古の国産オープンカー!?
1989年の登場以来、日本はもちろん世界中で愛されるマツダロードスター。しかし残念ながら、日本のマーケットではロードスターを除くとオープンカーはなかなか受け入れられず、特殊なカテゴリーという位置付けから脱却できずにいます。
しかし国産オープンモデルの歴史は古く、たとえば有栖川宮威仁親王からの依頼で内山駒之助が製造した「タクリー号」や、日産自動車の前身となる快進車自働車工場(1911年設立)が1914年に完成させた「DAT号」はオープンモデルでした。当時の写真を見ると、DAT号には幌も確認できます。
もちろん当時のオープンモデルと現在のオープンモデルは、オープンに至った経緯はまったく違うはずですが、その歴史の長さから、自動車という文化にオープンモデルは欠くことのできない存在であることがわかります。
現在、日産自動車は神奈川県座間市にあるNISSAN HERITAGE COLLECTIONに、ダットサン12型フェートンというオープンモデルを保管しています。このクルマがNISSAN HERITAGE COLLECTIONにあるもっとも年式の古いモデルということで、おそらく現存する最古の国産オープンかもしれません。
■プリンススカイライン(1957年)-いち早くツートンカラーを採用
軽自動車からミニバンまで、現在はツートンカラーが人気です。モノトーンに比べて華やかで、楽しげな雰囲気があり、またブラックルーフになると高級感が増しますよね。現在はボディとルーフを別の色にしたものが主流ですが、1990年代はRVやセダンでボディ下部と上部を塗り分けたものも流行しました。
ツートンカラーは、2色を塗り分ける分だけ塗装には手間がかかります。ホンダが2012年に発表したN-ONEはルーフの塗装を熟練の職人が手作業で塗っていることをセールスポイントにしていたほど。
’90年代にツートンボディが流行するまで、日本車ではモノトーンボディが常識でした。しかし、日産と合併する前の富士精密工業(後のプリンス自動車)が製造した初代スカイラインには、白いルーフのツートンカラーがカタログモデルとして用意されていました。これは当時の常識を破る斬新なデザインだったそうです。
ちなみにツートンルーフで思い出すクルマにクラシックミニがあります。ミニの白いルーフは、まだカーエアコンがついていなかったり性能が高くなかった時代にルーフを白くして太陽光を反射させて車内の温度上昇を和らげる意味合いがあったそうです。
■マツダボンゴ(1966年)-日本初の3列シート乗用車
大家族でも快適に移動でき、荷物もたくさん積むことができるミニバンは、ファミリーカーの定番です。現在ミニバンを販売しているメーカーはトヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバル、三菱の6社。ただしスバルは、エクシーガクロスオーバー7の生産を終了し、現在は在庫販売のみ。2017年度中に販売が終了する予定です。マツダはMPVが2016年3月に生産終了。プレマシーとビアンテも2017年度中に生産終了となる予定で、今後は3列シート車の役割をSUVのCX-8が担います。
そんなこともあり、3列シートのクルマというとLサイズミニバンからコンパクトミニバンまでラインナップするトヨタやホンダのイメージが強いですよね。でも日本で最初に3列シートモデルのクルマを世に送り出したのは、マツダなんです。
1966年にデビューした初代ボンゴはトラック、バン、そして3列シートを備えたコーチをラインナップ。当時のカタログには複数のカップルがボンゴにサイドオーニングをつけてピクニックを楽しんでいる写真が使われていました。
また、ボンゴは日本初のキャブオーバー型1BOXでもあります。水冷4気筒800ccエンジンをリアに搭載し、超低床設計で乗り降りや荷物の積み下ろしを楽にした画期的なモデルとして大ヒットしました。
■三菱コルト1000F(1967年)-日本初のテールゲートを持った3ドアハッチバック
セダン、クーペ、SUVなどクルマのボディタイプは多岐にわたります。その中で軽自動車まで含めると現在多くの人が選んでいるのは、ハッチバックと呼ばれるタイプでしょう。ハッチバックとは主に小さなクルマで荷物の出し入れを楽にするためにボディ後方に跳ね上げ式(一部のモデルは横開き式)の大きなドアをつけたもの。
ハッチバック車の歴史は比較的浅く、初のハッチバックは1961年に登場したルノー4と言われています。日本では’66年に登場したコロナ5ドアが初のハッチバック。そしてその翌年には、三菱がコルト1000Fにスペシャリティ感を高めた3ドアハッチバックモデルを追加しました。
コルト1000Fはもともと’66年に2ドア車として登場。3ドアハッチバックは収納スペースを多数設置するとともに、スペアタイヤをしまうタイヤハウスのカバーがテーブルになるなど、アウトドアで便利に使える機能が盛り込まれていました。
■ホンダZ(1970年)-軽自動車初のスペシャリティモデル
日本が高度経済成長で豊かになり、新三種の神器として「カラーテレビ」「クーラー」「クルマ」が挙げられるようなると、とくに若者を中心に庶民の足だった軽自動車にもスポーツ性を求めるようになります。
1970年、ホンダはN360をベースに2ドアハードトップのZを開発。クーペを彷彿させるデザインで、リアウインドウにはエアロビジョンと命名された黒くて太い窓枠を配置するなど、スポーティさを高めたルックスに当時の若者が熱狂しました。
もちろんスポーティさは見た目だけでなく、31psを8500回転で発生する空冷4サイクル2気筒エンジン、エンジン性能を十分に引き出す4速フルシンクロミッション(1971年に登場したZ GSは5速)、強化された足回りなど、走りの性能も高められていました。
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(文/高橋 満<ブリッジマン>)
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