【識者の目_料理道具コンサルタント 荒井康成さん】
包丁や鍋、フライパンといったキッチンで使う道具は、すでに完成された製品が多く、イノベーションがあまりないように思う人もいるだろう。特に定番的なアイテムは、数十年間、同じ形状や製法を守っているものが多く、それが信頼の証にもなっている。しかし、微妙な改良を加えたツールも実は少しずつ登場している。料理道具コンサルタントの荒井康成さんは、その代表例としてバーミキュラの鋳物ホーロー鍋を挙げる。
「鋳物ホーロー鍋といえば、ストウブやル・クルーゼが定番でしたが、そこに割って入ってきたのが、日本のメーカー、愛知ドビーが作る「バーミキュラ」の鍋です。一見すると他の製品との違いはわかりにくいですが、実は随所に工夫が見られます」
代表的なのは、密閉性の高さ。本体と蓋の接合部分を0.01mmの精度で斜めに削り出し、隙間なく閉まる構造を採用。熱や蒸気をしっかり閉じ込めることで、内部で熱対流が起き、食材にしっかり熱を伝える。
こうした高度な加工を、日本の職人が手がけているところも、バーミキュラの魅力といえる。メイド・イン・ジャパンならではの密かなイノベーションを、調理するたびに実感できるツールでもあるのだ。
●荒井康成さん
洋菓子店勤務などを経てエミール・アンリ社の日本代理店立ち上げに携わる。その後、独立して料理道具コンサルタントとして活動。執筆や専門学校の講師も手がける。著書に『ずっと使いたい世界の料理道具』(産業編集センター)
本記事の内容はGoodsPress2・3月合併号62-63ページに掲載されています
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(取材・文/高橋 智 写真/湯浅立志<Y2>)