■マツダユーノスコスモ(1990年) -GPSカーナビを世界初搭載
カーナビの前身であるホンダのエレクトロジャイロケーター(自動車用慣性航法装置)がアコードに搭載されたのは1981年。その2年後には、三菱電機がGPSを利用したナビゲーションシステムを考案しています。
そして’90年4月、バブルを象徴する存在であるユーノスコスモが世界初となるGPSカーナビゲーションシステム「カーコミュニケーションシステム」を20Bエンジン搭載グレードに標準装備しました。
このナビは三菱電機と共同開発したもので、GPS、地磁気・車速センサーによる自律航法を併用したマップマッチングを行いました。モニターは5インチで媒体はCD-ROM。現代のナビと比べると考えられないほど低スペックで、東名高速を走っているとマップ上のマークが太平洋上にあるということもありましたが、それでも当時は度肝を抜かれた人が多数いました。
■トヨタセルシオ(1992年) -GPSボイスナビゲーションシステムを世界初搭載
ユーノスコスモが世界初のGPSナビを搭載した翌年、トヨタも140系クラウンと30系ソアラにGPSナビを搭載しました。そしてその翌年には、初代セルシオのマイナーチェンジで画期的なカーナビを搭載します。カーナビが経路案内を音声で行うボイスナビゲーションです。
CD-ROMに地図データだけでなく主要交差点名の音声データを収録し、主要交差点では、交差点名で音声案内するこのカーナビ。スマホの無料アプリでも当たり前のように音声案内する現代では想像もできませんが、運転中に前方から目線を外さなくても目的地までの案内を知ることができる画期的な機能だったのです。
■ホンダCR-Xデルソル(1992年) -クルマがトランスフォームするトランストップを採用
オープンカーが快適なのはわかっているけれど手が出せない。その理由のひとつに“幌”があります。幌は軽いため手動でも開閉が楽に行えるなどのメリットがありますが、クローズドボディのクルマに比べると遮音性が低くなります。また、ナイフなどで簡単に切れてしまうので防犯面でも不安を感じる人がいるでしょう。それを解決したのがメタルトップです。
国産初の電動メタルトップ搭載モデルは1989年に限定発売されたソアラエアロキャビン。その3年後、ホンダから動きがまったく異なる電動メタルトップモデルが登場します。CR-Xデルソルのトランストップです。
CR-Xデルソルは、屋根部分が開くタルガトップになります。それを電動で開閉する方法が独特! まずトランクがグッとせり上がり、上までいくと、トランクから2本の棒が出現。そして棒がルーフをキャッチしてトランク内にしまい、トランクが下がっていくのです。動作時間は約45秒でした。
この画期的な機能にメカ好きの若者は歓喜しました。ただ、車両重量が重くなってしまったため従来からのCR-Xを愛する走り好きからは疑問視されてしまいます。残念ながらCR-Xシリーズはデルソルで歴史に幕を下ろしました。
■日産シーマ(1996年) -国産車初のSRSサイドエアバッグを搭載
ブリティッシュテイストの上品な雰囲気から、押しの強いジャーマンテイストへとデザインコンセプトを大きく変えたY33シーマ。プレジデントとともに日産のフラッグシップとして最新技術が盛り込まれてきましたが、この世代では安全装備の充実が図られました。
デュアルエアバッグだけでなく前席と後席にSRSサイドエアバッグを全車に標準装備(国産車初搭載)。側面衝突に遭遇した場合に、乗員の胸部はもちろん、頭部に加わる衝撃も和らげられるようにしました。
そして1998年9月のマイナーチェンジでは国産車初となるアクティブヘッドレストを採用。万が一追突されたときに、ヘッドレストが瞬時に前方に移動し頭部を支持。首にかかる負担を軽減できるようにしました。
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高級車に採用された装備は、コストダウンを図ってやがて大衆車にも採用されるようになります。そしてコストダウンとともに重要なのが信頼性。圧倒的な台数が販売される軽自動車やコンパクトカーに搭載されたときに万が一不具合が起こると、メーカーの負担は甚大になります。
衝突被害軽減ブレーキなどはすでに必須の装備として定着し、付いていないクルマを探す方が難しくなりました。これからも斬新なアイデアで開発された装備が一般的なものへとなっていくはずです。
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(文/高橋 満<ブリッジマン>)
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