■アメリカ文化と不変のスタイルを伝える
タイメックスの歴史は、1854年にコネチカット州西部の都市で生まれた「ウォーターベリークロックカンパニー」に始まる。カジュアルに使えて高品質ながら、当時の労働者階級でも手に入れられる価格帯。現在も続くこの姿勢こそが、タイメックスを全米から世界的な人気ブランドへと押し上げる原動力となった。
<1854年>
19世紀末に発売された懐中時計「ヤンキー」は、わずか1ドルという価格で人気が爆発。20年間で4000万本も売り上げる大ベストセラーとなった。この時計は、後に米軍に要請されて開発した軍用時計のベースになったことからも、確かな機能を備えていたことが伺える。
<1895年>
<1917年>
激動の時代だった20世紀前半に度重なる経営母体の変遷を経て、1950年にはタイメックスブランドを発足。低価格・質実剛健路線を継続し、時計店や宝飾店だけでなく、デパートやドラッグストアなど、従来にない販路も開拓していった。
<1933年>
1970年代のクォーツショックを乗り越えると、独自機能を備えたモデルが次々と登場。「アイアンマン」のラップタイム計測機能や、文字盤全面が発光する“インディグロナイトライト”など、時代のニーズに応えた機能がタイメックスの名を世界に広めていった。
<1986年>
一方で、この頃から映像作品などで、タイメックスの腕時計を見かける場面も増えた。有名なのは、映画『7月4日に生まれて』でトム・クルーズが着用した「サファリ」だ。『バーンアフターリーディング』では、ブラッド・ピットが腕に巻いた「アイアンマン」が、スポーツジムの店員という役どころの演出にひと役買った。
<1988年>
<1992年>
こうした採用例が多いのは、タイメックスの腕時計が劇中で描かれるシーンや人物にマッチした個性を備えていたからだろう。用途に応じた確かな機能とデザインは、その時代の空気やファッションスタイルを明確に表現してくれるシンボリックな存在だったのだ。