■セイコーが目指したのは“世界最高峰の精度”
「グランドセイコー」。言わずと知れた、日本が世界に誇る腕時計メーカー、セイコーの高級ブランドである。
グランドセイコーが誕生したのは1960年。“もはや戦後ではない”。そんな言葉が囁かれ、日本は敗戦による荒廃から復興を遂げ、戦後の高度成長期に突入していた。人々は時間を気にして働き、腕時計の需要も高まっていた。
そんな時代、セイコーが目指したのは世界最高峰の精度。当時のスイス・クロノメーター検定と同等か、それ以上の精度で時を刻む腕時計を求めて作り出されたのだ。67年には、スイス・ニューシャテル天文台コンクールでセイコーは上位入賞を果たす。そして現在のグランドセイコーの礎となったと言ってもいい名機「44GS」が誕生した。
「44GS」は単に時間を正確に刻むだけではなく、外装デザイン面でも現在に綿々と受け継がれている「セイコースタイル」を確立したモデルだとも言えるのだ。
時は下り70〜80年代。一時はクォーツの隆盛によってその名を冠した機械式時計は姿を消すが、98年に見事に復活を遂げたブランドでもある。その誇り高きラインナップを生み出す場所が岩手県にある「雫石高級時計工房」である。
■職人が手がけた製品が並ぶ「雫石高級時計工房」
工房の創設は2004年。しかし、起源は1970年に遡る。腕時計製造拡大によって、現在の場所に設立された工場が源流となっている。静かな森に囲まれた建物のエントランスに入ると、ここで生み出されている製品のラインナップが並ぶ。
そして機械式腕時計が動く仕組みや歴史、地域の伝統工芸品などの展示もあり、対応できる場合は工房内の一部の見学も可能だ。また、雫石高級時計工房限定のモデルも購入することができるようになっている。
工場の内部に歩を進めよう。雫石高級時計工房の最大の特徴は、ネジ一個、歯車一枚から作り出し、最終組み立てまでの一貫製造を行なっていることだ。特に製造と加工が難しいとされている、機械式時計の精度を司る、ヒゲゼンマイまでも自社グループ内で製造する、世界中を見渡しても希少な、マニュファクチュールなのである。
地板などの部品は、原型こそNC自動加工機で作り出されるが、バリ取りや磨き、組み立てまで、すべて熟練の技術者の手作業によって行われている。
■グランドセイコーの系譜
「世界最高峰の腕時計を作りたい」。1960年にセイコーがそんな熱い想いから誕生させたのが、初代グランドセイコーだった。クォーツの登場で一時は機械式時計の系譜は途切れるものの、1998年には機械式が復活。今も腕時計の本質を追求する伝統と品質は変わっていない。
1960年
・グランドセイコー誕生
1964年
・カレンダーと50m防水機能搭載の「GSセルフデーター」販売
1967年
・“セイコースタイル” を確立した「44GS」誕生
1969年
・月差±1分以内の「V.F.A.」誕生(V.F.A.とは「Very Fine Adjusted」の略)。精度を極限まで追求した「グランドセイコー特別調整品」として発売された
1970年
・高精度でありながらムーブメント厚4.5mmの「56GS」誕生
1988年
・グランドセイコーの名をクォーツで復活させた「95GS」誕生
1993年
・“クォーツを超えたクォーツ”を追求した「9F8 シリーズ」誕生。
1998年
・機械式グランドセイコーが復活。「9S5 シリーズ」誕生
2002年
・グランドセイコー初、“4本目の針”を搭載した「9S56 シリーズ」誕生
2004年
・自動巻スプリングドライブ搭載「9R6 シリーズ」誕生。ぜんまい駆動ながら平均月差±15秒、日差±1相当を実現
2006年
・最大巻き上げ時約72時間のパワーリザーブ「9S67 シリーズ」誕生
2007年
・グランドセイコー初のクロノグラフ「9R8 シリーズ」誕生
2009年
・グランドセイコーのために新開発された自動巻10振動ムーブメント搭載の「9S8 シリーズ」誕生
2014年
・GMT機能を搭載した「9S86シリーズ」の「SBGJ005」がジュネーブ時計グランプリ「プティット・エギュィーユ」部門書受賞
2016年
・グランドセイコー初のセラミックケース採用の「ブラックセラミックス」発売