時計評論家も認める職人の魂が宿る国産ウォッチ5選【CRAFTSMANSHIP】

■グランドセイコーは日本が誇る最高の技術と美を高い次元で体現

国産ウォッチの最高峰であるグランドセイコーは、1960年の誕生以降、数々の名作を生み出してきたが、デザインや装飾については一貫して質実剛健な印象だった。しかし、今年登場した「エレガンスコレクション」の新作は、その名に違わぬ優雅なデザイン。この変化を時計ジャーナリストの名畑さんは次のように見ている。

「グランドセイコーは、当初から機械として最高峰であることを目指して、精度など実用性に重きを置いてきました。一時的にカラーダイヤルなどが登場したことはありましたが、デザインは腕時計の文脈に沿ったオーソドックスなものが基本。その流れが変わってきた背景は、2017年のブランド独立があると思います。グランドセイコーの世界観をより広げる、新しい時計が出始めていますね」

今回の新作はまさに従来にない印象を与えるものだ。艶やかな漆ダイヤルと蒔絵インデックスが加わることで、イメージが一変。落ち着いた雰囲気と華やかさを併せ持つ、独自のエレガンスを表現している。

「海外では漆器を『japan』と表記することもあり、漆芸は日本を象徴する工芸技術です。これに世界的に知られる漆芸家・田村一舟氏の高蒔絵を加えたところに、日本ならではの美を高い水準で表現しようとする意気込みを感じられます。そもそもグランドセイコーは、機械的な面では世界的に高い評価を得ている時計。その魅力をこの美しいデザインでさらに発信できるのではないでしょうか」

熟練の研磨職人が生み出すケースの輝きも見事。まさに日本が誇る最高の技術と美を、高い次元で体現した時計だろう。

▼技術の変遷を感じられる名畑さん所有モデル

名畑さんはグランドセイコーの母体となった「ロードマーベル」(右端)や国産初の自動巻き10振動モデルである通称「61GS」などのヴィンテージモデルを所有。いずれもシンプルなデザインで、華美な装飾などはないが、当時最高の時計技術を投入したモデルだった。

時計ジャーナリスト名畑政治さん 
1959年東京都生まれ。20代後半からライターとして活動。時計、カメラ、アウトドアなど、男性の趣味を自らの膨大なコレクションを駆使して探求。時計専門サイト「Gressive」の編集長を務める。

 

 

【職人の魂が宿る国産ウォッチ5選】

■高度な漆芸技法がグランドセイコーに新たな彩りを加える

グランドセイコー
「エレガンスコレクション SBGK002」(345万6000円)

小秒針とパワーリザーブ表示を備えた新開発キャリバー「9S63」を搭載する薄型ドレスモデル。柔らかな曲線とスマートな面が調和したケースに、繊細な表情を見せる漆ダイヤルを組み合わせ、独自のエレガンスを追求した。ケース径39mm、手巻き、 18KPGケース、150本限定

■グランドセイコー最高峰の職人技

▼繊細な表情を見せる琥珀色の漆ダイヤル

自然由来の美しく深い琥珀色の底面から繊細なパターンが透けるダイヤルには、純国産の“透漆(すきうるし)”を採用。越前の漆芸家・辻利和氏が塗りを担当している。

▼力強く存在感を放つ蒔絵インデックス

GSのブランドロゴとインデックスには、金粉やプラチナ粉を用いた “高蒔絵” を施している。加賀蒔絵の漆芸家・田村一舟氏によるもので、繊細さと力強さを感じさせる。

▼熟練技術が完成させた薄型ムーブメント

8年ぶりに新開発された手巻き薄型キャリバー9S63は、雫石高級時計工房の職人が手作業で組み立てたもの。独自の厳格な規格検定をクリアし、高い精度を誇る。

<艶やかな黒漆タイプもラインナップ>

グランドセイコー
「エレガンスコレクション SBGK004」(345万6000円)

「SBGK002」と同じムーブメントを搭載し、深い色合いと艶を併せ持つ黒漆をダイヤルに施したモデルも登場。PGケースとのコントラストが際立ち、より引き締まった印象に仕上がっている。ケース径39mm、手巻き、 18KPGケース、150本限定

 

■スリムなケースを彩る江戸切子のブルー

カシオ
「オシアナス マンタ OCW-S4000D」(21万6000円)

スリムなケースに江戸切子の技法を用いたベゼルを組み合わせ、独自の造形美を表現。Bluetoothによるスマホ連携機能や6局の標準電波受信、太陽光発電など先進技術も兼ね備える。ケースサイズ48.3×43.3mm、チタンケース、クォーツ、3000本限定

▲サファイヤガラス製のベゼルには、江戸切子の手法で紋様を刻み、夕暮れ時の空に屹立する東京の町並みを表現。伝統工芸士の堀口徹氏が手がけている

 

■銀河の輝きを思わせる繊細な螺鈿細工

カンパノラ
「メカニカルコレクションNZ0000-07F 琉雅」(86万4000円)

宙空の美をさまざまな技法で表現しているカンパノラの機械式モデル。電気鋳造で加工したダイヤルに漆を5回以上塗り、その上に貝片を載せて漆を塗り重ねて研ぎ出す螺鈿細工を施している。ケース径42mm、 SSケース、自動巻き

▲ダイヤルの螺鈿細工は、会津漆の伝統工芸士である儀同哲夫氏が担当。宇宙にきらめく銀河の輝きを繊細な工芸技術で表現した

 

■精緻な手仕事が生み出す唯一無二の造形美

ミナセ
「FIVE WINDOWS VM03-M03SB」(49万6800円)

高度な金属加工技術を持つケースメーカーが手がけるオリジナルモデル。5つの窓を備えた立体的なケースには、ザラツ研磨をはじめとする熟練の技術と、独創的なアイデアが凝縮している。ケースサイズ38×46.5mm、SSケース、自動巻き

▲ブレスレットは細木細工に着想した独自構造を採用。ミラーとヘアラインを組み合わせて美しく仕上げると同時に、容易な修理・交換も実現している

■漆芸技術を重ねることで生まれる流麗ダイヤル

天賞堂
「J-FACE /SHUKIN(朱金)」(30万2400円)

時計や宝飾品の老舗ショップによるオリジナルウォッチ。日本人による日本の美をテーマに、漆芸技法を取り入れた優美で繊細な雰囲気のダイヤルが特徴。ケースサイズ36mm、SSケース、自動巻き

▲輪島塗りの技術で、漆塗りと金粉蒔きつけを重ねて、赤漆を塗りこむことで、深みのある色合いと輝きを表現。経年による色合いの変化も楽しめる

>> 【特集】CRAFTMANSHIP

本記事の内容はGoodsPress4月34-35ページに掲載されています

 


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(取材・文/高橋 智 写真/江藤義典)

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