■丁寧に作ることが、長く使われることに繋がる
百年以上の歴史を誇る皮革袋物専門メーカー、アジオカが1999年に設立した自社ブランド、ガンゾ。同社のメンズ・レザー小物が最高品質と謳われ、本物を知る人々に愛されているのはご存知の通り。
そのプロダクトの魅力に迫るべく行われた今回の取材。そのなかで出会ったレーデルオガワの飛田氏は「どれだけコードバンの特性を引き出しつつ、美しい艶を出せるかを常に追求していきたい」とタンナーとしての目標を掲げ、また、親子2代で関わるアジオカの斎藤氏は、「親父から教わったのは、普段からしっかりと道具の手入れをすることが、美しい仕上がりに繋がるということ。あとは丁寧に念を込めながら、コバを磨くのみ」とモノづくりの従事者として、誠実さの必要性を語ってくれた。
彼ら職人の言葉から感じられたもの、それは妥協を許さぬクラフトマンシップ。では “永く使える定番を作り続ける” というガンゾの基本理念が、これから向かう先とは?
同社の公式マガジンにあった一文にその答えを見つけたので、ここに掲載して結びの文とさせていただく。
「技術力を超える本当の品質をわたしは知っている。ひたすら丁寧に作ること。それを何年も、何十年も続けること。それが、すべてなのだ」
【GANZOの革モノが出来るまで】
■タンナー編「レーデルオガワ」
コードバンの仕上げを専門とする国内最上級のタンナー。その技術力に対する評価は非常に高く、なかでも水性染料を用いる「アニリン染め」のみのコードバン染色を実現させているのは世界でココだけ。
1.加脂
乾燥状態の馬革を特製オイルに漬けた後、スリッカーを使って余分な油分と水分を絞っていく。ここで革の伸びや艶感などの仕上がりの良さが100%決まるといっても過言ではない。
2.ドライアップ
適度な水分を残すためには自然乾燥がベスト。屋外に夏場では丸々1日、梅雨や冬場などは1日半~2日間吊り下げておく。 OKかどうかの見極めは職人の経験則と肌感覚で判断する。
3.削りだし
表面を削り、コードバン層を露出させる作業。削り幅はわずか0.05mm。個体差を考慮しつつ削り出すには繊細な力加減が要求され、判断基準は透明感。ここでも職人の目のみが頼り。
4.グレージング
瑪瑙のローラーによる摩擦熱で表面を焼くように磨いていくことで美しい光沢が表れる。革の状態によって力加減の調整が必要。実は作業工程でいうところの段階ではいまだ50%!
5.ポリッシュ
染色した革を仕上げる最終工程。表面に特製のワックスを塗って磨き上げることで、コードバン本来の美しい表情を表現する。ちなみにここまでで最速でも3週間の期間を要する。
■縫製編「AJIOKA.」
素材のカットから仕上げまでを一貫して行なっている工房。工房長を務める斎藤さんのお父さまも同じく革職人。親子2代にわたってガンゾの生産に関わっており、そのモノづくりの精神もしっかりと継承されている。
1.カット
タンナーから届いた革の上に抜き型を置き、上からハンドクリッカーで圧力をかけてパーツごとに切り出していく。素材にムダを出さず、なおかつ品質を保つためにも、手作業であることは必須!
2.コバ漉き
パーツが複数重なる箇所は、縫製時に最小限の厚みで済むように革裏を漉いておく必要がある。これによって中身を入れた際にも不細工に膨らむことなく、スマートなシルエットが実現するのだ。
3.コバ塗り
コバ(革の切断面)部分に茶粉と呼ばれる染料を手塗りしていく。ここは製品の出来映えや完成度にも影響を与える重要なポイントだ。また、この赤茶色のコバこそがガンゾのアイコンでもある。
4.コバ磨き
艶出しと経年劣化によるほつれを防ぐ目的で、コバにふのりを塗り重ねる。この作業を2~3回繰り返した後は、布を指に巻きつけてひたすら磨いていく! しっかり磨くことで、耐久性も高まる。
5.念引き
念引きとは、コバのエッジ部分などに「念」と呼ばれる道具で直線状の筋を刻む加工のことで、プロの仕事の代表例。このひと手間で立体感と陰影のある表情が加わって、全体の印象も引き締まる。