その後、バブル崩壊により売り上げに伸び悩む中、デザインの重要性を見直し、同社の木工技術を高く評価するプロダクトデザイナー・深澤直人氏を開発パートナーに迎えて「マルニコレクション」を展開。百年経っても世界の定番として認められる家具作りを開始した。
「まず深澤さんからご提案いただいたのは、複雑な曲面で構成される難易度の高いイスでした」(橋爪さん)
深澤氏による図面と模型をもとに、マルニ木工の試作職人がハンドメイド。イスのカーブは削りで成型するが、手作りでは量産できないため3次元加工機を導入。
「製品を数値化し、機械を複雑にプログラミングすることで、製造の大半を機械化しました」(橋爪さん)。
しかし最後の仕上げは、職人が手作業で磨いてなめらかにすることが絶対不可欠。深澤氏のミリ単位の要求にも、職人が試行錯誤を繰り返して応えたという。こうして「HIROSHIMA アームチェア」が完成、2008年に発表された。
このイスはミラノ・サローネに出展され、海外でも高い評価を得ることに。現在は国内外で多くの発注があり、マルニコレクションは同社の売り上げの35%を占めるまでに成長した。日本の家具は海外で通用しないという定説を覆す、日本の職人技なくしては作れない家具なのだ。
maruni tokyo
住所:東京都中央区東日本橋3-6-13
営業時間:10:00 ~18:00
休日:水曜日
■アップル・パークに数千脚を納入!
MARUNI COLLECTION
「HIROSHIMA アームチェア」(板:9万7200円~、張座:11万5560円~)
深澤直人氏によるデザイン。ナチュラルな木肌を生かしたシンプルで精緻な構造で、あらゆるシーンで長く使用できる。板座と張座があり、それぞれビーチ・オーク・ウォルナット材で展開。W560×D530×H765×SH425mm(板座)
▼すべて曲面になっている!
すべてに丸みをもたせたデザインで、包み込まれるような座り心地に。特にアームから背を一体化させたカーブは芸術的で、肘の収まりもいい。アームと背はフィンガージョイントで接続。
▼木目は左右対称に配置
アームや脚などの木材は、木目が左右対称になるように選別。背は4つ、座は6つの木材で構成されるが、これも木目をできるだけ統一し、一体感のあるデザインに仕上げている。
▼木目合わせをしている
脚の正面に、木材の柾目が向くように配置することで、すっきりとした印象に。このほかイスの正面はすべて柾目。板目が見えないため、意識せずとも “美しい” と感じる一工夫だ。