【finalが目指す“ブームに流されない音作り”とは?】
他とは一線を画すモノづくりで、高品質な製品を世に送り出し続けるfinal。そこにはどんな思いが込められているのか? 多彩なオーディオ機器に触れてきたAVライターの折原一也さんが、 finalを手がけるS'NEXTの細尾社長にその真意を聞く。
■大手に負けない開発力を持つ
折原:私もfinalの製品をいくつか所有しているのですが、すごく真面目なメーカーだという印象があります。
細尾:今のオーディオ製品は、マーケティング的な視点で音質もトレンドを追うケースが多いのですが、私たちは人間が持っている本質的な音の感じ方を学問的に追求しています。それを製品化すると地味な印象になるので、真面目だというイメージになりやすいと思いますね。
折原:でも「E3000」は売れましたよね。僕も試聴してすぐに「この価格でこの音はすごい!」と衝撃を受けました。
細尾:それは良かったです。私たちは、一般的な音楽ファンにいい音が届かないという現状を何とかしたいという思いも抱いています。オーディオマニアと音楽ファンではヘッドホンやイヤホンの選び方が全然違っていて、そんなにお金をかけない層にも自分たちの考えを反映した製品を使ってもらいたいと思っていたんです。
折原:ヘッドホンとイヤホンは音響特性に違いがありますが、その辺の開発はどう対応しているんですか?
細尾:確かにヘッドホンはスピーカー寄りの考えで設計できますが、イヤホンは少し違いますね。でも、当社にはオーディオ機器を一から開発できるベテランエンジニアが在籍していて、音響工学の専門家もいます。小さい会社ですが大手に負けない開発力は備えていると思っています。
■効率が悪くてもいい音を多くの人に届けたい
折原:自社工場を構えているのはなぜでしょうか?
細尾:私たちのヘッドホンは振動板から製造しているのですが、1枚ずつ作る必要があって、これだと効率が悪く、外部の工場では対応してもらえないのです。でも、そこまでやらないと自分たちが目指す音が作れない。高い商品なので、的確な修理対応を行うためにも開発スタッフがいる自社工場は必要なのです。
折原:ビジネス的には難しいでしょうが、ユーザーとしてはありがたいですね。ちなみに、いま主流になっているワイヤレスタイプは作らないのですか?
細尾:まず私たちの目指す音質が再現できることが最優先で、それに見合うチップなどが登場するのを待っています。ただ、今年から性能が高いものが出始めていて、私たちも開発を進めています。来年には自信を持てる製品を出せると思います。
折原:finalの音をワイヤレスで堪能できるようになるわけですね。それは楽しみです。
細尾:チューニングを楽しめる「MAKE」シリーズの派生モデルや、イヤホンのフラッグシップモデルも開発しています。マーケティング的な発想だと、私たちの思いを反映した製品はできませんし、大手にはかないません。他にはできない私たちならではの面白い製品をこれからも作っていきたいですね。
S'NEXT代表取締役社長 細尾 満さん
大学卒業後、建築系上場企業に入社。退職後、デザイン設計やコンサルティングなどを手がけた後、S'NEXTに設立メンバーとして参加。2014年に同社の代表取締役に就任した
AVライター 折原一也さん
オーディオ・ビジュアル専門誌やWeb媒体、商品情報誌などで、デジタルAV機器のレビュ ーをはじめ多彩な記事を執筆。 2009年よりVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める
■finalならではの音を楽しめる主要モデル
▼平面磁界型を再発明し理想のヘッドホンを追求
「D8000」(38万8000円)
独自開発したAFDS(エアフィルムダンピングシステム)により、平面磁界型ならでは繊細な高域と、ダイナミック型の開放感や量感を両立。圧倒的にリアリティのある音を楽しめる。自社工場で生産し、長期間使用することを想定した、修理しやすい設計を採用。 2年間保証も付いている
<手を出しやすい購入プランを用意>
約40万円と高価なモデルながら多くの人に手に取ってもらうべく、finalでは独自のクレジットプランを用意。約半額となる24カ月分のクレジット払いを終了後、商品を返却することもでき、購入のハードルを下げている。
▼クリアで没入感のあるサウンドを実現
「E5000」(実勢価格:2万9800円前後)
6.4mmのダイナミック型ドライバーを搭載したリケーブル対応モデル。低域から高域まで量感とクリアさを感じる音を実現した。筐体はステンレス製で鏡面仕上げを施している。
▼納得の音を楽しめるハイコスパモデル
「D3000」(実勢価格:5480円前後)
6.4mmのダイナミック型ドライバーとユニット背面のメッシュ加工により、広い音域で解像度の高いクリアな音質を実現。音の広がりも実感できる。ステンレス製筐体を採用。
▼手頃な価格帯でライブ感覚の臨場感
「E1000」(実勢価格:2400円前後)
上位モデルと同じ設計や音響工学を盛り込みつつ、樹脂製の筐体などにより低価格化を実現。ポップスやロックに向いたチューニングを施している。本体カラーは3色。
▼自分の手で好みの音にチューニング
「MAKE1」(実勢価格:5万9800円前後)
付属フィルターを自ら交換することで、77通りに音質を調整できるモデル。BA型ドライバーを3基(高音用×1、中低音用×2)搭載する。筐体は鏡面仕上げのステンレス製。
▼音質の選択肢は800通り以上!
「MAKE2」(実勢価格:3万2800円前後)
847通り以上に音質をチューニング可能。 BA1基とダイナミック型1基からなるハイブリッドドライバーを搭載。筐体はステンレス素材にガンメタリック仕上げを施している。
▼音質と使い勝手を高いレベルで両立
「F7200」(実勢価格:4万9800円前後)
筐体本体が2g以下の超軽量小型設計ながら、鼓膜に近い位置にBAドライバーユニットを配置し、ダイレクトで生々しい音質を実現。装着感や遮音性も高い。リケーブルにも対応。
本記事の内容はGoodsPress4月66-69ページに掲載されています
[関連記事]
日本の伝統と革新技術が織りなすプレミアム家電と工芸美小物18選【CRAFTSMANSHIP】
Appleを魅了した「マルニ木工」の職人技とデザイン【CRAFTSMANSHIP】
「グレンストック」店主が語る国産革靴の実力と魅力【CRAFTSMANSHIP】
(取材・文/高橋智 写真/田口陽介)