日本の匠が手がける「宮内庁御用達」の傑作品【CRAFTSMANSHIP】

【今上天皇のお召し物を仕立てる「金 洋服店」のオーダースーツ】

大正2(1913)年に創業した金洋服。ハンドメイドの服作りに専念した初代店主・服部金生氏は、その技術を買われて当時の華族方に引き立てられる。特に徳川家からの信頼を得て、久邇宮家に推薦され、昭和10年頃から秩父宮家より受注。終戦後の昭和25年からは、皇太子殿下(現・天皇陛下)を始め常陸宮家など各皇族方の注文依頼を受け、昭和39年には昭和天皇の御用命をいただく。

そんな父に10代半ばから師事していた2代目・服部晋さん。皇族で最初に仕立てた方は天皇陛下だったという。

▲金 洋服店2代目店主・服部普さん

「今上天皇の明仁様が18歳のとき、立太子礼のお召し物を製作させていただきました」。

その後も、皇太子殿下(現・天皇陛下)がエリザベス女王戴冠式に出席される際の礼服を手がけるなど、現在に至るまで御用命を賜っているそう。そんな服部さんにテーラーの極意を伺った。

▲初代店主の服部金生氏がデザインした「宮内庁新宮殿職員用礼装」。昭和43年、完成間近で急逝した父の後を受け継ぎ、晋さんが製作。現在も使用されている

「父から受け継ぎ、心がけていることは、まずはお客様の好みに合わせる、ということ。次に、長く安心して着られること。同じスーツを50年間、手直ししながら着られているお客様もいます。そして、私が大切にしていることは、着心地が良く、見た目もスッキリとバランスが取れた服を仕立てることです」

▲1975年、寛仁親王殿下が受賞されたベスト・ドレッサー賞の賞額。「君がもらったようなもの」と賜ったという

長い歴史で培われたテーラーの技術をもっと良いものにしたいと、今もなお新たな製法を試行錯誤しているという。今年で御年89歳となる服部さん。後進の教育にも力を入れるなど、“先生” と慕われるテーラー界の重鎮の服作りに終わりはない。

▲オーダーは、まず要望をヒアリングすることから始まる。デザインの意向はもちろん、デスクワークが多いか、歩くことが多いかなど細かな質問をして、着る人に合った服を作っていくという

▲用意されている生地も豊富

▲オーダー主が通される応接室は、聖域である工房の奥にあり、立ち入り禁止

 

【1本1本ミリ単位の手作業で作られる「前原光榮商店」の洋傘】

1948年創業。昔ながらの製法を受け継ぎ、1本1本丁寧にハンドメイドされる「前原光榮商店」の洋傘。「生地織り」「骨組み」「手元作り」「生地の裁断・縫製」を、それぞれ専門の職人が行っている。

▲伝統的な機で、染め糸をゆっくりと丹念に織り上げた生地。やや凹凸のある質感で気品があふれる

特に生地の裁断・縫製は、数ミリの誤差が生じるだけで、傘を広げたときの張りや音、フォルムに影響が出るため、正確さはもちろん針の落とし方にも気を遣っているという。こうした職人技により完成した傘は、美しいフォルムと心地良い使用感を備えている。

▲宮内庁に納品した傘のレプリカ。古いサンプルなので、曲木による手元が経年で開いている「レプリカモデル(受注生産)」(16万2000円)

▲由緒ある十六花弁の菊の紋章に見立ててデザインした「16間雨傘」。「PinStripe-16」(2万160円)

▲使うのがも ったいないほど生地が美しい折り畳み傘。「Urok-TU」(1万6200円)

 

【イギリス王室御用達の英国老舗ブランド「Lock & Co.」のハット】

1676年以前に創業されたJames Lock & Co. Hattersは、世界最古とされる格式ある英国の帽子ブランド。英国王室御用達のブランドとして知られ、日本においても宮内庁への納品実績を持つ。山高帽とも呼ばれるボーラーハットを最初に作ったとされ、ロンドンでは「ロック」「ジェームスロック」などの愛称で親しまれている。

チャーチル元首相やジョン・レノン、チャーリー・チャップリンなど名だたる人物を顧客に持ち、世界中のジェントルマンに愛されている。

▲同社で最も有名な形状で、くぼみアリ・ナシで被れる「ホンブルグ」。光沢のある上質なラビットファーフェルトを使用。高級感が漂う「Hombrug」(各6万9120円)

 

【熟練職人が手がける精緻でクラシックな「宮本商行」の銀製品】

1880年に創業、銀製品の専門店「宮本商行」。皇室や宮家からの御用命を賜り、現在に至るまで宮内庁御用達として支持されている老舗。カトラリーを始め、酒器や茶器、さらにはファッションアイテムまで、銀素材を使った数々の製品を手がける。

▲御用命により納品された銀製品の一部。菊の御紋がデザインされている

江戸時代に発達した銀加工の伝統技法を受け継ぎ、職人の手で丹念に作られている。ハンドメイドなので磨き直しや修理も可能で、代々使い続けられる逸品なのだ。

▲宮中晩餐会に使用されたというカトラリー。唐草模様のデザインも美しい。デザート用だがサイズが大きいため、普段はディナーに使いたい。「デザートナイフ/デザートフォーク/デザートスプーン」(各3万240円)

 

>> 【特集】CRAFTMANSHIP

本記事の内容はGoodsPress4月78-81ページに掲載されています

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(取材・文/津田昌宏 写真/宮前一喜<APT>、野町修平<APT>)

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