【今上天皇のお召し物を仕立てる「金 洋服店」のオーダースーツ】
大正2(1913)年に創業した金洋服。ハンドメイドの服作りに専念した初代店主・服部金生氏は、その技術を買われて当時の華族方に引き立てられる。特に徳川家からの信頼を得て、久邇宮家に推薦され、昭和10年頃から秩父宮家より受注。終戦後の昭和25年からは、皇太子殿下(現・天皇陛下)を始め常陸宮家など各皇族方の注文依頼を受け、昭和39年には昭和天皇の御用命をいただく。
そんな父に10代半ばから師事していた2代目・服部晋さん。皇族で最初に仕立てた方は天皇陛下だったという。
「今上天皇の明仁様が18歳のとき、立太子礼のお召し物を製作させていただきました」。
その後も、皇太子殿下(現・天皇陛下)がエリザベス女王戴冠式に出席される際の礼服を手がけるなど、現在に至るまで御用命を賜っているそう。そんな服部さんにテーラーの極意を伺った。
「父から受け継ぎ、心がけていることは、まずはお客様の好みに合わせる、ということ。次に、長く安心して着られること。同じスーツを50年間、手直ししながら着られているお客様もいます。そして、私が大切にしていることは、着心地が良く、見た目もスッキリとバランスが取れた服を仕立てることです」
長い歴史で培われたテーラーの技術をもっと良いものにしたいと、今もなお新たな製法を試行錯誤しているという。今年で御年89歳となる服部さん。後進の教育にも力を入れるなど、“先生” と慕われるテーラー界の重鎮の服作りに終わりはない。
【1本1本ミリ単位の手作業で作られる「前原光榮商店」の洋傘】
1948年創業。昔ながらの製法を受け継ぎ、1本1本丁寧にハンドメイドされる「前原光榮商店」の洋傘。「生地織り」「骨組み」「手元作り」「生地の裁断・縫製」を、それぞれ専門の職人が行っている。
特に生地の裁断・縫製は、数ミリの誤差が生じるだけで、傘を広げたときの張りや音、フォルムに影響が出るため、正確さはもちろん針の落とし方にも気を遣っているという。こうした職人技により完成した傘は、美しいフォルムと心地良い使用感を備えている。
【イギリス王室御用達の英国老舗ブランド「Lock & Co.」のハット】
1676年以前に創業されたJames Lock & Co. Hattersは、世界最古とされる格式ある英国の帽子ブランド。英国王室御用達のブランドとして知られ、日本においても宮内庁への納品実績を持つ。山高帽とも呼ばれるボーラーハットを最初に作ったとされ、ロンドンでは「ロック」「ジェームスロック」などの愛称で親しまれている。
チャーチル元首相やジョン・レノン、チャーリー・チャップリンなど名だたる人物を顧客に持ち、世界中のジェントルマンに愛されている。
【熟練職人が手がける精緻でクラシックな「宮本商行」の銀製品】
1880年に創業、銀製品の専門店「宮本商行」。皇室や宮家からの御用命を賜り、現在に至るまで宮内庁御用達として支持されている老舗。カトラリーを始め、酒器や茶器、さらにはファッションアイテムまで、銀素材を使った数々の製品を手がける。
江戸時代に発達した銀加工の伝統技法を受け継ぎ、職人の手で丹念に作られている。ハンドメイドなので磨き直しや修理も可能で、代々使い続けられる逸品なのだ。
本記事の内容はGoodsPress4月78-81ページに掲載されています
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(取材・文/津田昌宏 写真/宮前一喜<APT>、野町修平<APT>)