1. 京焼青瓷(青磁)
蘇嶐窯(そりゅうがま)
「いっちんコースター/線紋コースター/とび鉋コースター」(各3000円前後)
柔らかく、落ち着いた色合いの磁器製コースターは京都の悠久の歴史の中で培われた伝統技法が活かされています。京焼とひと口に言っても、じつはスタイルはさまざま。「蘇嶐窯」は明治・大正期に活躍した京焼青瓷の第一人者、初代諏訪蘇山の技法を受け継ぐ涌波(わくなみ)家の四代目、涌波蘇嶐さんと福岡・小石原焼の窯元に生まれた奥さまのご結婚を機に、新たなブランドとして誕生したそうです。
「茶道具だけでなく、青磁をもっと知ってもらいたい、使ってもらいたいという思いからコースターを作りました。とび鉋と呼ばれる模様は蘇嶐窯の特徴ですが、これは小石原焼の技法なんです」と、奥さまのまどかさん。
菊の花を思わせる模様は、窯で焼く前のコースターをろくろに乗せ、古時計のゼンマイを加工した刃で表面を削ることで描きます。茶碗での作業を見せて頂きましたが、振動する刃が表面をリズミカルに削る様子には思わず見入ってしまいました。
しかし、青磁というと釉薬で仕上げられた艶のある焼物を想像しますが、このコースターは釉薬をかけないことでしっとり艶を抑えた風合いになっています。じつは、こうした仕上げや造りにもこだわりがあるそうです。
「滲みこむほどではありませんがグラスに付いた水がコースターの上に残りません。なので、グラスがコースターとくっつくこともありません。また、一見すると素焼きのように見えますが、素焼きは約900度で焼くのに対して、1280度という高温で焼き締めることで強度が高く、割れたり、欠けたりしにくくなっています。また、淡い色合いも磁器用の白い土に、顔料を錬り込んだ“錬り込み青磁”という技法ですが、窯で焼くと化学変化で色が変わるんです。代々、土作りで培ってきたデータもありますからそれを応用していますが、さらなる研究も重ねています」
近年ではヨーロッパを中心に高い評価を受けている蘇嶐窯。東洋的にも、北欧風にも見える作風のコースターは一枚3000円ほどと、お手頃な値段も魅力です。工房での作業も見学できますから、京都を訪れた際には足を運んでみてはいかがでしょうか。
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