■一度やれば実感できる “直接対決” の楽しさ
子どもの頃に人生ゲームやモノポリーを親しんだ人は少なくないだろう。しかし、1970年代頃からテレビゲームが登場し始め、その存在は徐々に薄くなってきた。近年はPCや据え置き型ゲーム機の高性能化が著しく、画質や遊び方も劇的に進化。
オンラインで対戦・協力するゲームも珍しくなくなり、スマホでも本格的なゲームが遊べるようになった。もはやアナログゲームに興じる人は絶滅危惧種になったようにも思えるが、実はここ数年、急増傾向にあるのだ。
特に領土拡張を競うカードゲーム「ドミニオン」がアメリカでブームになった2008年以降、世界中で愛好家が増え、2009年には日本語版も登場した。同時期には他のプレーヤーの正体を探り合う、通称「人狼」ゲームも国内で広まり、テレビなどでも話題になった。この頃からアナログなゲームを楽しむ人たちは着実に増えてきたのだ。
そんな人気を追い風に出店が続いているのが、ボードゲームカフェだ。そのひとつである 「JELLY JELLY CAFE」は、東京を中心に系列店も含め全国で15店舗を展開。世界中のボードゲームを揃えることで、多くの愛好家が訪れている。
「当店のような気軽に遊べる環境が増えてきたのも、国内でボードゲーム人気が再燃している理由のひとつでしょう。最初の頃は昔からのボードゲーム愛好家やかつて楽しんでいた40代以上の方が多かったのですが、この2〜3年ほどは10代や20代の若いお客様も増えてきました。現在は子ども連れで来られる方もいて、幅広い世代の愛好家がいると実感しています」
そう話すのは、渋谷店の野崎雄斗店長。やはり友人たちと訪れたり、一緒に遊ぶ仲間を見つけたりできる場ができたことが、V字回復とも言える現在の人気を支えているようだ。加えて、ゲームの種類が多彩になってきたことも、大きな要因になっているという。
「ひと昔前まではボードゲームといえば海外製が主流でしたが、最近は日本製も増えてきました。特に個人で作る人が多くなり、ゲーム版のコミックマーケット『ゲームマーケット』の出点数も急増しています」
もちろん、ゲーム自体の魅力こそ、何より多くの人がハマる理由である。それは「直接対面の面白さ」と野崎店長は語る。
「その場で相手の顔色や反応を伺いながら対戦し、緊張感や熱気を共有できるのは、オンラインゲームにもない楽しさです。その様子を動画で公開する人もいて、最近はそこからボードゲームにハマる人もいます」
実際にお店では黙々と取り組むのではなく、歓声を上げながら盛り上がっている様子があちこちで見られた。初めて会う人同士が集まったグループもあり、ゲームを通してすぐに打ち解けられるのもアナログなゲームならでは。顔を合わせて同じゲームに興じる楽しさは、時代を超えて愛されるものなのだ。
JELLY JELLY CAFE 渋谷店 店長 野崎雄斗さん
自身も数年前にボードゲーム「カタンの開拓者たち」からハマったひとり。企業がアナログゲームを導入する動きも増えているという。
JELLY JELLY CAFE 渋谷店
住所:東京都渋谷区宇田川町10-2新東京ビル202
営業時間:13:00〜23:00
休日:不定休
TEL.03-6809-0574
■ボードゲーム再燃の理由
【理由1】ゲームを出来る環境が増えた
ボードゲームを多数揃え、購入せずに楽しめるカフェやバーが全国各地で増加。相席OKというお店もあり、ひとりで入店しても気軽に遊べるようになってきた。
【理由2】国産を中心にゲームの種類が増加
以前はドイツなどヨーロッパを中心とした海外製ゲームが主流だったが、国産ゲームも多彩になってきた。メーカーに加え、個人のゲームデザイナーも増えた。
【理由3】SNSやYouTubeで話題になる
ゲームを楽しむ様子を動画で公開するYouTuberや、見栄えのいいゲームをInstagramにあげる人が登場。これらをきっかけにハマる人も出てきている。