太陽の動きと月の動きから導き出された時間や暦といった概念を、機械によって表現する時計「機械式時計」は、14世紀ごろに開発されたとされ、ヨーロッパでは長らく人類最高峰の叡智として崇められてきた。
それゆえ現代の時計産業でも、基本的には“伝統と文化”を継承するのがセオリーであり、歴史的背景から生まれたデザインや機構を丁寧に守っている。しかしスマートフォンの台頭によって“時刻を見る道具”としての存在意義が薄まった結果、新たな進化を模索する動きが目立ち始めた。
工作技術の進化を利用した立体的なケースや富裕層の好奇心を刺激する新たなコンセプト、あるいは画期的なメカニズムなどは、所有する喜びを喚起させる時計が増えているのだ。伝統は無視しない。しかしもっと自由に、魅力的に進化し始めたのが、現代のヨーロッパ時計なのだ。
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